13:45 〜 15:15
[O02-P41] 柱型防波堤による減災
キーワード:津波、減災、防波堤
1.動機と目的
東北太平洋沖地震の津波被害を受け、私達はこれまでハザードマップ作りや津波に強い都市構造などの研究をしてきた。結果、津波被害は土地利用の工夫で抑制することはできるが、完全な抑制は難しいということが分かった。そこで、沿岸に設置されている防波堤に着目した。しかしこの防波堤は波が乗り越えるなどして津波被害を止められなかった。そこで、これまでの防災の考え方から減災の考え方へ転換し、防波堤を従来の壁型のものから連続した柱型のものとした。これを用いて津波の流れ同士を相殺させ、波の流速を小さくし避難可能時間を伸ばし、津波の人的被害を抑制することを目的とした。
2.実験方法
実験の検証地域を、福島県いわき市の四倉地区とした。海面からの防波堤の高さ7.2m・東北太平洋沖地震の時の津波の規模・水深4mを1/100スケールにし、津波を起こす実験装置を作成した。仕切りで普段の海の部分と津波を起こすための貯水部とを分け仕切りを上げることで津波を起こす。実験は水道水で、教室のベランダで行った。柱型防波堤の変更条件を、①上から見たときの形状②柱同士の間隔の大きさ、③柱の列数とした。①上から見た形状は正方形、二等辺三角形、逆二等辺三角形、円とした。正方形の一辺は3cm、三角形の底辺は3cmで高さ3cm、円の直径は3cmと定めた。②柱同士の間隔1㎝ずつ5㎝までとした。③柱の列数は先行実験より、杯らを互い違いに並べた2列とした。2列の防波堤の前列と後列の形状をそれぞれ変えることで、計16通りの組み合わせができる。組み合わせた防波堤を装置に設置し、津波を起こす。その時の様子を上からハイスピードカメラで撮影した。これを各組み合わせで5回実験した。それを動画ソフト(Quick Time Player)を用いて、10cm間隔のマーカーをもとに、防波堤衝突前の流速と衝突後の流速を画像解析することで、流速を落とす効果を調べた。
3.仮定
先行実験より、三角形の形状を使う組み合わせは効果を発揮しないことが分かった。
また効果を発揮する組み合わせは、前列も後列も波に対して面を向けている組み合わせ、Aグループと分かった。Aグループで、柱を1cm間隔で設置し比較したとき、前列正方形・後列逆三角形の組み合わせが、2cm以上の時には前列逆三角形・後列正方形の組み合わせが、ほかの組み合わせよりも効果があった。どちらも前列か後列に逆三角形が組み合わさっていることが特徴だ。
比較として、Aグループ以外の組み合わせの中でも、すべての間隔において前列逆三角形・後列円の組み合せが一番、二番目に1cmの時、前列円・後列逆三角形の組み合わせが、効果があった。やはり前列か後列に逆三角形が組み合わさっている。
これを、2列の防波堤は、前列・後列それぞれにどれだけ効果のある形状を組み合わせるか、で決定され、効果のある形状は逆三角形である。よって前列か後列に逆三角形を用いた組み合わせは効果があった、と考える。
この考えから、前列にも後列にも逆三角形を用いた組み合わせ(I)は、最も効果があると予想し、仮定した。
4.結果と考察
実験から、(I)は、すべての間隔で効果がなかった。また、最も効果のある組み合わせは先行実験も含め、前列正方形・後列逆三角形の組み合わせ(II)であると分かった。
なぜ効果が無かったか調べるため、(I)と同じく前列・後列ともに面である(II)を比較した。
上から見たとき、(I)では前列の逆三角形の形状が流れを広げ、一部は後列の面に当たらない。それに対して(II)の前列の正方形の形状は流れを広げず、同じ間隔でもより多くの流れを後列の面に衝突させる。
このことから、効果のある防波堤は前列・後列それぞれに効果のある形状を組み合わせて決まるのではなく、前列・後列がそれぞれ役割を持ち、1つの組み合わせとしてどれほど効果を発揮するかで決まり、予想はできないと分かった。
5まとめ
一番流速を落とし、人的被害を軽減する効果のある防波堤は前列正方形・後列逆三角形の組み合わせを1cm間隔で設置したもので、流速を44%落とす。これは住民の避難可能時間を理論上142秒(防波堤無し)から326.6秒へ約230%延ばす。これは前列・後列にそれぞれ効果のある形を組み合わせることでは決まらず、予想はできない。
東北太平洋沖地震の津波被害を受け、私達はこれまでハザードマップ作りや津波に強い都市構造などの研究をしてきた。結果、津波被害は土地利用の工夫で抑制することはできるが、完全な抑制は難しいということが分かった。そこで、沿岸に設置されている防波堤に着目した。しかしこの防波堤は波が乗り越えるなどして津波被害を止められなかった。そこで、これまでの防災の考え方から減災の考え方へ転換し、防波堤を従来の壁型のものから連続した柱型のものとした。これを用いて津波の流れ同士を相殺させ、波の流速を小さくし避難可能時間を伸ばし、津波の人的被害を抑制することを目的とした。
2.実験方法
実験の検証地域を、福島県いわき市の四倉地区とした。海面からの防波堤の高さ7.2m・東北太平洋沖地震の時の津波の規模・水深4mを1/100スケールにし、津波を起こす実験装置を作成した。仕切りで普段の海の部分と津波を起こすための貯水部とを分け仕切りを上げることで津波を起こす。実験は水道水で、教室のベランダで行った。柱型防波堤の変更条件を、①上から見たときの形状②柱同士の間隔の大きさ、③柱の列数とした。①上から見た形状は正方形、二等辺三角形、逆二等辺三角形、円とした。正方形の一辺は3cm、三角形の底辺は3cmで高さ3cm、円の直径は3cmと定めた。②柱同士の間隔1㎝ずつ5㎝までとした。③柱の列数は先行実験より、杯らを互い違いに並べた2列とした。2列の防波堤の前列と後列の形状をそれぞれ変えることで、計16通りの組み合わせができる。組み合わせた防波堤を装置に設置し、津波を起こす。その時の様子を上からハイスピードカメラで撮影した。これを各組み合わせで5回実験した。それを動画ソフト(Quick Time Player)を用いて、10cm間隔のマーカーをもとに、防波堤衝突前の流速と衝突後の流速を画像解析することで、流速を落とす効果を調べた。
3.仮定
先行実験より、三角形の形状を使う組み合わせは効果を発揮しないことが分かった。
また効果を発揮する組み合わせは、前列も後列も波に対して面を向けている組み合わせ、Aグループと分かった。Aグループで、柱を1cm間隔で設置し比較したとき、前列正方形・後列逆三角形の組み合わせが、2cm以上の時には前列逆三角形・後列正方形の組み合わせが、ほかの組み合わせよりも効果があった。どちらも前列か後列に逆三角形が組み合わさっていることが特徴だ。
比較として、Aグループ以外の組み合わせの中でも、すべての間隔において前列逆三角形・後列円の組み合せが一番、二番目に1cmの時、前列円・後列逆三角形の組み合わせが、効果があった。やはり前列か後列に逆三角形が組み合わさっている。
これを、2列の防波堤は、前列・後列それぞれにどれだけ効果のある形状を組み合わせるか、で決定され、効果のある形状は逆三角形である。よって前列か後列に逆三角形を用いた組み合わせは効果があった、と考える。
この考えから、前列にも後列にも逆三角形を用いた組み合わせ(I)は、最も効果があると予想し、仮定した。
4.結果と考察
実験から、(I)は、すべての間隔で効果がなかった。また、最も効果のある組み合わせは先行実験も含め、前列正方形・後列逆三角形の組み合わせ(II)であると分かった。
なぜ効果が無かったか調べるため、(I)と同じく前列・後列ともに面である(II)を比較した。
上から見たとき、(I)では前列の逆三角形の形状が流れを広げ、一部は後列の面に当たらない。それに対して(II)の前列の正方形の形状は流れを広げず、同じ間隔でもより多くの流れを後列の面に衝突させる。
このことから、効果のある防波堤は前列・後列それぞれに効果のある形状を組み合わせて決まるのではなく、前列・後列がそれぞれ役割を持ち、1つの組み合わせとしてどれほど効果を発揮するかで決まり、予想はできないと分かった。
5まとめ
一番流速を落とし、人的被害を軽減する効果のある防波堤は前列正方形・後列逆三角形の組み合わせを1cm間隔で設置したもので、流速を44%落とす。これは住民の避難可能時間を理論上142秒(防波堤無し)から326.6秒へ約230%延ばす。これは前列・後列にそれぞれ効果のある形を組み合わせることでは決まらず、予想はできない。