日本地球惑星科学連合2016年大会

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[O-02] 高校生によるポスター発表

2016年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、久利 美和(東北大学災害科学国際研究所)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構 地球環境変動領域)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、山田 耕(早稲田大学政治経済学術院)

13:45 〜 15:15

[O02-P79] 和歌山県加太海岸における凝灰岩層の解析

*池内 葵1、*濱田 吏穏1、*森田 優希1 (1.大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎)

キーワード:加太海岸、和泉層群、凝灰岩、堆積構造

本研究の目的は、和歌山県加太海岸に存在する2つの類似した凝灰岩層が同一の層であるか調査する事である。私達は実際に加太海岸へ現地調査に行き、凝灰岩層を観察してデータを収集した。それらを考察することによって同一の地層で
あるかを明らかにしようと試みた。
研究対象とした凝灰岩は、和歌山県北部に位置する加太海岸の深山と城ヶ島の2地点に露出する。加太海岸は文献より三重県から徳島県に分布する和泉層群の一部であり、約7000万年前(白亜紀後期)に堆積したとされている。タービタイトやソールマークなどの地質構造が見られる有名な地質巡検スポットの1つとされる。深山の凝灰岩層と城ヶ島の凝灰岩層は水平に約1km離れており、間の層がどのように続いているのかはっきり分かっていない。どちらの層も粗粒と細粒の互層から成っており、粗粒の層がより厚いという特徴を持つ。
実際の観察で、私達は走向・層厚、地質構造、鉱物の組成の3点に着目してデータを収集した。層厚は全層厚と個々の層それぞれの厚さを、巻き尺を地層に直交方向に当てて測定した。地質構造については、凝灰岩層の途中に見られるコンボリューションやソールマークなどの有無や、それらの存在する場所を比較した。
鉱物組成に関しては、現地で採取したいくつかの凝灰岩で薄片を作成し、偏光顕微鏡で観察して比較した。現地調査は2015年9月22日、11月15日、2016 年5月1日(予稿投稿時では予定)の3回にかけて行うことにした。2回の現地調査の結果、次のような結果が得られた。2地点の凝灰岩層の走向と傾斜は、深山でN60°E30°S、城ヶ島でN30°E60°Sであった。層厚は、 深山の凝灰岩層が10.30m、城ヶ島の層が9.97mであった。また、城ヶ島の層は深山の層と比較して細粒の部分が粗く、また、細粒と粗粒がはっきりと分離している印象があった。それぞれの凝灰岩層で見られた特徴的な地質構造として、2地点の層に共通する地質構造を見つけることは出来なかった。深山には下から1.5mほどのところにソールマークが見られた。また、粗粒と細粒がマーブル模様になったコンボリューション構造も見つかった。下から約3.5mの 場所には、植物由来?
と思われる黒い粒の混ざった層が存在した。城ヶ島の層では、下から2.0mほどの場所で細粒と粗粒の細かい互層や、スランピング構造が 見られた。鉱物組成については、2地点で採取した凝灰岩で類似した構造を示した。深山の凝灰岩からは、石英、斜長石、火山ガラスのほか、黒い鉱物が見られた。斜長石では双晶を観察することができた。黒い鉱物は、多色性、消光、干渉のどの特徴も示さず、偏光顕微鏡による同定ができなかった。また、コンボリューション構造を観察した結果、模様は粒の細かさの違いによって現れていることが分かった。城ヶ島の凝灰岩でも石英、斜長石、火山ガラス、黒い鉱物を確認することができたほか、深山の凝灰岩には見られない黄色く透明な鉱物がごく僅かに含まれていた。
考察は2地点の地層が同一である場合とそうでない場合の双方の仮説に基づいて進めたが、最終的な結論を導くには至らなかった。2地点の層を同一であると見なすことができる理由としては、全層厚が酷似していたことや鉱物組成に大きな違いが見られなかった事などが挙げられる。しかし、鉱物組成に関しては同一の火山を由来とする別の時代の噴火によって堆積した可能性を否定できないため、2地点の層が同一のものであると結論づける根拠としてはまだ十分でない。2地点の層を異なる物であると見なすことが出来る理由としては、地質構造の違いを挙げることができる。しかし、詳細の入念な観察が未だ行えていないため、2つの凝灰岩層が異なるものであると断言することはできないと考えた。
学会当日には3回目の現地調査で判明したことを解析するほかに,それぞれの凝灰岩層の上下の層の特徴に着目したり、今回調べた凝灰岩層にほかにも何かキーとなる地質構造,堆積構造がないかどうか調べたりして、凝灰岩層が同一のものかどうかの推論をさらに検討したい。現地調査には大阪市立大学の別所孝範博士の協力を得ている.