日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-04] ジオパークへ行こう

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

17:15 〜 18:30

[O04-P26] 糸魚川世界ジオパークにおける地域コミュニティーのコアとなる市民カレッジの役割

宮 江介1竹内 慎治2横川 美津枝3植 克彦4Jurago Ania5寺崎 義博6内山 俊洋7、*竹之内 耕8 (1.東京大学庭師倶楽部、2.糸魚川市立青海中学校、3.糸魚川ジオパークカレッジ、4.NPO法人ジャパンフォレストフォーラム、5.ワルシャワ大学、6.東京糸魚川会、7.糸魚川市ジオパーク推進室、8.フォッサマグナミュージアム)

キーワード:糸魚川ユネスコ世界ジオパーク、ジオパーク学、造園学、自然環境、人文環境、地域活性

任意団体・東京大学庭師倶楽部は、東京大学旧林学科を中心とした卒業生と在学生により結成された有志の団体である。造園学に基づいた「人と自然の関わり」をテーマに、2008年より世界ジオパークを目指す糸魚川地域において、地域団体や住民らの協力のもとで糸魚川地域独自の自然環境資源・人文環境資源の発掘と、そのポテンシャルの活用について調査研究を行った。その結果、数多くの環境資源の発掘と質の高い環境ポテンシャルの確認が出来た事から、2010年に地域の活性化を図る目的から糸魚川市全体をキャンパスと考え、そのコアとしてカレッジを構築する事で「ジオパーク学」としての新領域創成を目指し、地域全体のコミュニティー形成を行う為の「ジオキャンパス・ジオカレッジ構想」を計画した。
造園学者が糸魚川に大きな魅力と可能性を感じる理由には、造園学の基本となる人と自然の関わり方が、糸魚川地域の風土から発生した自然力との共存共栄手法に対する人ポテンシャルと、人文・自然環境に通じるところがあり、このことが「造園学」と「ジオパーク学」双方の新領域創成に繋がるとともに、双方の融合による実践の場において地域の保護と活性化の手法が構築される。同時に造園学が理想としつつも深化できなかった部分の進化が図れると考え、糸魚川市に定着した。
糸魚川ジオパークカレッジの開校は、地形があり・生態系が生まれ・文化が育まれる糸魚川ユネスコ世界ジオパーク全体をキャンパスとした発想をもとに、人と自然の関わりや、自然力との共存共栄において、コアとなるカレッジを通じ、地域主体となるコミュニティーを形成し、体験し、学び、研究し、計画を立て、共に実行して行く活動を取り入れ2012年に開校した。
糸魚川ジオパークカレッジでは、人文資源や自然資源がジオパーク全体として連携することで、特徴のある知的交流都市モデルとなることを目指しており、他の地方都市に対しても良質なプロトタイプを提供できる事を期待している。また、造園学だけに留まらず、地域実践学につながる地元講師らによる理系・文系の枠を超えた交流や、被災地を含む地方の専門家、東ヨーロッパの自然学や文化学との交流を目的とするポーランドのワルシャワ大学有志、NPO団体等の参加も求め、外部からの観光客も受け入れていることが特徴である。一方、糸魚川ジオパーク協議会や商工会議所、教育委員会との連携も積極的に進めており、これら多様な人々との連携によって新領域創成が進み、「ジオパーク学」としての確立を、大学や諸官庁にPRし一定の成果を得てきていると考えられる。
以上の内容から糸魚川ジオパークカレッジの主旨・目的・方針を簡潔にまとめると以下の内容になる。
・主旨・「地形が有り、生態系が生れ、文化が育まれる翠の交流都市にある学校」
・目的・「人と自然の関わりの有る糸魚川・自然力との共存共栄の出来る糸魚川」
・方針・「ジオパークの保護と利用・持続可能な環境計画・環境教育の学術構築と実践計画の実施」
「糸魚川ジオパークカレッジ」は、地域と住民が主役となり、外部からの専門家と共に羅針盤を作る作業を行う事から、新たに個性ある地域リーダーの輩出とその応援を目的として、カリキュラムは年間で三学期に分けて構成している。
前期は基礎分野として造園学の座学、中期はその基礎学を基に糸魚川での応用事例についてディスカッションや実践を行い、後期は「糸魚川ユネスコ世界ジオパーク」を題材に各自の自由な発想や問題意識に対してレポートを書き、専門家がサポートする事により地域独自のオリジナル論文として発表する形で、2012~昨年度迄に35本の論文が提出された。
また、単位は各講座4単位として、卒業までに論文を含め年間36単位で徐々に高度な教育カリキュラムを提供する形で行っているが、受講生からは、自分たちの研究や取り組みの成果が積み上げられていくことが嬉しいという反応があり、卒業・研究生・院生とステップアップして講師も輩出できた。
なお、2013年からはカレッジ卒業生らの論文をもとに実践を図るコミュニティーとして「ジオカフェ」の構想を試み、翌年には「糸魚川ジオパークカレッジ属研究室」に発展させ、地元の小中学に対する環境教室・糸魚川駅構内にある「ジオパル」で環境体験型レクレーション教室、糸魚川ブランド商品の開発と供給を行っている。
こうした活動を行う中で地元の小中学生らの関心も高まり、将来は大学院を中心とした大学構想を目指して活動している。