15:30 〜 16:45
[PCG21-P17] 土星オーロラ電波放射の南北非対称活動:強度の季節変動
キーワード:土星、土星キロメートル電波放射、南北比、季節変動、カッシーニ
土星は、Saturn Kilometric Radiation(SKR)と呼ばれる強力な電波放射を3-1200kHzで南北両極のオーロラ発光領域上空から放射している。この電波は、沿磁力線加速されたオーロラ降下電子からサイクロトロンメーザー不安定性によって励起され、放射源におけるその場のサイクロトロン周波数で放射される。放射源が、背景磁場に対して強い放射異方性を持ちながら、磁場に固定されて土星と共回転している特性から、土星の自転周期が評価されてきた。また、土星磁場の向き(地球と同様)に従い、北側からは右旋円偏波(RH)、南側からは左旋円偏波(LH)で放射されるため、円偏波度を用いて南北要素を分離可能である。この性質を利用したCassini探査機による土星南半球夏季の観測(2004-2010)から、自転に伴うSKR日変動周期が時間変動すること [Kurth et al., 2008]、この周期は南北で差があり南(夏側)でより長いこと[Gurnett et al., 2009]、春分点(2009年9月)付近に向かって南北間の周期差が縮小したこと [Gurnett et al., 2010] 等の活動特性が発見された。この電波周期の南北非対称・季節変動に関連して、Kimura et al. (2013)では、南北SKR強度の長期変動を追跡し、南半球夏〜秋季にかけてLH成分(南半球・夏側)がRH成分(北半球・冬側)よりも平均的に強いことを見出した。これらの統一的な原因として、土星の極域沿磁力線電流量・降下電子量・オーロラ活動量に対する極電離圏電気伝導度(太陽輻射に照らされる夏側がより高い)による制御、及びその季節変動・太陽紫外線輻射量への応答が示唆されるものの、結論は確立されていない。なお、2010年以降の北半球夏季には、南半球夏季に見られた南北日変動周期の相違が不明瞭であり[Provan et al., 2014; Fischer et al., 2015]、この事実は極域電離圏電気伝導度に原因を委ねるアイディアに反している。
我々は、最近に至る「北半球夏季」条件も網羅してSKR南北非対称性の特徴を解明すべく、周波数積分した南北SKR強度の季節変動について、南半球夏〜春分点 (2004-2010) の解析[Kimura et al., 2013]を北半球夏 (2015 夏) まで拡張した。この先行研究手法の延長期間への適用には、Cassini土星周回軌道の偏りが問題となる。土星SKRの放射は、朝側領域でより強い。また、極域の放射源位置と電波指向性の影響で近距離(10 Rs以内)や高緯度・反対半球側(北側放射では磁気緯度+30〜-5deg以外、南側放射は同+5〜-30deg以外)では観測強度が低下する。Kimura et al. (2013)では、Cassiniが「朝側領域(ローカルタイム(LT):2~10h)、RH(北側)・LH(南側)に対しそれぞれ磁気緯度+30〜-5deg・+5〜-30deg、さらに土星からの距離10-100Rs(Rsは土星半径)」に所在するときに絞り、強度を距離1AUへ規格化して解析した。しかし、2010年以降のCassini軌道は遠土点がそれまでの朝側から夕側へと移行しており、また軌道傾斜角も2015年に至るまで大きいため、同様の制限を設けると適用可能データが著しく減少する。このため、本研究では、磁気緯度及び土星距離に関してはKimura et al. (2013)と同条件を用いるものの、LTに対する制約を外して全LTを平均した南北SKR強度及びピークフラックスを比較調査した。但し、前者は北と南で異なるLTを見ることができるのでLT依存性の影響が避けられない。そのため並行して、Visibility effectの回避しやすい後者において緯度+-5degに絞り、南北同時観測データだけを拾い出した結果でも検証した。結果、前者に関して2004~2007年はLH成分(南半球・夏側)が~+40dB、2009~2012年では両極のSKR強度はほぼ同程度、2013年以降にはRH成分(北半球:夏側)が~+20dBほど大きくなる様子が見られ、明確な南北逆転を見いだした。この結果は「夏半球でオーロラ活動がより増大」というKimura et al. (2013)の結果と整合する。また、ピークフラックスについてはVisibility effectを回避するために+-35日幅でrunning median値を取り変動を見た所、2009年までは平均的にLH成分が優勢、2010~2012年の間は判然とせず、2013年以降はRH成分がやや優勢となり、強度比較と同傾向が見えた。ただし、2004年(南半球夏)では南北強度?ピークフラックス?比は10倍以上あるのに比べ、2015年(北半球夏)では0.2~0.4倍程しか差がなく、この原因はまだ不明である。本講演では、これらの傾向とSKR南北周期強度や太陽紫外線強度・太陽風活動度との相関についても触れる。(なお、Cassiniは2017年9月に運用終了予定である。)
我々は、最近に至る「北半球夏季」条件も網羅してSKR南北非対称性の特徴を解明すべく、周波数積分した南北SKR強度の季節変動について、南半球夏〜春分点 (2004-2010) の解析[Kimura et al., 2013]を北半球夏 (2015 夏) まで拡張した。この先行研究手法の延長期間への適用には、Cassini土星周回軌道の偏りが問題となる。土星SKRの放射は、朝側領域でより強い。また、極域の放射源位置と電波指向性の影響で近距離(10 Rs以内)や高緯度・反対半球側(北側放射では磁気緯度+30〜-5deg以外、南側放射は同+5〜-30deg以外)では観測強度が低下する。Kimura et al. (2013)では、Cassiniが「朝側領域(ローカルタイム(LT):2~10h)、RH(北側)・LH(南側)に対しそれぞれ磁気緯度+30〜-5deg・+5〜-30deg、さらに土星からの距離10-100Rs(Rsは土星半径)」に所在するときに絞り、強度を距離1AUへ規格化して解析した。しかし、2010年以降のCassini軌道は遠土点がそれまでの朝側から夕側へと移行しており、また軌道傾斜角も2015年に至るまで大きいため、同様の制限を設けると適用可能データが著しく減少する。このため、本研究では、磁気緯度及び土星距離に関してはKimura et al. (2013)と同条件を用いるものの、LTに対する制約を外して全LTを平均した南北SKR強度及びピークフラックスを比較調査した。但し、前者は北と南で異なるLTを見ることができるのでLT依存性の影響が避けられない。そのため並行して、Visibility effectの回避しやすい後者において緯度+-5degに絞り、南北同時観測データだけを拾い出した結果でも検証した。結果、前者に関して2004~2007年はLH成分(南半球・夏側)が~+40dB、2009~2012年では両極のSKR強度はほぼ同程度、2013年以降にはRH成分(北半球:夏側)が~+20dBほど大きくなる様子が見られ、明確な南北逆転を見いだした。この結果は「夏半球でオーロラ活動がより増大」というKimura et al. (2013)の結果と整合する。また、ピークフラックスについてはVisibility effectを回避するために+-35日幅でrunning median値を取り変動を見た所、2009年までは平均的にLH成分が優勢、2010~2012年の間は判然とせず、2013年以降はRH成分がやや優勢となり、強度比較と同傾向が見えた。ただし、2004年(南半球夏)では南北強度?ピークフラックス?比は10倍以上あるのに比べ、2015年(北半球夏)では0.2~0.4倍程しか差がなく、この原因はまだ不明である。本講演では、これらの傾向とSKR南北周期強度や太陽紫外線強度・太陽風活動度との相関についても触れる。(なお、Cassiniは2017年9月に運用終了予定である。)