日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM16] 大気圏・電離圏

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*大塚 雄一(名古屋大学太陽地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(独立行政法人 情報通信研究機構)

17:15 〜 18:30

[PEM16-P13] 2016年2月7日に北朝鮮から発射されたロケット:電離圏の穴から見える二段目の推力の増加

*日置 幸介1中島 悠貴2賀 黎明1 (1.北海道大学大学院理学研究院地球惑星科学部門、2.北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)

キーワード:GNSS-TEC、北朝鮮ロケット、電子数減少

昇するロケットや弾道ミサイルによって、それらの排気に含まれる大量の水分子が電離圏に持ち込まれると、正イオンから電荷を奪った水分子が電子と結合することによって、電離圏に電子の「穴」(電子密度の減少域)が生じる。電離圏全電子数(Total Electron Content, TEC)は、全球衛星航法システム(GNSS)のLバンドの複数搬送波の位相差から比較的容易に求めることができ、このような穴の観測に便利である(Furuya & Heki, 2008)。Ozeki & Heki (2010)は、日本全国に展開された国土地理院のGNSS網のデータから、2009年四月に北朝鮮東部舞水端里から東北日本に向けて発射されたロケット(大陸間弾道ミサイル・テポドン2)が日本海上空につくった電離圏の穴を解析し、1998年の同様のロケット(テポドン1)との推力を比較した。また2012年十二月には北朝鮮西北部東倉里から南に向けて銀河3号と呼ばれるロケットが打ち上げられたが、Nakashima & Heki (2014)は、GLONASS衛星のデータを解析することによって二段目が作った黄海上空の電子の穴と三段目が作った琉球南西部上空の電子の穴を見出した。
2016年2月7日の日本時間午前9:31(00:31 UT)に、2012年と同様に北朝鮮の東倉里から南に向けてロケットが発射され、地球観測衛星(光明星4号)を軌道に投入した。本研究では、GEONETのデータを用いて、このロケットが黄海や東シナ海上空に作った電離圏の穴を解析した。前回と異なりGPSとGLONASSのそれぞれ複数の衛星で穴を明瞭に捉えることができた。穴は打ち上げ6-7分後に生じたが、そのタイミングと場所は銀河3号のケースとほぼ同じであった。しかし、穴の規模(TECの減少量とそれが生じた範囲)は、2016年のケースが有意に大きい。九州西部のGNSS局でGPS29番衛星を用いて観測されたTECの時系列を、過去の三例の時系列と比較したものを添付の図に示す。今回生じた電離圏の穴において、TECの減少量と穴の継続時間が突出していることがわかる。
これまでの北朝鮮からのロケット打ち上げでは、一段目は電離圏高度到達前に切り離されており、二段目のロケットの排気が電離圏に影響を及ぼしていることがわかっている(Ozeki and Heki, 2010)。今回(2016年)のロケットの全体像は前回(2012年)とほぼ同じであることが知られているが、最終的に軌道に投入するペイロードが前回より大きいことがわかっており、それに伴って二段目の推力のパワーアップが図られた可能性がある。しかし、今回の打上当時の黄海上空の鉛直TECは約30 TECUと2012年の時の二倍程度であるため、実際の推力の比較はより定量的な議論が必要であろう。
文献
Furuya, T. and K. Heki, Ionospheric hole behind an ascending rocket observed with a dense GPS array, Earth Planets Space, 60, 235-239, 2008.
Nakashima, Y. and K. Heki, Ionospheric hole made by the 2012 North Korean rocket observed with a dense GNSS array in Japan, Radio Sci., 49, doi:10.1002/2014RS005413, 2014.
Ozeki, M. and K. Heki, Ionospheric holes made by ballistic missiles from North Korea detected with a Japanese dense GPS array, J. Geophys. Res., 115, A09314, doi:10.1029/2010JA015531, 2010.