[P-EM16] 大気圏・電離圏

[PEM16-P15] GPS-TECとHFドップラーを用いた火山噴火に伴う電離圏変動の解析

*長南 光倫¹、中田 裕之¹、大矢 浩代¹、鷹野 敏明¹、冨澤 一郎²、津川 卓也³、西岡 未知³ (1.千葉大学大学院工学研究科、2.電気通信大学宇宙・電磁環境研究センター、3.情報通信研究機構)

キーワード：電離圏、火山噴火

地震や台風など下層大気での現象に伴い大気波動が生じ，これにより電離圏擾乱が引き起こされることが知られている．火山噴火に伴い大気波動が生じることは知られているが，火山噴火に伴う電離圏擾乱の観測事例はそれほど多くない．そこで本研究では，火山噴火に伴う電離圏の変動について，GPS-TEC(Total Electron Content)データと短波ドップラー(HF Doppler：HFD)を用いて解析を行った．
GPS-TECデータは，国土地理院のGPS連続観測システム(GPS Earth Observation Network : GEONET)により導出されるものを用いた．TECデータは各衛星―受信機のペアにおいて導出される．解析には，GEONETの受信点約1200点，衛星仰角30度以上の30秒値データを用いた．このデータに高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform : FFT)を施し，周波数帯域毎のスペクトル強度を算出し，TECの変動を検証した．解析対象は，2000年以降に浅間山，御嶽山，および新燃岳で発生した噴火19事例とした．結果，19事例中2事例で火山噴火に伴うTEC変動が検出された．いすれも中爆発規模の浅間山における噴火である．TEC変動はいずれも火山の南側で顕著であり，地震の場合と同様である．しかし変動は7 ~ 12 mHzの周波数帯域で確認された．これは地震時に観測されるものより高い周波数である．
さらに，GPS-TECより変動が検出された2事例を含め，浅間山で発生した中爆発規模噴火4事例を対象に，電気通信大学の短波ドップラー(HFD)観測データを用いて解析を行った．解析には浅間山火口に最も近い観測点である，菅平の5.12秒値の観測データを用いた．結果，4事例中3事例で変動が確認された．FFTを施した結果，3 ~ 5 mHz帯に1つのピーク，8 ~ 18 mHzの帯域に複数のピークが見られる傾向にあった．3 ~ 5 mHzは地震に伴うTEC変動で卓越する帯域で，地面の変動により発生した波動が地表と下部熱圏との間に閉じ込められて定在波となり，電離圏まで漏れて到達してくることに起因する．これより，火山噴火に伴うTEC変動も同様のメカ二ズムをもつことが示唆される．しかし，GPS-TECでは変動が見られず，その原因については今後調べていく必要がある．8 ~ 18 mHzの帯域見られる複数のピークは，噴火の爆発規模に由来し，噴火の爆発により生じた圧力変動が電離圏に伝わったものではないかと考えられる．また，GPS-TECによる解析で見られた7 ~ 12 mHzの変動と同様のものをとらえたと考えられる．