日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM18] 磁気圏-電離圏ダイナミクス

2016年5月25日(水) 13:45 〜 15:15 103 (1F)

コンビーナ:*堀 智昭(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、田中 良昌(国立極地研究所)、中溝 葵(情報通信研究機構 電磁波計測研究所)、尾崎 光紀(金沢大学理工研究域電子情報学系)、中野 慎也(情報・システム研究機構 統計数理研究所)、三好 由純(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、座長:元場 哲郎(名古屋大学)、尾花 由紀(大阪電気通信大学工学部基礎理工学科)

13:45 〜 14:00

[PEM18-07] かぐや衛星とGEOTAIL衛星によって観測された地球磁気圏尾部プラズマシート境界中のイオンサイクロトロン波

*中川 朋子1綱川 秀夫2 (1.東北工業大学工学部情報通信工学科、2.東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:イオンサイクロトロン波、プラズマシート境界、ローブ、かぐや、ジオテイル、左回り

アポロ15-16号ミッションで月面上に置かれた磁力計によって、地球磁気圏尾部のローブないしプラズマシート中で周期約10秒の狭帯域の磁場変動が観測されていたことがChi et al. (PSS,2013)によって報告されている。この波はイオンサイクロトロン波と考えられ、その励起機構として、月面での吸収によるプラズマの温度異方性と、ピックアップイオンのサイクロトロン共鳴というシナリオが示唆されていた。

月面上の高度100kmを周回するかぐや衛星でも、同じような狭帯域の磁場変動が観測された。その発生場所は月面上の月固有磁場とは関係がなく、また、衛星と月面が磁力線によってつながっていてもつながっていなくても観測されることから、月面のプラズマ吸収がこの波の原因とは言えないことがわかった。

さらに同じような現象を、GEOTAILの観測した16Hzサンプリング磁場データ中から探すと、月が磁気圏中に無い時に、地球から30-150RE下流の磁気圏尾部においても、同様の狭帯域の波が検出されていることがわかった。これらのサイクロトロン波は、プロトンのサイクロトロン周波数の0.7倍程度の周波数であること、磁場強度にも変動がみられること、ダイナミックスペクトルでは連続しているように見えても波形をよく見るとパケット状になっていること、などの性質が共通している。共通の性質をもつ波がCASSINIの地球スイングバイの際にも観測されており(Bogdanov et al., 2003)、同じ発生メカニズムによるものと考えられる。

一方、磁気圏尾部中では同じプロトンサイクロトロン周波数付近に右回りの円偏波ノイズが観測されている(Kawano et al., 1994)。冷たい高密度のローブ起源イオンと、速度差が1000km/sにもなるイオンビームが同時に観測されていることから、この右回りの波はイオン同士の共鳴不安定によるものとされた。

それに対し、今回報告する狭帯域のサイクロトロン波は、150REほどの遠尾部でははっきりと左回りであり、40REの月起動付近では右左が混在していた。偏波の違い、及び、周波数帯域の狭さの違いから、右回り円偏波ノイズとは異なる発生メカニズムによるものと考えられる。