17:15 〜 18:30
[PEM18-P12] あけぼの衛星によるサウンダー観測結果に基づくMF/HF帯オーロラ電波放射の発生高度と周波数の推定
キーワード:オーロラロアー、地球ヘクトメートル波、あけぼの衛星
地球のオーロラ帯の電離圏では様々なオーロラ関連電波が放射されており、地上電波観測によってオーロラヒス、MF burst、オーロラロアーといった現象が報告されている[例えば、Sato et al., 2008]。特に、オーロラロアーはMF/HF帯で観測される狭帯域の電波放射であり、その発生過程は静電的プラズマ波動から電磁波へのモード変換過程によって理解されている。オーロラロアーは、下部電離圏を放射源として、広域混成共鳴周波数(fUHR)と電子サイクロトロン周波数(fce)の整数倍とが等しくなる(fUHR=nfce、ただしn=2,3,4 and 5)領域において発生すると考えられている。一方で、この発生条件は上部電離圏でも満足し得ることから、上部電離圏を発生源として宇宙空間へと放射される地球ヘクトメートル波(Terrestrial Hectometric Radiation; THR[Oya et al., 1985])の放射過程として考えられており、実際にあけぼの衛星に搭載されたプラズマ波動観測器PWSにより、オーロラロアーに類似した特徴を持つTHRが観測されている[Sato et al., 2010]。しかしながらTHRに関しては、2fce roarに対応する周波数での観測例が報告されている一方で、RX-modeの偏波特性を示す高周波THRを除けば、3fce 以上に対応するTHRの報告例はない。この点は、地上観測によって5fceに対応する放射までの報告例[LaBelle et al., 2012]があるオーロラロアーとは異なる特徴であり、その要因を理解するためには、THR発生領域のプラズマ環境を明らかにする必要がある。
本研究では、2015年3月19日から2015年4月18日の一か月間にわたり実施されたあけぼの衛星によるサウンダー観測データを用いて、上部電離圏におけるMF/HF帯オーロラ電波放射の発生高度と発生周波数の推定を行った。サウンダー観測により得られたイオノグラムを解析して、電子密度の高度分布を求め、その結果と磁場モデルとを用いることにより、fUHRとfceの高度分布を導出し、THRの発生高度と周波数を推定する。IRI(International Reference Ionosphere)など経験モデルに基づく電子密度分布ではなく、サウンダー観測によって実際の電子密度分布を求めることにより、より正確な発生高度と周波数の推定が可能である。本研究では特に、解析期間中に地上電波観測が実施されているアイスランド(緯度64.67°N,経度21.03°W)とスヴァールバル(緯度78.15°N,経度16.04°E)の周辺に着目して、緯度50-80°N、経度50°W-50°Eでのサウンダー観測データを解析対象とした。一か月間のサウンダー観測データから、対象領域内で50例のfUHRの高度分布が得られている。その結果から過去の研究により報告例のある2fceに対応するTHRの発生高度と周波数として、fUHR=2fceの条件を満たす高度は約440-1090km、放射周波数は約1.9-2.5MHzと推定された。さらに本研究の結果、50例中2例でfUHR=3fceの条件が上部電離圏で成立することが見いだされ、3fceに対応するTHRが存在する可能性が指摘された。2例の結果より、fUHR=3fceの条件を満たす高度は約330-450km、放射周波数は約3.8-3.9MHzと推定された。以上の結果をふまえて本研究では、PWSによる自然電波の観測の解析を実施した。その結果、解析対象とした領域において、THR放射が1例同定され、その周波数はサウンダー観測に基づいて推定した2fceに対応するTHRの周波数範囲に整合することが確認されている。本研究の成果に基づいて、解析対象期間における地上観測結果との比較や、他の緯度・経度範囲での観測結果、ならびにPWSによる過去の観測例の考察により、MF/HF帯オーロラ電波放射過程の理解に資する結果が得られると期待される。
本研究では、2015年3月19日から2015年4月18日の一か月間にわたり実施されたあけぼの衛星によるサウンダー観測データを用いて、上部電離圏におけるMF/HF帯オーロラ電波放射の発生高度と発生周波数の推定を行った。サウンダー観測により得られたイオノグラムを解析して、電子密度の高度分布を求め、その結果と磁場モデルとを用いることにより、fUHRとfceの高度分布を導出し、THRの発生高度と周波数を推定する。IRI(International Reference Ionosphere)など経験モデルに基づく電子密度分布ではなく、サウンダー観測によって実際の電子密度分布を求めることにより、より正確な発生高度と周波数の推定が可能である。本研究では特に、解析期間中に地上電波観測が実施されているアイスランド(緯度64.67°N,経度21.03°W)とスヴァールバル(緯度78.15°N,経度16.04°E)の周辺に着目して、緯度50-80°N、経度50°W-50°Eでのサウンダー観測データを解析対象とした。一か月間のサウンダー観測データから、対象領域内で50例のfUHRの高度分布が得られている。その結果から過去の研究により報告例のある2fceに対応するTHRの発生高度と周波数として、fUHR=2fceの条件を満たす高度は約440-1090km、放射周波数は約1.9-2.5MHzと推定された。さらに本研究の結果、50例中2例でfUHR=3fceの条件が上部電離圏で成立することが見いだされ、3fceに対応するTHRが存在する可能性が指摘された。2例の結果より、fUHR=3fceの条件を満たす高度は約330-450km、放射周波数は約3.8-3.9MHzと推定された。以上の結果をふまえて本研究では、PWSによる自然電波の観測の解析を実施した。その結果、解析対象とした領域において、THR放射が1例同定され、その周波数はサウンダー観測に基づいて推定した2fceに対応するTHRの周波数範囲に整合することが確認されている。本研究の成果に基づいて、解析対象期間における地上観測結果との比較や、他の緯度・経度範囲での観測結果、ならびにPWSによる過去の観測例の考察により、MF/HF帯オーロラ電波放射過程の理解に資する結果が得られると期待される。