日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM19] 太陽圏・惑星間空間

2016年5月25日(水) 10:45 〜 12:15 302 (3F)

コンビーナ:*坪内 健(東京工業大学大学院理工学研究科)、西野 真木(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、成行 泰裕(富山大学人間発達科学部)、座長:塩田 大幸(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

11:45 〜 12:00

[PEM19-05] 月ウェイクへの太陽風電子の流入とELF帯磁場変動に関する考察

*中川 朋子1綱川 秀夫2斎藤 義文3西野 真木4 (1.東北工業大学工学部情報通信工学科、2.東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻、3.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系、4.名古屋大学宇宙地球環境研究所)

キーワード:電子ビーム、磁場変動、月ウェイク、タイプⅡエントリープロトン、ホイスラ波、斜め伝搬

月面による太陽風プラズマ吸収のため月の下流に形成されるウェイク中には、月表面で反射されたプロトンが太陽風磁場の周りをラーマー運動して進入するタイプIIエントリープロトンが存在することがNishino et al., (2009,GRL)によって発見されている。このタイプIIプロトン侵入による正電荷の過剰のため、太陽風電子が磁力線に沿ったビームとなって流入していることがかぐや衛星のMAP/PACEにより観測され、双方向電子ビームにより形成された静電孤立波と考えられる広帯域の静電ノイズ(BEN)が同時に観測されている(Nishino et al., 2010, GRL)。

一方、かぐや衛星搭載のMAP/LMAGによって、月の真裏のウェイク中心部で 1-8Hz程度の周波数帯のELF波動が観測されており、これもまたタイプIIプロトンを伴っていた(Nakagawa et al., 2015, EPS)。 このELF波は磁場強度の変動を伴っており、斜め伝搬の波であることがわかる。 明確な周波数のピークはなかった。ELF波の観測される時間はタイプIIプロトンの継続時間より短く、 衛星が月面と磁力線でつながっている間は観測されず(例外2例)、磁力線が月面から離れると同時に0.1keV程度の電子が増え、ELF波が現れた例が5例あった。すなわち、このELF波の励起には電子の存在が必要であることが示唆される。 また、タイプIIプロトンに伴う電子ビーム及びBENがあっても、ELF波が観測されない例が少なくとも8例見つかっている。

磁力線に平行な電子ビームで磁場変動を伴う波を励起することは困難であるが、電子ビームの温度が高いこと、背景のプラズマ密度に対して電子ビームの密度が高いこと、また、波の伝搬が磁場に対して斜めであることによって、静電的な不安定とホイスラ不安定がある条件のもと協働してホイスラ波を励起した可能性(Zhang et al., 1993, GRL)が示唆される。