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[PPS11-16] 暴走温室状態の発生条件に関する大気大循環モデル実験
キーワード:暴走温室状態、系外惑星、射出限界、大気大循環モデル、生命存在可能性
系外惑星での生命存在可能性を念頭に置き, 惑星表層における液体の水の存在条件に関する議論が行なわれている (例えば, Kasting et al., 1993). その中の主要テーマの 1 つが暴走温室状態の発生条件に関する考察である. 暴走温室状態とは, 表面に海が存在する惑星の湿潤な大気において, 入射フラックスが大気によって射出可能な赤外放射量上限値 (射出限界) を上回り, 熱収支が均衡しえなくなる状態である (Nakajima et al., 1992). 近年の大気大循環モデル (AGCM) を用いた研究では, 大気循環の効果や雲のアルベド効果が暴走温室状態の発生条件に強く影響すると議論されている (Leconte et al., 2013; Yang et al., 2013; Wolf and Toon, 2015 など). これに対して, 我々は, 暴走温室状態の発生条件は全球平均日射吸収量が赤外放射量最大値を上回ることであると予想している. この予想を確かめるため, 大気大循環モデルを用いた数値実験を行ない, 地球を想定した日射分布, 同期回転惑星を想定した日射分布を与えた場合のそれぞれにについて太陽定数の増加に対するモデル大気の変化を調べた. 用いたモデルはこれまで我々が開発をおこなってきた大気大循環モデル DCPAM5 (http://www.gfd-dennou.org/library/dcpam) である. サブグリッドスケールの物理素過程は気象学分野で標準的なパラメータ化の方法を用いて表現する. 雲水量は, 生成・移流・乱流拡散・消滅 (雲水量に比例し, 消散時間をパラメータとして与える) を考慮した時間発展方程式を解くことにより求める. 地表面は全て比熱が 0 の沼地であると仮定する. GCM 実験の結果, 大気放射が灰色であるか否か・雲の有無・日射分布によらず, 太陽定数が増大した場合に惑星放射の水平偏差が小さくなった. どの場合でも, 赤外放射量最大値を全球平均日射吸収量が越えると暴走温室状態が発生するようである. 赤外放射最大値は系の設定に応じて異なるけれども, 暴走温室状態が発生するか否かを決定する機構自体は共通であることが示唆された.