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[PPS12-P16] 火星の角礫岩隕石NWA 7034についての岩石学的記載と形成過程の研究
キーワード:火星隕石、表土角礫岩、メルト小球体
NWA 7034とそのペア隕石は火星の表土角礫岩であるとされている。これらの隕石に含まれる鉱物にはSNC隕石やローバーミッションなどで分析された火星の土壌に似た化学組成を持つものもある。NWA 7034を調べることによって、SNC隕石よりも直接的に火星表面の情報を得ることができると期待される。そこで我々は、この角礫岩についてFE-SEM-EDS、EPMAをもちいて組織観察・化学組成分析を行い、その形成過程を考察した。
NWA 7034は多様なクラスト(岩石片・鉱物片)とその間を埋める細粒のマトリックスから成るポリミクトな角礫岩である。観察の結果から、特定したクラストをモノミネラリッククラスト、火成岩クラスト、角礫岩クラスト、Group Xクラスト、Group Yクラスト、メルトクラストの6つのグループに分類した。
I) モノミネラリッククラストは単一の鉱物から成る鉱物片である。観察された鉱物は長石、輝石、アパタイト、マグネタイト、イルメナイトであり、~100 μm程度の大きさのものが多い。特に斜長石(Ab44–89An5–55Or1–6)、輝石(En20–85Fs12–54Wo2–44)は様々な組成をもち、離溶が見られるものと見られないものがある。このことから、様々な起源をもつ鉱物片が本試料中に含まれていることが分かる。また、化学組成の類似性によれば、他のグループのクラストを構成する鉱物の破片であるものを含んでいる。
II) 火成岩クラストは輝石、斜長石、マグネタイト、イルメナイトなど複数の鉱物から成り、粒状組織やオフィティック組織といった、火成岩によく似た組織を示す。クラストの長辺は40 μm~1 mmと多様であり、各構成鉱物は10 μm~50 μmの大きさのものがほとんどである。また輝石の組成についてはSNC隕石の輝石とよく似た傾向を示す。これらの結果から、火成岩クラストは火星の火成活動によって形成されたと考えられる。
III) 角礫岩クラストは自形から半自形の鉱物(~100 μm程度)と、その間を埋める針状の細粒鉱物(1 μm以下)から構成されている。粗粒と細粒組織の構成鉱物はどちらも主に斜長石、輝石、マグネタイトである。見られたクラスト全体の長辺は340 μm~1.8 mmである。その組織から、NWA 7034角礫岩形成以前に存在していた角礫岩が衝突などの熱により部分溶融・急冷・角礫化したものであると考えられる。
IV) Group Xとしたクラストは2 ~ 3個の鉱物結晶から成り、火成岩クラストのように入り組んだ組織は持たない。クラスト全体の長辺は40 μm~1mmであった。構成鉱物は斜長石、輝石、アパタイト、マグネタイト、イルメナイトである。構成鉱物や組織から火成岩クラストの一部であると考えられる。
V) Group Yクラストは細粒の輝石(10 μm以下)の集合体の周りに斜長石から成るリムが見られるものである。クラスト全体の長辺は70 μm~580 μmであり、形状はアメーバ状や球状など多様である。また、内部にマグネタイトを含むものも見られた。このクラストと同様のものは角礫岩クラストにも含まれている。
VI) メルトクラストは直径約3 mmの球状のクラストである。クラスト本体はカンラン石の樹枝状結晶(デンドライト)を含んでいる。本試料中でカンラン石が見られたのはこのクラストのみである。カンラン石の樹枝状結晶の長さはクラスト中心部では1 mm程度であり、外側では150~200 μmであった。このクラストで特徴的なのは、クラスト本体の周りに約3層のリムを伴うことである。一番内側のリムには長さ50~150 μmの輝石の針状結晶が含まれている。この輝石はクラスト本体のカンラン石結晶よりもマグネシウムに富むという特徴を持つ。その外側のリムには輝石と同じ大きさの針状の斜長石結晶が含まれており、ナトリウムに富むという特徴を持っている。クラスト本体のカンラン石結晶とリムの輝石・斜長石結晶が、一つの針状結晶としてつながっている部分も見られる。また、一番外側のリムは1 μm以下の輝石、斜長石、鉄酸化物から成っている。カンラン石の樹枝状結晶を含んでいることやクラストが球状であることはコンドリュールの特徴と共通しており、メルトが急冷して形成したことが推測される。また針状結晶を含むリムは、このクラストが二次的な熱の影響を受けた際に形成した可能性が考えられる。
VII) マトリックスはクラストの間を埋めており、数~10 μmの破片状の鉱物と1 μm以下の細粒の鉱物から成る。構成鉱物は斜長石、輝石、アパタイト、マグネタイトである。
以上の分析結果より、NWA 7034は主にSNC隕石を構成する火星起源の火成岩の粉砕・角礫化・溶融により形成した多様なクラストを含む角礫岩隕石であることがわかった。また、各クラストの形成時期や形成環境は異なり、少なくとも2回以上の角礫岩化作用を受けたものと考えられる。
NWA 7034は多様なクラスト(岩石片・鉱物片)とその間を埋める細粒のマトリックスから成るポリミクトな角礫岩である。観察の結果から、特定したクラストをモノミネラリッククラスト、火成岩クラスト、角礫岩クラスト、Group Xクラスト、Group Yクラスト、メルトクラストの6つのグループに分類した。
I) モノミネラリッククラストは単一の鉱物から成る鉱物片である。観察された鉱物は長石、輝石、アパタイト、マグネタイト、イルメナイトであり、~100 μm程度の大きさのものが多い。特に斜長石(Ab44–89An5–55Or1–6)、輝石(En20–85Fs12–54Wo2–44)は様々な組成をもち、離溶が見られるものと見られないものがある。このことから、様々な起源をもつ鉱物片が本試料中に含まれていることが分かる。また、化学組成の類似性によれば、他のグループのクラストを構成する鉱物の破片であるものを含んでいる。
II) 火成岩クラストは輝石、斜長石、マグネタイト、イルメナイトなど複数の鉱物から成り、粒状組織やオフィティック組織といった、火成岩によく似た組織を示す。クラストの長辺は40 μm~1 mmと多様であり、各構成鉱物は10 μm~50 μmの大きさのものがほとんどである。また輝石の組成についてはSNC隕石の輝石とよく似た傾向を示す。これらの結果から、火成岩クラストは火星の火成活動によって形成されたと考えられる。
III) 角礫岩クラストは自形から半自形の鉱物(~100 μm程度)と、その間を埋める針状の細粒鉱物(1 μm以下)から構成されている。粗粒と細粒組織の構成鉱物はどちらも主に斜長石、輝石、マグネタイトである。見られたクラスト全体の長辺は340 μm~1.8 mmである。その組織から、NWA 7034角礫岩形成以前に存在していた角礫岩が衝突などの熱により部分溶融・急冷・角礫化したものであると考えられる。
IV) Group Xとしたクラストは2 ~ 3個の鉱物結晶から成り、火成岩クラストのように入り組んだ組織は持たない。クラスト全体の長辺は40 μm~1mmであった。構成鉱物は斜長石、輝石、アパタイト、マグネタイト、イルメナイトである。構成鉱物や組織から火成岩クラストの一部であると考えられる。
V) Group Yクラストは細粒の輝石(10 μm以下)の集合体の周りに斜長石から成るリムが見られるものである。クラスト全体の長辺は70 μm~580 μmであり、形状はアメーバ状や球状など多様である。また、内部にマグネタイトを含むものも見られた。このクラストと同様のものは角礫岩クラストにも含まれている。
VI) メルトクラストは直径約3 mmの球状のクラストである。クラスト本体はカンラン石の樹枝状結晶(デンドライト)を含んでいる。本試料中でカンラン石が見られたのはこのクラストのみである。カンラン石の樹枝状結晶の長さはクラスト中心部では1 mm程度であり、外側では150~200 μmであった。このクラストで特徴的なのは、クラスト本体の周りに約3層のリムを伴うことである。一番内側のリムには長さ50~150 μmの輝石の針状結晶が含まれている。この輝石はクラスト本体のカンラン石結晶よりもマグネシウムに富むという特徴を持つ。その外側のリムには輝石と同じ大きさの針状の斜長石結晶が含まれており、ナトリウムに富むという特徴を持っている。クラスト本体のカンラン石結晶とリムの輝石・斜長石結晶が、一つの針状結晶としてつながっている部分も見られる。また、一番外側のリムは1 μm以下の輝石、斜長石、鉄酸化物から成っている。カンラン石の樹枝状結晶を含んでいることやクラストが球状であることはコンドリュールの特徴と共通しており、メルトが急冷して形成したことが推測される。また針状結晶を含むリムは、このクラストが二次的な熱の影響を受けた際に形成した可能性が考えられる。
VII) マトリックスはクラストの間を埋めており、数~10 μmの破片状の鉱物と1 μm以下の細粒の鉱物から成る。構成鉱物は斜長石、輝石、アパタイト、マグネタイトである。
以上の分析結果より、NWA 7034は主にSNC隕石を構成する火星起源の火成岩の粉砕・角礫化・溶融により形成した多様なクラストを含む角礫岩隕石であることがわかった。また、各クラストの形成時期や形成環境は異なり、少なくとも2回以上の角礫岩化作用を受けたものと考えられる。