09:20 〜 09:35
[PPS14-02] カンラン石存在下におけるアルデヒド・アンモニアからのアミノ酸合成
キーワード:アミノ酸、炭素質コンドライト、水質変成過程、カンラン石、アルドール反応
【序論】
太陽系において始原的な化学組成をもつ炭素質コンドライトには多種の地球外起源のアミノ酸が含まれている.地球生命の構成物質が地球外物質中から発見されたことから,アミノ酸は隕石有機物の中でも最も研究がなされてきた1つである.特に,炭素質隕石の水質変成度がアミノ酸の分布(例えば,α-アミノイソ酪酸やβ-アラニン)や不斉炭素をもつイソバリンのL体鏡像異性体過剰率(Lee)と相関があることが注目されている.それらは水質変成がアミノ酸生成に影響を与えることを示唆しているが,その詳細な生成機構は解明されていない.本研究では隕石母天体環境を模したアミノ酸合成実験を行い,その分布やLeeを分析して隕石アミノ酸の生成機構を解明することを目的とした.
【実験】
アンモニア/ホルムアルデヒド/アセトアルデヒドまたはケトン(100/10/1 モル比)を含む水溶液(300 μL)をカンラン石粉末に加えて,N2置換したガラスアンプル中で60℃,6~28日間加熱した(カンラン石を加えない系も実施).反応物質の熱水抽出液を分割して,一方を6M 塩酸で加水分解した.加水分解と未加水分解画分それぞれを陽イオン交換樹脂で精製後,トリフルオロアセチル/イソプロピルエステル誘導体化を行い,ガスクロマトグラフ質量分析計で分析した.標準試料の保持時間とマススペクトルを用いてアミノ酸を同定・定量した.
【結果と考察】
炭素数5までの計16種類のアミノ酸が同定され,それらの中では炭素数2のグリシンが最も多く存在した(出発物質の炭素量に対して最大約3500 ppm).その他には主にセリン,イソセリン,アラニン, β-アラニン,β-(アミノメチル)コハク酸,β-アミノ酪酸,ホモセリン,アスパラギン酸,グルタミン酸が存在した(それぞれ最大約600, 250, 240, 240, 160, 110, 60, 60, 50 ppm).カンラン石の存在しない加水分解画分では比較的少量のグリシン,セリン,イソセリン,アラニン,β-アラニン,β-アミノ酪酸(それぞれ最大約840, 30, 110, 80, 90, 90 ppm)が検出されたのに対して,カンラン石存在下の加水分解画分においては,これらほとんどのアミノ酸濃度が著しく増加した(それぞれ最大約3500, 600, 250, 240, 240, 110 ppm).加水分解後にアミノ酸濃度が増加する特徴は隕石アミノ酸と一致している.
検出されたアミノ酸分布(α-アミノイソ酪酸やイソバリンの未検出など)からは隕石アミノ酸生成で提案されているストレッカー反応とは異なる反応経路が示唆される.その生成機構として,ホルミルアニオンがアルデヒドとアンモニアから生成されるイミニウムカチオンに対して求核攻撃し,その後酸化を経ることでα-アミノ酸を生成する経路が考えられる.より炭素数の多いアミノ酸(> C3)はアルドール反応によって生成するアルデヒドを出発物質と考えると,検出されたα-, β-アミノ酸生成を網羅的に説明することができる.
カンラン石存在下におけるアルデヒド・アンモニアからのアミノ酸生成の生成機構をより詳細に解明するためには更なる研究が必要である.
太陽系において始原的な化学組成をもつ炭素質コンドライトには多種の地球外起源のアミノ酸が含まれている.地球生命の構成物質が地球外物質中から発見されたことから,アミノ酸は隕石有機物の中でも最も研究がなされてきた1つである.特に,炭素質隕石の水質変成度がアミノ酸の分布(例えば,α-アミノイソ酪酸やβ-アラニン)や不斉炭素をもつイソバリンのL体鏡像異性体過剰率(Lee)と相関があることが注目されている.それらは水質変成がアミノ酸生成に影響を与えることを示唆しているが,その詳細な生成機構は解明されていない.本研究では隕石母天体環境を模したアミノ酸合成実験を行い,その分布やLeeを分析して隕石アミノ酸の生成機構を解明することを目的とした.
【実験】
アンモニア/ホルムアルデヒド/アセトアルデヒドまたはケトン(100/10/1 モル比)を含む水溶液(300 μL)をカンラン石粉末に加えて,N2置換したガラスアンプル中で60℃,6~28日間加熱した(カンラン石を加えない系も実施).反応物質の熱水抽出液を分割して,一方を6M 塩酸で加水分解した.加水分解と未加水分解画分それぞれを陽イオン交換樹脂で精製後,トリフルオロアセチル/イソプロピルエステル誘導体化を行い,ガスクロマトグラフ質量分析計で分析した.標準試料の保持時間とマススペクトルを用いてアミノ酸を同定・定量した.
【結果と考察】
炭素数5までの計16種類のアミノ酸が同定され,それらの中では炭素数2のグリシンが最も多く存在した(出発物質の炭素量に対して最大約3500 ppm).その他には主にセリン,イソセリン,アラニン, β-アラニン,β-(アミノメチル)コハク酸,β-アミノ酪酸,ホモセリン,アスパラギン酸,グルタミン酸が存在した(それぞれ最大約600, 250, 240, 240, 160, 110, 60, 60, 50 ppm).カンラン石の存在しない加水分解画分では比較的少量のグリシン,セリン,イソセリン,アラニン,β-アラニン,β-アミノ酪酸(それぞれ最大約840, 30, 110, 80, 90, 90 ppm)が検出されたのに対して,カンラン石存在下の加水分解画分においては,これらほとんどのアミノ酸濃度が著しく増加した(それぞれ最大約3500, 600, 250, 240, 240, 110 ppm).加水分解後にアミノ酸濃度が増加する特徴は隕石アミノ酸と一致している.
検出されたアミノ酸分布(α-アミノイソ酪酸やイソバリンの未検出など)からは隕石アミノ酸生成で提案されているストレッカー反応とは異なる反応経路が示唆される.その生成機構として,ホルミルアニオンがアルデヒドとアンモニアから生成されるイミニウムカチオンに対して求核攻撃し,その後酸化を経ることでα-アミノ酸を生成する経路が考えられる.より炭素数の多いアミノ酸(> C3)はアルドール反応によって生成するアルデヒドを出発物質と考えると,検出されたα-, β-アミノ酸生成を網羅的に説明することができる.
カンラン石存在下におけるアルデヒド・アンモニアからのアミノ酸生成の生成機構をより詳細に解明するためには更なる研究が必要である.