15:30 〜 16:45
[SCG56-P08] 新潟県米山地域の中ノ岳貫入岩体の岩石学的特徴
キーワード:北部フォッサマグナ、米山、中ノ岳貫入岩体、結晶分化作用、ソレアイト系列
北部フォッサマグナの日本海沿岸に位置する米山地域には,後期鮮新世〜前期更新世の米山層火山岩類が分布し,小規模な貫入岩体をともなっている.米山層火山岩類の岩石学的研究は,佐藤・米山団体研究グループ(1975)によって,全岩化学組成の特徴が明らかにされているが,微量成分元素,同位体組成,構成鉱物の化学組成に関する検討は不十分である.本発表では,米山層に貫入する中ノ岳貫入岩体について報告し,米山層火山岩類と比較することによって本地域の火成活動の特徴を明らかにする.
中ノ岳貫入岩体は,米山地域の北西部に位置する南北約1.6 km,東西約1.2 kmの楕円形の岩体で,比高約330 mの独立峯を構成する.本岩体は,これまで角閃石安山岩の貫入岩とされていたが(竹内ほか,1996),中央部に斑レイ岩,周縁部に角閃石安山岩が取り囲む複合岩体であることが明らかとなった.岩体西側の角閃石安山岩と米山層泥岩との接触部から,本岩体の貫入面の構造は北東に約50°傾斜している.稲葉ほか(2014)によれば,全岩K-Ar年代は,角閃石安山岩で2.2 Ma,斑レイ岩で1.6 Maを示し,米山層火山岩の年代値が4.7〜0.85 Maの範囲であることから,米山層の末期の火成活動に相当する.
斑レイ岩は自形〜半自形の斜長石,直方(斜方)輝石,単斜輝石からなる直方輝石−単斜輝石斑レイ岩で,結晶粒間に他形の不透明鉱物とアルカリ長石が見られる.稀に他形の黒雲母,角閃石を含む.角閃石安山岩は普通角閃石−直方輝石−単斜輝石安山岩と普通角閃石−単斜輝石安山岩からなり,斑晶は,普通角閃石,斜長石,単斜輝石,直方輝石,不透明鉱物からなる.しばしば普通角閃石のオパサイト縁中に微細な黒雲母が見られる.石基は斜長石,アルカリ長石,直方輝石,単斜輝石,不透明鉱物,ガラスからなり,石基の単斜輝石は透輝石,普通輝石,ピジョン輝石からなる.中ノ岳貫入岩体の全岩化学組成の特徴は,SiO2量は斑レイ岩が50〜53 wt%,角閃石安山岩が55〜57 wt%であり,Gill (1981)の中間K~高Kの領域にプロットされ,Miyashiro (1974)のソレアイト系列に属する.これらの特徴はすべて米山層火山岩類と類似し,両者が共通のマグマに由来したことを示す.
中ノ岳貫入岩体の構成鉱物の化学組成は,単斜輝石・直方輝石ともにcoreのMg値(100*Mg/(Mg+Fe))の最高値が,斑レイ岩で低く(Cpx:63〜80,Opx:57〜73),角閃石安山岩で高い(Cpx:74〜85,Opx:69〜79).斜長石coreのAn値は,斑レイ岩が43〜94,角閃石安山岩は45〜94であるが,最頻値は角閃石安山岩の方が高An値の傾向がある.Wells(1977)の輝石温度計は,斑レイ岩では低SiO2(50〜51 wt%)岩石が800−900℃,高SiO2(52〜53 wt%)岩石が970−1060℃を示し,角閃石安山岩は920−1050℃である.以上から,中ノ岳貫入岩体は,低SiO2斑レイ岩から高SiO2角閃石安山岩へと組成変化するが,構成鉱物の化学組成は,低SiO2斑レイ岩では低Mg値の単斜輝石・直方輝石,低An値の斜長石を示し,これらの火成岩を単純な結晶分化作用で導くことはできない.米山層火山岩においても,SiO2=46〜51 wt%の玄武岩組成において,SiO2の増加にともなって単斜輝石のMg値,斜長石のAn値が増加する傾向があり,中ノ岳貫入岩体と共通する.
引用文献
Gill, J.B. (1981) Orogenic andesites and plate tectonics. Berlin, Springer, 390p.
稲葉ほか(2014)2014年石油技術協会個人講演会講演要旨集
Miyashiro, A. (1974) Amer. Jour. Sci., 274, 321-355.
佐藤・米山団体研究グループ(1975)地球科学,29,211-226.
竹内ほか(1996)柿崎地域の地質.地域地質研究報告,地質調査所.
Wells, P.R.A. (1977) Contr. Miner. Petrol., 62, 129-139.
中ノ岳貫入岩体は,米山地域の北西部に位置する南北約1.6 km,東西約1.2 kmの楕円形の岩体で,比高約330 mの独立峯を構成する.本岩体は,これまで角閃石安山岩の貫入岩とされていたが(竹内ほか,1996),中央部に斑レイ岩,周縁部に角閃石安山岩が取り囲む複合岩体であることが明らかとなった.岩体西側の角閃石安山岩と米山層泥岩との接触部から,本岩体の貫入面の構造は北東に約50°傾斜している.稲葉ほか(2014)によれば,全岩K-Ar年代は,角閃石安山岩で2.2 Ma,斑レイ岩で1.6 Maを示し,米山層火山岩の年代値が4.7〜0.85 Maの範囲であることから,米山層の末期の火成活動に相当する.
斑レイ岩は自形〜半自形の斜長石,直方(斜方)輝石,単斜輝石からなる直方輝石−単斜輝石斑レイ岩で,結晶粒間に他形の不透明鉱物とアルカリ長石が見られる.稀に他形の黒雲母,角閃石を含む.角閃石安山岩は普通角閃石−直方輝石−単斜輝石安山岩と普通角閃石−単斜輝石安山岩からなり,斑晶は,普通角閃石,斜長石,単斜輝石,直方輝石,不透明鉱物からなる.しばしば普通角閃石のオパサイト縁中に微細な黒雲母が見られる.石基は斜長石,アルカリ長石,直方輝石,単斜輝石,不透明鉱物,ガラスからなり,石基の単斜輝石は透輝石,普通輝石,ピジョン輝石からなる.中ノ岳貫入岩体の全岩化学組成の特徴は,SiO2量は斑レイ岩が50〜53 wt%,角閃石安山岩が55〜57 wt%であり,Gill (1981)の中間K~高Kの領域にプロットされ,Miyashiro (1974)のソレアイト系列に属する.これらの特徴はすべて米山層火山岩類と類似し,両者が共通のマグマに由来したことを示す.
中ノ岳貫入岩体の構成鉱物の化学組成は,単斜輝石・直方輝石ともにcoreのMg値(100*Mg/(Mg+Fe))の最高値が,斑レイ岩で低く(Cpx:63〜80,Opx:57〜73),角閃石安山岩で高い(Cpx:74〜85,Opx:69〜79).斜長石coreのAn値は,斑レイ岩が43〜94,角閃石安山岩は45〜94であるが,最頻値は角閃石安山岩の方が高An値の傾向がある.Wells(1977)の輝石温度計は,斑レイ岩では低SiO2(50〜51 wt%)岩石が800−900℃,高SiO2(52〜53 wt%)岩石が970−1060℃を示し,角閃石安山岩は920−1050℃である.以上から,中ノ岳貫入岩体は,低SiO2斑レイ岩から高SiO2角閃石安山岩へと組成変化するが,構成鉱物の化学組成は,低SiO2斑レイ岩では低Mg値の単斜輝石・直方輝石,低An値の斜長石を示し,これらの火成岩を単純な結晶分化作用で導くことはできない.米山層火山岩においても,SiO2=46〜51 wt%の玄武岩組成において,SiO2の増加にともなって単斜輝石のMg値,斜長石のAn値が増加する傾向があり,中ノ岳貫入岩体と共通する.
引用文献
Gill, J.B. (1981) Orogenic andesites and plate tectonics. Berlin, Springer, 390p.
稲葉ほか(2014)2014年石油技術協会個人講演会講演要旨集
Miyashiro, A. (1974) Amer. Jour. Sci., 274, 321-355.
佐藤・米山団体研究グループ(1975)地球科学,29,211-226.
竹内ほか(1996)柿崎地域の地質.地域地質研究報告,地質調査所.
Wells, P.R.A. (1977) Contr. Miner. Petrol., 62, 129-139.