日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG57] 流体と沈み込み帯のダイナミクス

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*片山 郁夫(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)、岡本 敦(東北大学大学院環境科学研究科)、川本 竜彦(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、中島 淳一(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)

17:15 〜 18:30

[SCG57-P07] 蛇紋岩の地震波速度に対する間隙水の効果とマントルウェッジでの高Vp/Vsの成因

*片山 郁夫1リュウ ウンシ1財間 寛太1 (1.広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)

キーワード:蛇紋岩、地震波速度、間隙水

蛇紋岩はかんらん岩に比べて遅い地震波速度や高いポアソン比で特徴づけられるため,沈み込み帯でみられる地震波の低速度層や高Vp/Vs領域の原因として注目されている。しかしながら,関東下や西南日本のマントルウェッジで報告されている著しく高いVp/Vs(>2.0)は,蛇紋岩(アンチゴライト1.84)の存在だけでは説明がつかず,その領域には蛇紋岩に加え流体が共存している可能性が高い。そこで,本研究では間隙流体圧下における弾性波速度の測定システムの開発を行い,蛇紋岩の弾性波速度に対する間隙水の効果を定量的に検証することを試みた。なお,実験では,圧縮変形することで蛇紋岩中にクラックが生成し,そのクラックを流体が埋めることで弾性波速度がどのように変化するかを調べた。
実験は広島大学設置の容器内透水変形試験機を用い,封圧10-20MPa,間隙水圧5-10MPa,載荷速度0.1mm/min,室温の条件で行った。試料は円柱状(直径20mm,長さ40mm)に整形し,試料の両側面に圧電素子(Vp,Vs)を貼ることで透過法により弾性波を測定した。なお,弾性波のトリガーは5Vで入力し,入力波と透過波の初動からtravel-timeを見積もり,弾性波速度を計算した。蛇紋岩の弾性波速度は変形の進行とともに低下し,これは試料中にクラックが生成されることが原因と考えられる。なお,VsはVpよりも速度低下が大きいため,その比であるVp/Vsは変形とともに上昇した。この傾向はO’Connel and Budiansky (1974)が報告しているクラックモデルと調和的であり,含水条件ではクラック密度の増加によりVp/Vsは高くなる。このように,蛇紋岩中の流体の体積(水が埋める空隙)が増加することでVp/Vsが上昇する傾向がみられたが,今後は流体の体積をシリンジポンプなどで計測し,空隙率による弾性波速度の変化を定量的に調べる予定である。そして,マントルウェッジでみられる高いVp/Vs領域にどの程度の水が存在するのかを明らかにしていきたい。