17:15 〜 18:30
[SCG58-P11] 電子線後方散乱回折(EBSD)によって測定した三波川変成帯の石英粒径分布
キーワード:石英、再結晶粒径差応力計、三波川変成帯
天然の変形岩の動的再結晶粒径は古応力見積もりに用いられている。しかし、これまでの粒径測定(e.g. Stipp and Tullis, 2003)には、光学顕微鏡による粒界―亜粒界の識別の難しさや、粒径の代表値の定義の違い(e.g. 算術平均なのか二乗平均平方根なのか、など)に起因する曖昧さが残っていた。
本研究では光学顕微鏡と後方散乱電子回折(EBSD)とで粒径測定をおこなった。粒界は、光学分析では顕微鏡写真上で消光角の違いに従ってマニュアルでトレースし、EBSDでは結晶方位が12°以上異なる場合を粒界として自動認識した。EBSDマッピングはステップサイズを0.5, 1, 2, 8ミクロンで行った。粒径は円相当径で定義した。
分析試料は三波川変成帯ザクロ石帯の石英片岩で、四国中央部汗見川地域で採取されたものである。試料中で粗粒な石英は面構造に斜交する形態定向配列と、結晶内変形を示す。細粒な石英は粗粒な石英の周縁部に形成されている。
得られた粒径分布は、光学顕微鏡でもEBSDでも、右裾が長い形態を示した。したがって、定義によって粒径の代表値は大きく異なってくる。この粒径分布は、静的粒成長で知られる釣鐘型のものとは大きく異なる。しかし、簡単な核形成―粒成長モデルで右裾が長い粒径分布が生まれることが示されている(Shimizu, 1999)。得られた粒径分布のモード値は分析手法とステップサイズによって異なり、~10から~50ミクロンの幅がある。モード値が良く定義できないので、最も大きな面積を占める粒径クラスを粒径の代表値とした。この値はShimizu (1999)の核形成―粒成長モデルにおける長さスケールと関係づけられ、また、大きな粒の測定値を反映するためより安定的に測定できる値である。実測値は110から120ミクロンであった。
得られたデータに、温度依存性を考慮したShimizu and Ueda (2016, JpGU)の再結晶粒径差応力計と、調査地域の温度見積もり(516.4℃、Bayssac et al, 2002)を適用し、結晶内核形成、周縁部核形成のモデルそれぞれで29 MPaと62 MPaの差応力値を得た。これらの応力は、温度依存性を考慮せず、二乗平均平方根を粒径の代表値としたHolyoke and Kronenberg (2010)の再結晶粒径差応力計で得られる応力値(17 MPa)よりも高い。
本発表では、三波川変成帯のその他の部位の石英片岩から得られた結果も併せて紹介する。
参考文献:
Holyoke C. W., Kronenberg A. K., 2010, Tectonophysics, v494, p17
Shimizu, I., 1999. A stochastic model of grain size distribution during dynamic recrystallization., Philosophical Magazine A79, 1217–1231.
Stipp M., Tullis J., 2003, GRL, v30, no.21, 2088
本研究では光学顕微鏡と後方散乱電子回折(EBSD)とで粒径測定をおこなった。粒界は、光学分析では顕微鏡写真上で消光角の違いに従ってマニュアルでトレースし、EBSDでは結晶方位が12°以上異なる場合を粒界として自動認識した。EBSDマッピングはステップサイズを0.5, 1, 2, 8ミクロンで行った。粒径は円相当径で定義した。
分析試料は三波川変成帯ザクロ石帯の石英片岩で、四国中央部汗見川地域で採取されたものである。試料中で粗粒な石英は面構造に斜交する形態定向配列と、結晶内変形を示す。細粒な石英は粗粒な石英の周縁部に形成されている。
得られた粒径分布は、光学顕微鏡でもEBSDでも、右裾が長い形態を示した。したがって、定義によって粒径の代表値は大きく異なってくる。この粒径分布は、静的粒成長で知られる釣鐘型のものとは大きく異なる。しかし、簡単な核形成―粒成長モデルで右裾が長い粒径分布が生まれることが示されている(Shimizu, 1999)。得られた粒径分布のモード値は分析手法とステップサイズによって異なり、~10から~50ミクロンの幅がある。モード値が良く定義できないので、最も大きな面積を占める粒径クラスを粒径の代表値とした。この値はShimizu (1999)の核形成―粒成長モデルにおける長さスケールと関係づけられ、また、大きな粒の測定値を反映するためより安定的に測定できる値である。実測値は110から120ミクロンであった。
得られたデータに、温度依存性を考慮したShimizu and Ueda (2016, JpGU)の再結晶粒径差応力計と、調査地域の温度見積もり(516.4℃、Bayssac et al, 2002)を適用し、結晶内核形成、周縁部核形成のモデルそれぞれで29 MPaと62 MPaの差応力値を得た。これらの応力は、温度依存性を考慮せず、二乗平均平方根を粒径の代表値としたHolyoke and Kronenberg (2010)の再結晶粒径差応力計で得られる応力値(17 MPa)よりも高い。
本発表では、三波川変成帯のその他の部位の石英片岩から得られた結果も併せて紹介する。
参考文献:
Holyoke C. W., Kronenberg A. K., 2010, Tectonophysics, v494, p17
Shimizu, I., 1999. A stochastic model of grain size distribution during dynamic recrystallization., Philosophical Magazine A79, 1217–1231.
Stipp M., Tullis J., 2003, GRL, v30, no.21, 2088