12:00 〜 12:15
[SCG60-06] 曹長石のメカノケミカル粉砕による表面ラジカルの生成とその定量
キーワード:ラジカル反応、メカノケミストリー、水素ガス
活断層近傍の土壌中には、高濃度の水素ガスが胚胎されていることが知られている(Wakita et al., 1980; Sugisaki et al., 1983)。このような水素ガスは、断層活動によって生成される鉱物の新生表面と流体との反応(メカノケミカル反応)により発生していると考え(Wakita et al., 1980)、その後、多くの実験により鉱物の破壊に伴う水素ガスの発生が確認された(e.g., Kita et al., 1982, Kameda et al., 2003)。しかしながら、実験により生成される水素ガスがラジカル反応によって生成されたものであるのかは十分に検討されているとは言えなかった。
Delogu (2011) は、ラジカル捕捉剤である2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(DPPH)を溶かしたエタノール溶液を粉砕媒体とする石英の破砕実験を行い、試料の破砕に伴う水素ラジカル発生量を吸光分析により直接的に評価した。本研究では、この手法を、断層に含まれるその他の鉱物種として曹長石にも適用し、鉱物の破壊に伴う水素ラジカル生成量の定量化を試みた。
石英および曹長石を用いた実験の結果、試料破砕により水素ラジカルが発生することが確認された。また粉砕の進展に伴う比表面積の増加とともに、水素ラジカル発生量が増加することが確認された。石英と曹長石における水素ラジカル発生量を比較すると、後者では発生量が大幅に少なかった。水素ラジカルは、ケイ酸塩鉱物中のSi-O結合が切断されSiラジカルが新生表面上に生成した際に、H2O(本研究ではエタノール)と反応して生成されると考えられる。曹長石において劈開の発達しやすい(010)および(001)面におけるSiラジカル密度は、石英のおよそ1/6程度と見積もられるので、この結果は妥当であると言える。また、Hochstrasser and Antonini (1972) はアルカリ金属によりラジカル生成量が抑制されることを報告しており、このことも先の実験結果と調和的である。
また、本研究の結果から算出される新生表面の単位面積あたりの水素ラジカル発生量を、Kameda et al. (2003)が報告した水素ガスの発生量と比較すると、水素ラジカル発生量の方が一桁以上大きいことが分かった。このことは、発生した水素ラジカルの大部分が水素分子として結合することなく消失していることを示唆している。
Delogu (2011) は、ラジカル捕捉剤である2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(DPPH)を溶かしたエタノール溶液を粉砕媒体とする石英の破砕実験を行い、試料の破砕に伴う水素ラジカル発生量を吸光分析により直接的に評価した。本研究では、この手法を、断層に含まれるその他の鉱物種として曹長石にも適用し、鉱物の破壊に伴う水素ラジカル生成量の定量化を試みた。
石英および曹長石を用いた実験の結果、試料破砕により水素ラジカルが発生することが確認された。また粉砕の進展に伴う比表面積の増加とともに、水素ラジカル発生量が増加することが確認された。石英と曹長石における水素ラジカル発生量を比較すると、後者では発生量が大幅に少なかった。水素ラジカルは、ケイ酸塩鉱物中のSi-O結合が切断されSiラジカルが新生表面上に生成した際に、H2O(本研究ではエタノール)と反応して生成されると考えられる。曹長石において劈開の発達しやすい(010)および(001)面におけるSiラジカル密度は、石英のおよそ1/6程度と見積もられるので、この結果は妥当であると言える。また、Hochstrasser and Antonini (1972) はアルカリ金属によりラジカル生成量が抑制されることを報告しており、このことも先の実験結果と調和的である。
また、本研究の結果から算出される新生表面の単位面積あたりの水素ラジカル発生量を、Kameda et al. (2003)が報告した水素ガスの発生量と比較すると、水素ラジカル発生量の方が一桁以上大きいことが分かった。このことは、発生した水素ラジカルの大部分が水素分子として結合することなく消失していることを示唆している。