17:15 〜 18:30
[SCG60-P05] 別府温泉における温泉井中のヘリウム濃度の深度分布
キーワード:ヘリウム、同位体比、温泉、鉛直濃度分布
地下深部の状態を把握するためには、深部からしみ出してくる揮発性物質を理解することが重要である。なかでもヘリウムフラックスは有望な指標の1つである。ヘリウムは岩石との相互作用に乏しいため、地殻内では流体とともに移動する。また、ヘリウムには2つの同位体があり、その同位体比を調べることで、マントル起源とする流体の寄与や地下水の滞留時間などを推測することができる。そこで、大分県別府温泉にある温泉井にて、気体半透膜を使った受動拡散サンプラーを用いて温泉水中に溶存しているヘリウムの採気を試み、ヘリウム濃度の深度分布を求めた。
別府温泉は、九州中部の張力が発達する地域(松本,1979)の東端に位置する。温泉活動は、西側の鶴見火山群から東側の別府湾岸まで続き、火山群から供給される熱水流体がもたらしている。この地域は、西側の火山群から流出してきた安山岩類の砕屑物によって埋められた扇状地であり、その南縁と北縁はそれぞれ東西方向に走る断層によって挟まれている。西側の火山群から供給された熱水流体は、これら2つの断層に沿って、東側の海岸方向に流動している(Allis & Yusa,1989)。
深度300mの温泉井に、2015年7月13日〜16日と8月21日〜24日との異なる2期間にて、井戸内の深度約290mから約50m間隔ごと上方に向かってサンプラーを設置し、ヘリウムを採気した。採気したヘリウムは、東京大学大気海洋研究所にある希ガス同位体質量分析計(Helix-SFT; GV Instrument)を用い、その濃度と同位体比を求めた。
ヘリウム濃度と同位体比(3He/4He)は、設置深度が浅くなるに従い、それぞれ低くなる。同位体比が最も高い試料は井戸底付近のもので、それぞれ7.08Raと6.79Ra(Ra=1.4E-6)を示した。これらの高い同位体比はマントル起源のヘリウムの寄与が示唆される。温泉井は、スクリーンが井戸底付近の278m〜300mにあり、温泉水はスクリーンを通じて流出入する。温泉水とともに井戸内に入ったヘリウムは、上方に拡散することにより、濃度が上方に向かって低くなるような鉛直分布したと考えられる。
参考文献
Allis R.G. and Yusa Y. (1989) Fluid flow processes in the Beppu geothermal system, Japan. Geothermics, 18, 743-759.
松本徰夫(1979)九州における火山活動と陥没構造に関する諸問題.地質学論集,16,127-139.
別府温泉は、九州中部の張力が発達する地域(松本,1979)の東端に位置する。温泉活動は、西側の鶴見火山群から東側の別府湾岸まで続き、火山群から供給される熱水流体がもたらしている。この地域は、西側の火山群から流出してきた安山岩類の砕屑物によって埋められた扇状地であり、その南縁と北縁はそれぞれ東西方向に走る断層によって挟まれている。西側の火山群から供給された熱水流体は、これら2つの断層に沿って、東側の海岸方向に流動している(Allis & Yusa,1989)。
深度300mの温泉井に、2015年7月13日〜16日と8月21日〜24日との異なる2期間にて、井戸内の深度約290mから約50m間隔ごと上方に向かってサンプラーを設置し、ヘリウムを採気した。採気したヘリウムは、東京大学大気海洋研究所にある希ガス同位体質量分析計(Helix-SFT; GV Instrument)を用い、その濃度と同位体比を求めた。
ヘリウム濃度と同位体比(3He/4He)は、設置深度が浅くなるに従い、それぞれ低くなる。同位体比が最も高い試料は井戸底付近のもので、それぞれ7.08Raと6.79Ra(Ra=1.4E-6)を示した。これらの高い同位体比はマントル起源のヘリウムの寄与が示唆される。温泉井は、スクリーンが井戸底付近の278m〜300mにあり、温泉水はスクリーンを通じて流出入する。温泉水とともに井戸内に入ったヘリウムは、上方に拡散することにより、濃度が上方に向かって低くなるような鉛直分布したと考えられる。
参考文献
Allis R.G. and Yusa Y. (1989) Fluid flow processes in the Beppu geothermal system, Japan. Geothermics, 18, 743-759.
松本徰夫(1979)九州における火山活動と陥没構造に関する諸問題.地質学論集,16,127-139.