日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG63] 変動帯ダイナミクス

2016年5月23日(月) 13:45 〜 15:15 A08 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、重松 紀生(独立行政法人産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、加藤 愛太郎(名古屋大学大学院環境学研究科)、岩森 光(海洋研究開発機構・地球内部物質循環研究分野)、池田 安隆(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、竹下 徹(北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)、座長:重松 紀生(独立行政法人産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、大橋 聖和(山口大学大学院理工学研究科)

14:45 〜 15:00

[SCG63-17] 方解石双晶の方位解析による古地温・古深度・古応力の推定

*山路 敦1 (1.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:地温、応力、昇降運動、上昇

方解石のe双晶は,双晶面にかかる剪断方向の剪断応力成分がある臨界値(τc,10 MPa前後といわれる:Lacombe, 2010)を超えた場合に形成される.この双晶形成条件に依拠して,応力インバージョンを構成することができる(e.g., Etchecopar, 1984).天然の方解石は地質学的時間をへる間に,複数の応力時階を経験していることが普通である.この場合にも,複数の偏差応力テンソルを決定することができる(山路, 本セッション).それにより決定されるのは,検出すべき応力の数と,検出されたそれぞれの応力についての偏差応力テンソルをτcで割った,無次元偏差応力テンソルである.
他方,e双晶形成により,方解石の結晶は単純剪断をこうむるが,歪みの進行とともに,τc値が上昇することが,変形実験から知られている.すなわち,歪み硬化である.これは,歪みによるτc値の上昇ととらえることができる.双晶形成による剪断歪みは,双晶の密度から測定することができる(e.g., Groshong, 1972).
さて,もっぱら脆性変形が進行する地殻浅部では,臨界差応力は深度に比例する.したがって,偏差応力テンソルから得た差応力により,双晶形成時の深度を推定することができる.妥当な温度勾配が仮定できれば,温度もわかる.ここで鍵になるのは,τcの値である.方解石の変形実験で得られた温度・剪断歪み量・τc値をコンパイルし,Lacombe (2010)はそれらのあいだの関係を大雑把にしめした.この関係を利用することにより,無次元偏差応力テンソルにもとづいて,温度・深度・τc値にかんする連立方程式を立てて解くことができる.
この方法を,日本海拡大時のグラーベンから得られた天然データに適用した例を紹介する.古深度がわかるので,そのグラーベンがどれだけ上昇削剥を受けたかを推定することができる.