17:15 〜 18:30
[SCG63-P10] 別府―万年山断層帯の比抵抗構造
キーワード:MT法、比抵抗構造、群発地震
これまで数多く行われてきた地磁気-地電流 (MT) 法による比抵抗構造調査によって、地殻内の地震発生には塩水やガスなど流体の寄与があることが示唆されてきた (e.g., Ichihara et al., 2011; Ogawa et al., 2014; Aizawa et al., 2016)。MT法では、通常、各観測点で水平電場2成分、水平磁場2成分、鉛直磁場1成分の時系列を取得し、電場―磁場の応答関数 (インピーダンス) と水平磁場-鉛直磁場の応答関数 (ティッパー)を求め、これらをインバージョンの入力として比抵抗構造を推定する。しかしながら電磁場5成分観測は設置、電源の維持の労力が大きく、多点観測によって高空間解像度の比抵抗構造を推定するのは容易ではない。これに対し、電場だけの観測点を多く設置し、異なる地点の電場-磁場間のインピーダンスを用いて比抵抗構造を推定する「磁場電場分離型MT法」が提案、実施されている (e.g., Unsworth et al., 1997, 後藤, 1999)。近年、この「磁場電場分離型MT法」用途の、安価、軽量、省電力な電場ロガーが開発され利用されるようになった (相澤他, 2015)。本発表では、「磁場電場分離型MT法」を別府-万年山断層帯東部の陸上地域に適用した結果を示す。この地域には地表に数多くの東西走行の断層が見られ、中央部に由布岳、鶴見岳、伽藍岳という火山が存在している。地震活動は火山周辺で活発であり、震源の下限分布は深さ約10 km程度と周辺に比べ浅いという特徴がある。また2007年6月、10月には震源が深部から浅部へ移動する群発地震も発生し (Maeda et al., 2010)、流体の移動が地震発生に影響を及ぼしていることが示唆された。
広帯域MT観測は2015年8~10月にかけ73点で行われた。このうち53点は電場のみの観測である。現在までの解析から得られた結果は以下の通りである。(1) 表層から地下に鉛直方向に伸びる低比抵抗体が複数推定された。(2) 周期10秒以上のphase tensor から推定される深部比抵抗構造の走行方向は、北東-南西方向であり、地表の断層走行と斜交する一方、2007年6月と10月に別府市で発生した群発地震の震源の広がり方向 (Maeda et al., 2010) に近い。(2) の深部比抵抗構造の走行は1993年にこの地域で行われた長周期MT観測の結果 (半田, 1998) とも調和的であり、群発地震が比抵抗構造にそった流体の移動により引き起こされたことを示唆しているのかもしれない。本発表ではさらに解析を進め、比抵抗構造と別府-万年山 断層帯での地震活動の関連について検討したい。
参考文献
Aizawa, K et al., 2016, Gas pathways and remotely triggered earthquakes beneath Mt. Fuji, Japan: Geology, v. 44, p. 127-130.
Ichihara, H. et al., 2011, A fault-zone conductor beneath a compressional inversion zone, northeastern Honshu, Japan: Geophys. Res. Lett., 38, doi:10.1029/2011gl047382.
Maeda, T., Obara, K., and Yukutake, Y., 2010, Seismic velocity decrease and recovery related to earthquake swarms in a geothermal area: Earth Planets and Space, 62, 685-691.
Ogawa, Y., Ichiki, M., Kanda, W., Mishina, M., and Asamori, K., 2014, Three-dimensional magnetotelluric imaging of crustal fluids and seismicity around Naruko volcano, NE Japan: Earth Planets and Space, 66, doi:10.1186/s40623-014-0158-y.
Unsworth, M.J., Malin, P.E., Egbert, G.D., and Booker, J.R., 1997, Internal structure of the San Andreas fault at Parkfield, California: Geology, v. 25, p. 359-362.
相澤広記・他, 2015, 地電位差計を用いた大分県中南部の広帯域MT観測: 日本地球惑星科学連合2015年大会, p. 千葉幕張.
半田駿, 中部九州の火山下の下部地殻の比抵抗構造, 1998, 地震研究所彙報, 73, 345-359.
後藤忠徳, 1999, 磁場電場分離MT法を用いた比抵抗構造解析の特性. 1999年Conductivity Anomaly 研究会論文集, 14-20.
謝辞
観測において東京大学地震研究所所有の広帯域MT探査装置を使用させて頂きました (共同利用コード 2015-F2-04)。気象庁柿岡地磁気観測所の地磁気3成分1秒値を磁場参照点として使用させて頂きました。本研究のために、東京大学地震研究所地震火山情報センターの計算機システムを利用しました。本研究は文部科学省による「別府-万年山断層帯(大分平野-由布院断層帯東部)における重点的な調査観測」、「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の支援を受けました。
広帯域MT観測は2015年8~10月にかけ73点で行われた。このうち53点は電場のみの観測である。現在までの解析から得られた結果は以下の通りである。(1) 表層から地下に鉛直方向に伸びる低比抵抗体が複数推定された。(2) 周期10秒以上のphase tensor から推定される深部比抵抗構造の走行方向は、北東-南西方向であり、地表の断層走行と斜交する一方、2007年6月と10月に別府市で発生した群発地震の震源の広がり方向 (Maeda et al., 2010) に近い。(2) の深部比抵抗構造の走行は1993年にこの地域で行われた長周期MT観測の結果 (半田, 1998) とも調和的であり、群発地震が比抵抗構造にそった流体の移動により引き起こされたことを示唆しているのかもしれない。本発表ではさらに解析を進め、比抵抗構造と別府-万年山 断層帯での地震活動の関連について検討したい。
参考文献
Aizawa, K et al., 2016, Gas pathways and remotely triggered earthquakes beneath Mt. Fuji, Japan: Geology, v. 44, p. 127-130.
Ichihara, H. et al., 2011, A fault-zone conductor beneath a compressional inversion zone, northeastern Honshu, Japan: Geophys. Res. Lett., 38, doi:10.1029/2011gl047382.
Maeda, T., Obara, K., and Yukutake, Y., 2010, Seismic velocity decrease and recovery related to earthquake swarms in a geothermal area: Earth Planets and Space, 62, 685-691.
Ogawa, Y., Ichiki, M., Kanda, W., Mishina, M., and Asamori, K., 2014, Three-dimensional magnetotelluric imaging of crustal fluids and seismicity around Naruko volcano, NE Japan: Earth Planets and Space, 66, doi:10.1186/s40623-014-0158-y.
Unsworth, M.J., Malin, P.E., Egbert, G.D., and Booker, J.R., 1997, Internal structure of the San Andreas fault at Parkfield, California: Geology, v. 25, p. 359-362.
相澤広記・他, 2015, 地電位差計を用いた大分県中南部の広帯域MT観測: 日本地球惑星科学連合2015年大会, p. 千葉幕張.
半田駿, 中部九州の火山下の下部地殻の比抵抗構造, 1998, 地震研究所彙報, 73, 345-359.
後藤忠徳, 1999, 磁場電場分離MT法を用いた比抵抗構造解析の特性. 1999年Conductivity Anomaly 研究会論文集, 14-20.
謝辞
観測において東京大学地震研究所所有の広帯域MT探査装置を使用させて頂きました (共同利用コード 2015-F2-04)。気象庁柿岡地磁気観測所の地磁気3成分1秒値を磁場参照点として使用させて頂きました。本研究のために、東京大学地震研究所地震火山情報センターの計算機システムを利用しました。本研究は文部科学省による「別府-万年山断層帯(大分平野-由布院断層帯東部)における重点的な調査観測」、「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の支援を受けました。