日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM34] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2016年5月24日(火) 10:45 〜 12:15 コンベンションホールA (2F)

コンビーナ:*松島 政貴(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、菅沼 悠介(国立極地研究所)、座長:菅沼 悠介(国立極地研究所)、畠山 唯達(岡山理科大学情報処理センター)

11:30 〜 11:45

[SEM34-04] IODP Site U1403の海洋コアから推定する中期始新世における古地磁気強度相対値連続変動

*深見 洋仁1山本 裕二2山崎 俊嗣3 (1.三洋テクノマリン株式会社、2.高知大学 海洋コア総合研究センター、3.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:古地磁気、海底堆積物、古地磁気強度相対値

1億年スケールで見る地球磁場変動の特徴として,白亜紀から現在にかけて,地磁気逆転頻度が100万年あたり0回から5回へと増加してきていることが知られている (e.g. Merrill et al., 1996).このような長期に渡る地磁気極性変化の特徴が分かっているのに対して,古地磁気強度連続変動は過去約200-300万年間しか詳細に解明されておらず (e.g. Valet et al., 2005; Channel et al., 2009; Yamazaki & Oda, 2005),逆転頻度と強度連続変動の関係性は明らかになっていない.統合国際深海掘削計画 (IODP) 第342次研究航海では,暁新世から始新世の気候変動解明を目的に,北西大西洋ニューファンドランド沖から海底堆積物が掘削された (Expedition 342 Scientisits, 2012).本研究では,この航海によって Site U1403より掘削された海洋コアを対象に古地磁気・岩石磁気学的測定を行い,当該期間における古地磁気強度相対値連続変動の解明に取り組んだ.
測定は25-160 mcd (meter composite depth)の区間を対象に行った.自然残留磁化 (NRM)測定の結果に基づく古地磁気極性層序から,この区間は,40.145 Ma (クロン境界 C18n.2n/C18r)から49.344 Ma(C22n/C22r)の期間をカバーすると推定された.さらに,非履歴性残留磁化 (ARM),等温残留磁化 (IRM),粒子サイズの指標となるARM/SIRM比,磁性鉱物種の指標となるS-ratio (-0.1 T,-0.3 T)の測定・分析の結果に基づくと,とくに50-101 mcd (40.145 Ma (C18n.2n/C18r)から約44 Ma (C20r))の区間は岩石磁気的に比較的均質な層準であり, 古地磁気強度相対値変動の推定に適していると判断できた.この区間についてNRMをARMおよびIRMによって規格化することで,新たに古地磁気強度相対値連続変動を推定した.
新たに推定した連続変動の様子によると,古地磁気強度相対値はクロン境界で極小を示し,クロン内においても大きな振幅を伴う変動を示す.また,3つのクロン境界 (C18r/C19n,C19n/C19r,C19r/C20n)の前後においては,地磁気逆転にともない古地磁気強度相対値は約5 万年かけて緩やかに減少し,クロン境界における極小へと達した後は,約1万年かけて急激に強度が増加し回復する傾向を示した.このような特徴は,過去約200万年間の古地磁気強度相対値連続変動および,この期間に起こった5回の地磁気逆転の前後において見られる特徴 (Valet et al., 2005)と同様である.中期始新世は地磁気逆転頻度が現在の約半分であったことが知られているが (e.g. Merrill et al., 1996),逆転頻度の変化に関わらず,このような特徴は少なくとも当時から現在まで継続している地磁気変動に共通の特徴であるということが示唆される.