日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM35] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2016年5月25日(水) 10:45 〜 12:15 国際会議室 (2F)

コンビーナ:*市來 雅啓(東北大学大学院理学研究科)、宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、座長:Ichihara Hiroshi(海洋研究開発機構)

11:15 〜 11:30

[SEM35-09] フィリピン・タール火山における最近の静穏状態と電磁気観測から推測される新たな活動?

*笹井 洋一1アラニス ポール2長尾 年恭1ズロトニツキ ジャック3ジョンストン マルコム4 (1.東海大学・海洋研究所・地震予知研究センター、2.フィリピン火山地震研究所、3.フランス国立科学研究センター、4.合衆国地質調査所)

キーワード:タール火山、熱水だまり、全磁力変化、ピエゾ磁気効果

我々は2005年以来、フィリピン・ルソン島中央部にあるタール火山で電磁気観測を行ってきた。この火山では2005-2006年と2010-2011年に地震活動が活発化して、タール湖中央のVolcano島から全住民が避難した。2005年と2010年の事件では顕著な地磁気と自然電位の変化が観測された。Volcano島の直下には直径3kmの高比抵抗体がMT観測によって発見され、気液二相状態の熱水だまりと推定された(Yamaya et al., 2013; Alanis et al., 2014)。また島の東側浅部に強いS波減衰域が存在し、活動的なマグマの存在が示唆されている(Kumagai et al., 2014)。2013年から現在まで、タール火山は静穏状態である。2015年はエル・ニーニョ現象の影響で降水量が少なく、主火口湖の水位は低下しており、主火口湖の東岸における地熱地帯は湖面から露出した状態で、特に活発化している様子は見えない。しかし繰り返しの全磁力測量を行い2014年3-5月と比較した所、第1図に示す通りVolcano島の北側で全磁力が減少し、南側で増加していることが判った。これは2010-2011年活動に際して、地震活動の消長に伴って観測された変化と同じである。熱水だまりの膨張を茂木モデルで近似すると、ピエゾ磁気効果によってこのような全磁力変化のパターンが期待される。即ち表面上は静穏化しているにもかかわらず、Volcano島の直下にある熱水だまりは膨張していることを示唆している。全磁力の連続観測点が北側に偏り基準観測点が欠測しているために、2014年3-5月と2015年12月のいつの時点からこの変化が起こっていたかは特定できていない。