日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD22] 重力・ジオイド

2016年5月22日(日) 15:30 〜 17:00 A05 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*西島 潤(九州大学大学院 工学研究院 地球資源システム工学部門)、青山 雄一(国立極地研究所)、座長:田中 愛幸(東京大学地震研究所)、青山 雄一(国立極地研究所)

16:00 〜 16:15

[SGD22-09] 過去の稠密重力データの日本重力基準網2013への整合手法の検討

*宮崎 隆幸1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:日本重力基準網2013

国土地理院は、全国に等しく正確な重力基準を提供するため,最新の重力測定のデータを用いて「日本重力基準網2013(JGSN2013)」を構築した.JGSN2013の精度は、網平均計算の残差と一個抜き交差検定による評価から約10μGalとも見積もられており、従来の日本重力基準網1975(JGSN1975)と比べて1桁程度高い精度の重力基準が実現された。国土地理院は,重力基準の構築に用いた測定に加えて,稠密な全国の重力分布を把握し,水準測量に正確な正標高補正を行うため,1967~1993年に水準点や主要な三角点において相対重力測定を実施した.この測定で得られた日本全国を網羅する約14,000点におよぶ稠密な重力データは,JGSN75に準拠しており,計測機器の校正など,重力の基準として活用されている。
1976年に公表されたJGSN75に基づく重力値であることから、現在のJGSN2013に基づく測定とは,測定誤差の範囲では必ずしも一致しない。この乖離は,測定が測定方法や基準系の違いよって重力成果値を算出する際に系統的な差を生じることや、地殻変動や地下水くみ上げ等によって観測点の地盤が上下変位することなどに起因して生じる. 国土地理院が公開するJGSN75とJGSN2013の間の乖離は最大で数100μGalに達する。
GNSSを用いた標高決定が高度化され、普及したことに伴って,高さの基準面としてのジオイド・モデルを構築する基盤データとして,さらに増している。ジオイド・モデルの精度・信頼性を向上するためには,信頼度の高い最新の稠密な地上重力データが不可欠であるが、全国を網羅する重力測定を新たに行って,JGSN2013に準拠した稠密なデータを数年間で得ることは,人的・経済的なリソースを考慮すると非常に困難である。
JGSN75重力値をJGSN2013重力値に整合させるための手法の開発を実施している。本研究では二つの基準系の間の重力値の乖離は①JGSN75の構築当初から含まれていた重力成果値の不確かさ ②JGSN75重力観測時から現在に至るまでに重力観測点が受けた地殻変動の影響 のふたつの要因で説明可能であると考えた。このうち②については過去の水準測量・GNSS連続観測(電子基準点データ)を用いて重力観測点の上下変位に伴う重力値の変化を推定し,地震断層モデルを用いて地震時の一時的な重力変化とマントルの粘弾性緩和に伴う地震後の長期的な重力変化を計算することで推定できる。ふたつの重力基準系間の重力値の乖離のデータからこの地殻変動の影響を差し引くことで①のJGSN75が含んでいる誤差が明らかになり、その分布の特徴に即した手法によって空間補間を実施することでふたつの基準系の変換を実現する。