14:45 〜 15:00
[SGL38-05] 海底熱水の希ガス同位体測定のための前処理装置開発とスタンダード測定の試み
キーワード:海底熱水、希ガス、ゲッター剤
今回JAMSTEC海底資源研究開発センターでは、現代の成因論に基づく海底熱水鉱床の調査法構築のため、海底熱水に含まれる溶存希ガスの測定が出来る前処理装置の製作を試みた。これは、海水中を移流拡散していくブラックスモーカーなどから放出される熱水プルームの追跡に、溶存した希ガスを用いるという考えに基づいている(例えば、Baker et al., 1995)。
この前処理装置には、少なくとも平衡蒸気圧程度の気体が導入されることから、固体試料を扱う場合に比べて遙かに高い圧力下での活性ガス除去能力が必要である。また、海底熱水は温泉水と海水双方の要素をあわせ持つような性質と予想されるため、岩石中には比較的乏しいハロゲンや多様な硫黄化合物の除去能力が極高真空の下で求められる。このため、通常のTi-Zrゲッター・SORB-ACポンプに加えて、ハロゲンゲッター・硫黄化合物ゲッターを追加し、より多くの活性ガスを取り除く必要に対応した。この硫黄化合物ゲッターの能力を充分に発揮させるためには、予めハロゲンゲッターを作用させる必要があることが判った。また、熱水プルームの追跡には多点分析が必要になることから、オールメタルフランジを用いた前処理装置として、可能な限りコンパクトなラインを構成し、2-5cc程度の試料液量での測定を可能とした。全希ガス同位体測定を行うため、クライオジェニックポンプやチャコールトラップを備えており、岩石中の希ガスと同程度の精度で同位体比測定可能とした。この前処理装置は特許出願中である(特願2015-234839)。
今回、2011年11月に上山温泉(山形県上山市)の源泉から採取した硫黄を多く含む温泉水と塩素を多量に含む環境水試料を、1984年に上山温泉源泉から採取され山形大学で作成された上山ガスのスタンダード試料(KS≅5.7Ra, Tamura et al., 2005、岡山理大保管)および、大阪大学で作成されたヘリウムスタンダード試料HESJ(HJ≅20.6Ra, Tamura et al., 2005)と共に測定し、そのヘリウム同位体を決定した。
ここで得られた2011年11月に採取された上山温泉の温泉水試料のヘリウム同位体比は約7Raとなり、Horiguchi et al., (2010)の報告による2006年に採取した蔵王山周辺の遠刈田温泉試料のヘリウム同位体比(Togatta≅6.1Ra)より高い値を示した。今回得られたヘリウム同位体比は、1984年に得られた上山ガスのスタンダード試料のそれよりも有意に高い。1984年から2011年にかけてのヘリウム同位体比の上昇は,東北地方太平洋沖地震、もしくは地震以降活発化している蔵王火山の活動と関連づけることができるかもしれない。また、今回作成した前処理装置は、硫黄を多く含む温泉水と塩素を多量に含む環境水試料のヘリウム同位体比分析に有効であることが確認できた。
この前処理装置には、少なくとも平衡蒸気圧程度の気体が導入されることから、固体試料を扱う場合に比べて遙かに高い圧力下での活性ガス除去能力が必要である。また、海底熱水は温泉水と海水双方の要素をあわせ持つような性質と予想されるため、岩石中には比較的乏しいハロゲンや多様な硫黄化合物の除去能力が極高真空の下で求められる。このため、通常のTi-Zrゲッター・SORB-ACポンプに加えて、ハロゲンゲッター・硫黄化合物ゲッターを追加し、より多くの活性ガスを取り除く必要に対応した。この硫黄化合物ゲッターの能力を充分に発揮させるためには、予めハロゲンゲッターを作用させる必要があることが判った。また、熱水プルームの追跡には多点分析が必要になることから、オールメタルフランジを用いた前処理装置として、可能な限りコンパクトなラインを構成し、2-5cc程度の試料液量での測定を可能とした。全希ガス同位体測定を行うため、クライオジェニックポンプやチャコールトラップを備えており、岩石中の希ガスと同程度の精度で同位体比測定可能とした。この前処理装置は特許出願中である(特願2015-234839)。
今回、2011年11月に上山温泉(山形県上山市)の源泉から採取した硫黄を多く含む温泉水と塩素を多量に含む環境水試料を、1984年に上山温泉源泉から採取され山形大学で作成された上山ガスのスタンダード試料(KS≅5.7Ra, Tamura et al., 2005、岡山理大保管)および、大阪大学で作成されたヘリウムスタンダード試料HESJ(HJ≅20.6Ra, Tamura et al., 2005)と共に測定し、そのヘリウム同位体を決定した。
ここで得られた2011年11月に採取された上山温泉の温泉水試料のヘリウム同位体比は約7Raとなり、Horiguchi et al., (2010)の報告による2006年に採取した蔵王山周辺の遠刈田温泉試料のヘリウム同位体比(Togatta≅6.1Ra)より高い値を示した。今回得られたヘリウム同位体比は、1984年に得られた上山ガスのスタンダード試料のそれよりも有意に高い。1984年から2011年にかけてのヘリウム同位体比の上昇は,東北地方太平洋沖地震、もしくは地震以降活発化している蔵王火山の活動と関連づけることができるかもしれない。また、今回作成した前処理装置は、硫黄を多く含む温泉水と塩素を多量に含む環境水試料のヘリウム同位体比分析に有効であることが確認できた。