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[SGL38-06] 14C年代測定法における炭化物試料の信頼性の検証
キーワード:放射性炭素年代測定法、酸ーアルカリー酸前処理法、炭化物
木炭試料は放射性炭素年代測定法において最も信頼できる試料の一つと考えられている。同時にワラや小麦などの炭化物も年輪が無いため、より確実な試料として見られている。ところがそれらの化学的組成や処理条件に着目した信頼性の検証基準は整備されていない。本研究では広く一般に用いられている基本的な酸-アルカリ-酸前処理法のアルカリ処理段階の化学的処理条件、および試料中の炭素/窒素含有比に着目して、炭化物試料の質の検証を行った。その結果、1. 外気にさらされ光化学反応の進んだ木炭は1MのNaOH水溶液に溶解してしまう、2. (1MのNaOH水溶液には溶解してしまうが、)低濃度NaOH溶液では溶け残る木炭のC/N比は土壌学で定義されるリタ-分解によって生じる森林土壌の分解性生物が示す10~30程度の値を示す、3. 上記に該当する試料の年代値は1文化亜層分の誤差が生じる、という現象を発見した(渥美2010)。上記の条件は年代測定用炭化物試料の検証基準として有用である。即ち、1. 炭化物試料は必ず1Mの濃度のNaOH溶液に溶け残るべきである。2. 炭化物試料のC/N比は30以上の値を示すべきである(渥美2010)。今回は採集と試料選択について技術論として体系的に論じる。なお、前述の3つの理由から、1MのNaOH溶液に溶解し、(溶解する、あるいは)C/N比30以下の値を示す小麦、ワラは年代測定用試料として信頼性に欠けることが導き出される。