日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP42] 鉱物の物理化学

2016年5月25日(水) 09:00 〜 10:30 301A (3F)

コンビーナ:*興野 純(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球進化科学専攻)、大藤 弘明(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、座長:興野 純(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球進化科学専攻)

09:30 〜 09:45

[SMP42-03] LA-ICP-MSを用いた高圧鉱物の微量元素二次元分析

*鈴木 敏弘1平田 岳史2高橋 栄一1 (1.東京工業大学理工学研究科地球惑星科学科、2.京都大学理学研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:高圧鉱物、微量元素、二次元分析

超高圧実験で得られる試料の主成分元素測定にはEPMAが用いられるが、濃度0.1wt%以下の微量元素の分析には、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS)や、二次イオン質量分析計(SIMS)が用いられる事が多い。これらの測定では、直径数十ミクロン程度の一定範囲をレーザーやイオン・ビームにより掘り進めながら測定し、微量元素濃度を求めていた。近年、試料上にレーザーを走査しながらICP-MS測定を行う二次元分析が行われるようになった。この方法は、もっぱら微量元素の二次元分布を定性的に解析する目的に用いられているが、測定データの解析法を工夫する事により、定量的な分析値を得る事も可能である。本研究では、超高圧実験で得られた試料をLA-ICP-MSで二次元測定を行い、高圧鉱物結晶内の微量元素分布状態を調べるとともに、二次元測定データから定量値を求め、高圧鉱物と珪酸塩メルト間の微量元素分配係数の推定も試みた。
出発物質には希土類元素などを約200ppm程度添加したカンラン岩組成の試料を用いた。超高圧実験には、東京工業大学の川井型マルチアンビル装置を用いて、17GPa以上の圧力で試料の融解実験を行った。大きな高圧鉱物結晶を得るために、実験では加圧後、目的温度よりも100度程度高温まで一旦加熱し、その後10分かけて目的温度まで徐冷し、30分から1時間目的温度で保持した後、急冷回収した。回収試料は研磨した後に、EPMAを用いて主成分元素濃度を測定した。微量元素分布測定には、エキシマレーザーと四重極型質量分析計を組み合わせた、京都大学のLA-ICP-MS装置を用いた。アブレ-ションは、10から20ミクロンのビーム径で行った。
珪酸塩メルトと共存するリキダス相は、17GPaではWadsleyite+Garnetであったが、圧力を上げるとGarnet+Ferropericlaseとなり、23GPa以上ではBridgmanite+Ferropericlaseであった。Ferropericlase以外の高圧鉱物は、50ミクロン以上の比較的大きな結晶が得られた。これらの試料をLA-ICP-MSを用いて微量元素の二次元分布を調べたところ、100ミクロンを超える大きなGarnet結晶などの場合には、実験温度を下げて結晶を成長させた事に伴う、微量元素の濃度変化が認められた。LA-ICP-MSの二次元データから、組成が均一な領域を分離して微量元素の定量値を計算し、珪酸塩メルトの組成と比較して分配係数を求めたところ、通常の方法により得られる値とほぼ同じ結果を得る事が出来た。