17:15 〜 18:30
[SSS02-P18] The thermal structure and formation process of faults in Akehama area of the Northern Shimanto Belt, western Shikoku, Japan
キーワード:Subduction zone, Northern Shimanto Belt, Vitrinite reflectance, Paleostress analysis, Oblique-slip faults
四万十帯は,海洋プレートの沈み込みに伴い形成された付加コンプレックスを主体としている(平ほか, 1980).九州東部や四国中・東部では,メランジュ帯や,シュードタキライトを伴う脆性断層などの強変形帯の存在が知られており(例えばTaira et al., 1988, Mukoyoshi et al., 2006),沈み込み帯周辺での長期的・短期的な変形現象を記録していると考えられている.このような断層解析や被熱構造解析は,四国においては主に中・東部を中心に行われ,西部での調査例は多くない.大橋・金川(2014)では,四国西部の四万十帯の一部で東西走向,高角北傾斜の脆性断層が密集する脆性剪断帯があり,地震性断層運動を示唆する炭酸塩鉱物基質の断層角礫を伴うことを確認している.そこで本研究は,大橋・金川(2014)によって見出された四国西部(西予市明浜地域)に発達する断層帯について,岩相・変形マッピング,断層記載,多重逆解法を用いた古応力場解析,およびビトリナイトの反射率測定より被熱構造解析を行った.また,被熱温度より,断層上・下盤の温度差がどの程度あるかを算出し,その温度差をつくるための累積変位量を見積もり,破砕帯の幅と変位量の関係を比較した.そして,これらの調査をもとに,四国西部の四万十帯北帯に発達する断層帯の形成場と形成メカニズムを明らかにしていく.
調査の結果,当地域の断層帯は砂岩,泥岩及び砂泥互層を原岩とし,破砕帯はカタクレーサイトで幅が数cmから数10 cm,東西走向の北傾斜,条線はレイク角が平均32° W,そして右横ずれ成分を含む逆断層センスが多く確認された.調査で得られた断層スリップデータをもとに多重逆解法による古応力場解析を行ったところ,北西–南東方向の最大主応力軸σ1,北東–南西方向の最小主応力軸σ3が求まった.また,断層帯を挟んだビトリナイト反射率(Rm)のギャップは0.18%(温度に換算すると約11°C)以下であり,Mukoyoshi et al.(2006)や北村ほか(2014)で認められているような0.3%を超える明瞭なギャップは存在しない.反射率ギャップ0.18%を生じさせるのに必要な斜め横ずれ変位量を推定したところ,0.04~0.23 kmであり,求められた変位量に比べてトータルの破砕帯の幅(約6 m)は有意に大きい.
以上の被熱構造との関係性から,今回の調査地域の断層帯は最大被熱イベント以前に形成されたものであると考えられる.また,未〜半固結時変形の特徴に乏しいため,本研究の断層帯はある程度の固結性を獲得した付加プリズムの前部で形成されたと推測できる.また,今回の調査において斜め横ずれを示す断層が多く確認された.これは,これらの断層がノンアンダーソン型断層であることを示唆する.今後は断層帯の内部構造や微細組織について,より詳細に解析を行う予定である.
[謝辞]
ビトリナイト反射率測定,および多重逆解法による古応力場解析を行うにあたり,山口大学の坂口有人氏と(独)産業技術総合研究所の大坪誠氏に大変お世話になりました.記して感謝申し上げます.
[引用文献]
平 朝彦・田代 正之・岡村 真・甲藤 次郎,1980,高知県四万十帯の地質とその起源,平 朝彦・田代正之編,四万十帯の地質学と古生物学-甲藤次郎教授還暦記念論文集,林野弘済会出版,319-389.
Taira,A.,Katto,J.,Tashiro,M.,Okamura,M. and Kodama,K.,1988, The Shimanto Belt in Shikoku, Japan. Cretaceous to Miocene accretionary prism. Mod Geol., 12, 5-46.
Mukoyoshi,H.,Sakaguchi,A.,Otsuki,K.,Hirono,T. andSoh,W.,.2006, Co-seismic frictional melting along an out-of-sequence thrust in the Shimanto accretionary complex. Implications on the tsunamigenic potential of splay faults in modern subduction zones, Earth Planet.Sci.Lett.,245, 330–343.
大橋 聖和・金川 久一,2014,四国西部四万十帯トラバース,日本地質学会学術大会講演要旨
北村 真奈美・向吉 秀樹・廣瀬 丈洋,2014,付加体内部に発達する断層の変位量と幅との相関関係,地質雑,120,11-21.
調査の結果,当地域の断層帯は砂岩,泥岩及び砂泥互層を原岩とし,破砕帯はカタクレーサイトで幅が数cmから数10 cm,東西走向の北傾斜,条線はレイク角が平均32° W,そして右横ずれ成分を含む逆断層センスが多く確認された.調査で得られた断層スリップデータをもとに多重逆解法による古応力場解析を行ったところ,北西–南東方向の最大主応力軸σ1,北東–南西方向の最小主応力軸σ3が求まった.また,断層帯を挟んだビトリナイト反射率(Rm)のギャップは0.18%(温度に換算すると約11°C)以下であり,Mukoyoshi et al.(2006)や北村ほか(2014)で認められているような0.3%を超える明瞭なギャップは存在しない.反射率ギャップ0.18%を生じさせるのに必要な斜め横ずれ変位量を推定したところ,0.04~0.23 kmであり,求められた変位量に比べてトータルの破砕帯の幅(約6 m)は有意に大きい.
以上の被熱構造との関係性から,今回の調査地域の断層帯は最大被熱イベント以前に形成されたものであると考えられる.また,未〜半固結時変形の特徴に乏しいため,本研究の断層帯はある程度の固結性を獲得した付加プリズムの前部で形成されたと推測できる.また,今回の調査において斜め横ずれを示す断層が多く確認された.これは,これらの断層がノンアンダーソン型断層であることを示唆する.今後は断層帯の内部構造や微細組織について,より詳細に解析を行う予定である.
[謝辞]
ビトリナイト反射率測定,および多重逆解法による古応力場解析を行うにあたり,山口大学の坂口有人氏と(独)産業技術総合研究所の大坪誠氏に大変お世話になりました.記して感謝申し上げます.
[引用文献]
平 朝彦・田代 正之・岡村 真・甲藤 次郎,1980,高知県四万十帯の地質とその起源,平 朝彦・田代正之編,四万十帯の地質学と古生物学-甲藤次郎教授還暦記念論文集,林野弘済会出版,319-389.
Taira,A.,Katto,J.,Tashiro,M.,Okamura,M. and Kodama,K.,1988, The Shimanto Belt in Shikoku, Japan. Cretaceous to Miocene accretionary prism. Mod Geol., 12, 5-46.
Mukoyoshi,H.,Sakaguchi,A.,Otsuki,K.,Hirono,T. andSoh,W.,.2006, Co-seismic frictional melting along an out-of-sequence thrust in the Shimanto accretionary complex. Implications on the tsunamigenic potential of splay faults in modern subduction zones, Earth Planet.Sci.Lett.,245, 330–343.
大橋 聖和・金川 久一,2014,四国西部四万十帯トラバース,日本地質学会学術大会講演要旨
北村 真奈美・向吉 秀樹・廣瀬 丈洋,2014,付加体内部に発達する断層の変位量と幅との相関関係,地質雑,120,11-21.