日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS24] 地震予知・予測

2016年5月26日(木) 13:45 〜 15:15 105 (1F)

コンビーナ:*中島 淳一(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、座長:岡田 正実(気象庁気象研究所)、弘瀬 冬樹(気象研究所地震津波研究部)

14:30 〜 14:45

[SSS24-04] 地下深部流体上昇仮説の証拠

*佃 為成1 (1.なし)

キーワード:地殻の変形、深部流体、地下水温、前兆的変化

2005年頃,筆者は地震などに伴う地表異常現象を説明するため地下深部流体上昇仮説を提唱した. 異常現象には1) 地下から高温水侵入,2) 海底での高圧水噴出(状況証拠による), 3) 地震時の水温上昇証言の事後観測による長期的水温降下,4) 人工衛星赤外線観測による地温上昇検知などがあった.仮説の骨子は,深部岩盤の亀裂系に存在すると考えられる流体が地下岩盤にかかる圧力によって上部へ押し上げられ地表付近に達するとし,流体移動の仕組みは油圧ポンプモデルで説明した.深部流体は地下水に混入することが多いと考え,この仮説の検証のため,これまで地下水温の観測に力を入れてきた.地下水温観測点は福岡,山口,島根,岡山,兵庫,京都,和歌山,静岡,神奈川,長野,新潟の各府県の28カ所以上に展開した.
仮説提出当時,上昇流体のパスを形成する亀裂系の存在は希有だろうと予想していた.偶々存在したパスの上の地点で異常現象が観測されると考えた.しかし,水温観測を展開していくうち,そのようなパスは希な存在ではなく,かなりの地点の地下に存在するのではないかと考えるようになった.実際,長期的に水温変化のトレンドがほぼ不変な観測点は1ヶ所しかない.大抵の観測点では10年~20年の間には地殻変動と関係すると考えられるトレンドの変化を示す.
また,2009年の駿河湾の地震(M6.5)の際,地下水温データと歪計データとの比較を試みた.M6.5地震前後のトレンド変化が水温データには検知されているが,東海地方に展開されている気象庁の体積歪計にはその様子がまったく窺われない.深度約100mに埋設設置の歪計では検出されない深部岩盤の歪変化を水温データがつかまえている可能性がある.
そのほか,水温データには仮説を支持するように,応力の緩和や増加を示すデータ,2011年3月11日の東北の超巨大地震など大地震や顕著地震の前後の変動が観測されている.
参考文献:
Tsukuda T., K. Gotoh and O. Sato, Deep groundwater discharge and ground surface phenomena, B.E.R.I., Univ. Tokyo, 80, 105-131, 2005.
佃 為成,深部流体上昇仮説とその検証,月刊地球,28, 813-822,2006.
佃 為成,地下水温変化から地下深部の応力変化をさぐる,日本地震学会講演予稿集2012年秋季大会D12-03, p120, 2012.