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[SSS25-P30] 関東地域における極小・不規則アレイ微動観測に基づく浅部地盤モデルの高度化
キーワード:浅部地盤、速度構造、極小アレイ、微動
1.はじめに
巨大地震による被害推定を行う上で,広域における広帯域の地震動特性を精度良く評価できるようにすることは重要である.そのためには,より高度化された地盤モデルの構築が重要な課題の一つである.
防災科研ではこれまでに,広帯域(0.1Hz~10Hz程度)の地震動特性を評価できるような地盤モデルを構築するため,特に浅部と深部地盤の双方に影響のある周期付近(0.5~2.0 秒)の地震動をうまく説明する上で重要となるボーリングデータおよび物性値データ(主に微動観測データ)を収集し,浅部・深部を結合した地盤モデルを作成してきている.現在,防災科研では,内閣府SIP「レジリエントな防災・減災機能の強化」の⑤「リアルタイム被害推定・災害情報収集・分析・利活用システム開発」のテーマの1つである「地震被害推定のための地下構造モデルの構築」において,関東・東海地域の広域地盤モデルの構築を実施している.
本検討では,SIP事業として2014年度後半から2015年度に極小・不規則アレイ微動観測を実施した関東1都6県を対象として,極小・不規則アレイ微動観測記録から得られる1次元S波速度構造や2次元S波速度構造断面を用いて,既存のボーリングデータや表層地質情報に基づいて作成された初期地質モデルの修正を行い,当該地域における浅部地盤モデルの高度化を試みる.ここでは特に,浅部・深部統合地盤モデルの構築を目標に据えていることを踏まえ,浅部および深部地盤の遷移領域に相当すると考えられる工学的基盤面周辺(Vs300m/s~500m/s層程度)の速度構造に着目した検討を行う.
2.極小アレイ微動観測
常時微動観測については,関東地域の主に低地・台地において,アレイ半径60cm の「極小アレイ」,3m~10mの「3 点不規則アレイ」を実施している.極小アレイおよび3点不規則アレイ観測は主に,公道上や地震観測点(K-NET,KiK-net,SK-NET および気象庁)など合計で約5,000地点(2016年2月現在)において実施した.観測機器としては,一体型常時微動観測機材JU210,JU215およびJU410(白山工業社製)1)を用いて,約1~2km 間隔で各地点15分間の観測を行った.また,サンプリング周波数は100Hzもしくは200Hz とした.
3.浅部地盤S波速度構造の解析手法
本検討では,近年の研究2)~5)で提案・高度化されている微動観測に基づく浅部地盤探査手法により,1次元S波速度構造の評価を行う.解析は微動解析ソフト「BIDO」等を用いて,以下の手順で行う.
(1) 分散曲線およびH/Vスペクトル比の自動解析,読み取り
(2) AVS30等の増幅特性の抽出
(3) 分散曲線の直接変換(Simple Profiling Method;SPM)
(4) H/Vスペクトル比の深度変換等
(5) 簡易逆解析(Simple Inversion Method;SIM)等の逆解析処理
以上により得られる1次元S波速度構造や2次元S波速度構造断面にて,既存の初期地質モデルと比較・検討した上で,必要に応じた修正を行う.
(6) Vs350およびVs500上面深度の抽出
4.まとめ
本検討では,関東地域の主として低地・台地における極小アレイ微動観測で得られたデータに基づいて,1次元S波速度構造や2次元S波速度構造断面を推定して,当該地域における既存の初期地質モデルと比較・検討した上で適切に修正する.特に,工学的基盤面周辺(Vs300m/s~500m/s層程度)に着目した浅部地盤モデルの高度化を試みている. 結果の詳細については,大会にて報告予定である.
謝辞
本研究は,総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)によって実施されました.
参考文献
1) 先名重樹,藤原広行,微動探査観測ツールの開発 その1-常時微動解析ツール-,防災科学技術研究所研究資料,313,2008.
2) 長郁夫,多田卓,篠崎祐三,極小アレイによる新しい微動探査法,浅部地盤平均S波速度の簡便推定,物理探査,61(6),457-468,2008.
3) Cho, I., S. Senna, and H. Fujiwara, Miniature array analysis of microtremors, Geophysics, 78, KS13–KS23, doi:10.1190/geo2012-0248.1, 2013.
4) 長郁夫,先名重樹,藤原広行,微動のH/V スペクトルを用いたS波速度不連続の概査法の提案,第129 回物理探査学会学術講演会,P-4,2013.
5) 先名重樹,長郁夫,藤原広行,常時微動を用いた浅部地盤構造探査の高度化について,物理探査学会第130 回学術講演論文集,43-46,2014.
巨大地震による被害推定を行う上で,広域における広帯域の地震動特性を精度良く評価できるようにすることは重要である.そのためには,より高度化された地盤モデルの構築が重要な課題の一つである.
防災科研ではこれまでに,広帯域(0.1Hz~10Hz程度)の地震動特性を評価できるような地盤モデルを構築するため,特に浅部と深部地盤の双方に影響のある周期付近(0.5~2.0 秒)の地震動をうまく説明する上で重要となるボーリングデータおよび物性値データ(主に微動観測データ)を収集し,浅部・深部を結合した地盤モデルを作成してきている.現在,防災科研では,内閣府SIP「レジリエントな防災・減災機能の強化」の⑤「リアルタイム被害推定・災害情報収集・分析・利活用システム開発」のテーマの1つである「地震被害推定のための地下構造モデルの構築」において,関東・東海地域の広域地盤モデルの構築を実施している.
本検討では,SIP事業として2014年度後半から2015年度に極小・不規則アレイ微動観測を実施した関東1都6県を対象として,極小・不規則アレイ微動観測記録から得られる1次元S波速度構造や2次元S波速度構造断面を用いて,既存のボーリングデータや表層地質情報に基づいて作成された初期地質モデルの修正を行い,当該地域における浅部地盤モデルの高度化を試みる.ここでは特に,浅部・深部統合地盤モデルの構築を目標に据えていることを踏まえ,浅部および深部地盤の遷移領域に相当すると考えられる工学的基盤面周辺(Vs300m/s~500m/s層程度)の速度構造に着目した検討を行う.
2.極小アレイ微動観測
常時微動観測については,関東地域の主に低地・台地において,アレイ半径60cm の「極小アレイ」,3m~10mの「3 点不規則アレイ」を実施している.極小アレイおよび3点不規則アレイ観測は主に,公道上や地震観測点(K-NET,KiK-net,SK-NET および気象庁)など合計で約5,000地点(2016年2月現在)において実施した.観測機器としては,一体型常時微動観測機材JU210,JU215およびJU410(白山工業社製)1)を用いて,約1~2km 間隔で各地点15分間の観測を行った.また,サンプリング周波数は100Hzもしくは200Hz とした.
3.浅部地盤S波速度構造の解析手法
本検討では,近年の研究2)~5)で提案・高度化されている微動観測に基づく浅部地盤探査手法により,1次元S波速度構造の評価を行う.解析は微動解析ソフト「BIDO」等を用いて,以下の手順で行う.
(1) 分散曲線およびH/Vスペクトル比の自動解析,読み取り
(2) AVS30等の増幅特性の抽出
(3) 分散曲線の直接変換(Simple Profiling Method;SPM)
(4) H/Vスペクトル比の深度変換等
(5) 簡易逆解析(Simple Inversion Method;SIM)等の逆解析処理
以上により得られる1次元S波速度構造や2次元S波速度構造断面にて,既存の初期地質モデルと比較・検討した上で,必要に応じた修正を行う.
(6) Vs350およびVs500上面深度の抽出
4.まとめ
本検討では,関東地域の主として低地・台地における極小アレイ微動観測で得られたデータに基づいて,1次元S波速度構造や2次元S波速度構造断面を推定して,当該地域における既存の初期地質モデルと比較・検討した上で適切に修正する.特に,工学的基盤面周辺(Vs300m/s~500m/s層程度)に着目した浅部地盤モデルの高度化を試みている. 結果の詳細については,大会にて報告予定である.
謝辞
本研究は,総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)によって実施されました.
参考文献
1) 先名重樹,藤原広行,微動探査観測ツールの開発 その1-常時微動解析ツール-,防災科学技術研究所研究資料,313,2008.
2) 長郁夫,多田卓,篠崎祐三,極小アレイによる新しい微動探査法,浅部地盤平均S波速度の簡便推定,物理探査,61(6),457-468,2008.
3) Cho, I., S. Senna, and H. Fujiwara, Miniature array analysis of microtremors, Geophysics, 78, KS13–KS23, doi:10.1190/geo2012-0248.1, 2013.
4) 長郁夫,先名重樹,藤原広行,微動のH/V スペクトルを用いたS波速度不連続の概査法の提案,第129 回物理探査学会学術講演会,P-4,2013.
5) 先名重樹,長郁夫,藤原広行,常時微動を用いた浅部地盤構造探査の高度化について,物理探査学会第130 回学術講演論文集,43-46,2014.