日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS27] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2016年5月25日(水) 13:45 〜 15:10 コンベンションホールA (2F)

コンビーナ:*飯沼 卓史(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、加瀬 祐子(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、安藤 亮輔(東京大学大学院理学系研究科)、谷川 亘(独立行政法人海洋研究開発機構高知コア研究所)、向吉 秀樹(島根大学大学院総合理工学研究科地球資源環境学領域)、座長:福山 英一(防災科学技術研究所)、鈴木 岳人(青山学院大学理工学部物理・数理学科)

13:45 〜 14:00

[SSS27-01] 滑り端伝播における自発的な静摩擦力の発現と動摩擦力の消失

*鈴木 岳人1松川 宏1 (1.青山学院大学理工学部物理・数理学科)

キーワード:静摩擦力、動摩擦力、非線形な摩擦則、解析解、滑り端の伝播

滑り速度に非線形に依存する摩擦則の下での滑り端の伝播において、自発的な静摩擦の発現と動摩擦の消滅を示す。基板上のブロックを考え、滑り出すようx軸方向に加重する。ブロックはz>0の半無限の領域を占める均質等方な媒質であるとし、基板はz=0上の剛体平面であるとする。xが∞でのブロックの滑りはゼロに固定し、xが-∞の点に加重して滑りを起こす。ここでは滑り速度の二次関数となる摩擦則を採用し、定常状態の滑り分布の解析解を得る:摩擦力tauは-av2 +2abvで与えられるとする。ここでvは滑り速度であり、abは定数である。この摩擦則の下では、滑り速度の増加に伴って速度強化から速度弱化へと移り変わる。これにより摩擦力が滑り速度の一価関数となり、解析的取り扱いが可能となる。またここでは静摩擦の存在を先見的には仮定していないことにも注意する。
この系で滑りと歪の定常状態の解析解が得られ、それによって加重点での歪pinf(<0)と滑り端の伝播速度cの間に関係があることが示された:|pinf|=2b/c. また定常状態が存在するためにはcはブロックの弾性波速度veよりも小さくなければならない、ということも示された。これらの結果によりpinfはある臨界値を持つことが分かる。|pinf|<2b/veならば定常的な滑りの伝播は現れず、時間と共に滑りが減衰してしまう。一方|pinf|>2b/veならば定常状態が存在する。これらの臨界的振る舞いから、静摩擦力が自発的に発現していると言える。巨視的な静摩擦力は2bE1/veE1はYoung率)で与えられる。
ここで得られた解析解は、加重点での滑り速度が2bで与えられることも示している。これは摩擦力が加重点でゼロになることを意味する。すなわち、その点で動摩擦が自発的に消滅していることも明らかになったのである。