日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS27] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*飯沼 卓史(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、加瀬 祐子(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、安藤 亮輔(東京大学大学院理学系研究科)、谷川 亘(独立行政法人海洋研究開発機構高知コア研究所)、向吉 秀樹(島根大学大学院総合理工学研究科地球資源環境学領域)

17:15 〜 18:30

[SSS27-P21] 石英質岩の摩擦弱化過程における断層表面の状態変化

*飯田 大貴1堤 昭人1 (1.京都大学大学院理学研究科)

中–高速のすべり速度域において、摩擦溶融、thermal pressurization、flash heating等、高い摩擦熱を要因とするさまざまな摩擦強度弱化の機構が提唱されている。近年、ノヴァキュライトやクォーツァイトなどの石英質岩が、1 mm/s>という比較的低いすべり速度域において摩擦弱化を起こすことがGoldsby and Tullis [2002]、Di Toro et al. [2004]等によって報告され、摩擦発熱を必要としない弱化現象として注目を集めている。Goldsby and Tullis [2002]等は摩擦表面に形成される水和化非晶質シリカのガウジがこの弱化の原因であると説明したが、弱化開始時においてガウジが水和化、非晶質化を起こしていることは確認されていない。本研究では、弱化の進行に伴い摩擦表面でどのようなプロセスが進行するかを調べることを目的とし、摩擦表面の状態変化、表面に形成されるガウジの非晶質化の二点についてそれぞれ観察、分析を行った。 実験は京都大学の回転式中–高速摩擦試験機を使用し行った。実験試料には人工水晶とチャートの二種類の試料を用いた。実験の垂直応力、すべり速度条件は、先行研究と摩擦データの比較を行うことを目的とし、Hayashi and Tsutsumi [2010]と同じ条件である、垂直応力1.5 MPa、すべり速度105 mm/s、10.5 mm/s、1.05 mm/sという値に設定した。 実験の結果、人工水晶、チャートの両試料について、105 mm/s、10.5 mm/s、1.05 mm/sの速度条件で、実験開始直後にすべり距離に依存する摩擦のすべり弱化が確認された。また、両試料について、10.5 mm/s、1.05 mm/sの速度条件で、すべり弱化終了後に断層部の厚さ変化を伴う摩擦係数の変動が起こることが確認された。本研究での実験結果から得られたすべり弱化距離とHayashi and Tsutsumi [2010]で報告されたすべり弱化距離の比較を行ったところ、本研究でのすべり弱化距離の方が一桁以上小さいという結果が得られた。この差の原因は、本研究においてのみ実験準備の段階で行われた摩擦表面の片当たりの解消作業であると推定される。 各速度において摩擦データを測定した他、105 mm/sの実験開始時のすべり弱化に注目し、弱化過程におけるいくつかのすべり距離で実験を終了し、実体顕微鏡、SEMによる摩擦表面の観察を行った。観察の結果、ほぼすべての試料の摩擦表面において、試料のせん断方向側がめくれ上がった100~300 µmほどの特徴的な非対称構造が形成されていることが確認された。 XRD分析の結果、弱化後大変位せん断を経験したチャートにおいてのみ非晶質化を示す2θ=20~30 °に現れる幅広いピークが確認された。Hayashi and Tsutsumi [2010]のXRD分析では、弱化後に大変位せん断を経験したものについて、人工水晶、チャートともに非晶質化が確認されている。本研究での結果はこれと異なる。Goldsby and Tullis [2002]は石英質岩の弱化の原因は摩擦表面に形成される水和化非晶質シリカのガウジであると説明している。本研究におけるXRD分析の結果から、すべり弱化中、弱化終了直後のすべり距離においてはガウジの非晶質化は起こっていない可能性が示された。