17:15 〜 18:30
[SSS27-P27] 島根県中部群発微小地震分布域に見られる断層系の分布とその特徴
島根県中部三瓶山周辺から広島県三次市にかけて,1950年頃から現在にかけてマグニチュード(M)5クラスの地震が6回発生している.この地域では近年においても,地震活動に伴うとされる無感地震が数多く観測されている.この群発微小地震は,2000年鳥取県西部地震(M 7.3)の余震分布とほぼ平行に北西方向に帯状に分布する.この帯状に分布する群発微小地震は,伏在する活断層の存在を示している可能性が高いと考えられる.しかし,この地域においてこれまでに活断層の報告はなされておらず,また,微小地震の分布と地質学的背景との関係についても明らかにはされていない.そこで本研究では,島根県中部群発微小地震分布域の1地域である,島根県飯南町獅子周辺において地表地質踏査を行い,微小地震分布域周辺における地質構造および断層系の分布の把握,それらの断層岩の特徴を明らかにすることを目的として調査を行った.
本調査地域には古第三紀の赤名花崗閃緑岩および石見花崗岩,八神火山岩類(服部ほか,1983)が分布する.赤名花崗閃緑岩および石見花崗岩中には,これらを貫く玄武岩~安山岩質岩脈,流紋岩質~アプライト質の岩脈がよく発達する.
調査の結果,100本を超える断層が調査範囲において確認された.断層の姿勢は大きく北東走向高角北傾斜と西北西走向高角南傾斜の2方向に分けられる.北東走向高角北傾斜の断層は,赤名花崗閃緑岩と石見花崗岩を境する断層をはじめ,花崗岩類と岩脈との境界部など岩相境界に発達するものが多い.断層には厚さ数 mm~数10 cmの白色,淡緑色,褐色の断層ガウジを挟む.一部の断層においては,厚さ数1 0 cm~数 mのカタクレーサイトを伴うものも見られる.特に赤名花崗閃緑岩と石見花崗岩を境する断層は,厚さ約10 cmの淡緑色の断層ガウジ,厚さ数約1mのカタクレーサイト,赤名花崗閃緑岩および石見花崗岩の数10 cm~1 m程度の岩片を含む幅約20 mの変形・変質帯からなる.変質帯中には部分的に酸性岩の岩脈が見られる箇所があるが,岩脈には破砕や変形などの構造は見られない.一方,西北西走向高角南傾斜の断層は,花崗岩類と岩脈姿勢に関係なく,岩脈を切って発達するものが多い.また,断層中にカタクレーサイトは含まれておらず,厚さ数 mm~数 cmの白色,淡緑色,褐色の断層ガウジを挟むという特徴を持つ.
本調査で確認された断層のうち,北東走向の断層は厚い断層ガウジやカタクレーサイトを伴い,全般的に規模が大きい.しかし,その姿勢は群発地震の分布の方向とは異なっている.また,変形・変質帯内に貫入する貫入岩に破砕や変形も見られない.このことから,これらの断層は花崗岩類貫入後の古い地質時代に形成されたものであり,現在の応力場で形成されたものではないと考えられる.一方,西北西走向の断層については,岩相境界や貫入岩の姿勢と無関係に発達している.また,ほとんどの断層が厚さ数 mm~数 cm程度の薄い断層ガウジを伴っている.この断層の姿勢および断層ガウジの産状は,2000年鳥取県西部地震の余震域に見られる西北西走向の断層の特徴と非常に類似している(小林ほか, 2003; 相澤ほか,2006).この西北西走向の断層の分布については,2000年鳥取県西部地震の断層においては,断層が未発達の段階にあり,北西走向の深部断層の左横ずれの断層活動に伴い,右雁行する小規模なリーデル剪断面(R1面)が地表に現れたものと解釈されている.(井上ほか,2002;小林ほか,2003など).本調査地域に見られる西北西走向の断層も,断層ガウジの規模,地震分布と断層の走向の関係から,現在の応力場において,地表付近で形成された小規模なR1面に該当する可能性がある.
島根県中部の群発地震発生域における地質踏査および断層岩の記載より,群発地震発生域に北東走向と西南西走向の2種類の断層系が発達することが明らかとなった.このうち北東走向の断層は古い地質時代に形成されたものであると考えられる.また,西北西走向の断層は,現在の応力場に近い場所で形成された発達段階初期の小規模な断層群を見ている可能性がある.今後,より広範囲な地質踏査による断層分布の解明と,断層の構造解析により,本調査地域周辺で観測される群発微小地震と地表で見られる断層の関係について明らかになると考えられる.
本調査地域には古第三紀の赤名花崗閃緑岩および石見花崗岩,八神火山岩類(服部ほか,1983)が分布する.赤名花崗閃緑岩および石見花崗岩中には,これらを貫く玄武岩~安山岩質岩脈,流紋岩質~アプライト質の岩脈がよく発達する.
調査の結果,100本を超える断層が調査範囲において確認された.断層の姿勢は大きく北東走向高角北傾斜と西北西走向高角南傾斜の2方向に分けられる.北東走向高角北傾斜の断層は,赤名花崗閃緑岩と石見花崗岩を境する断層をはじめ,花崗岩類と岩脈との境界部など岩相境界に発達するものが多い.断層には厚さ数 mm~数10 cmの白色,淡緑色,褐色の断層ガウジを挟む.一部の断層においては,厚さ数1 0 cm~数 mのカタクレーサイトを伴うものも見られる.特に赤名花崗閃緑岩と石見花崗岩を境する断層は,厚さ約10 cmの淡緑色の断層ガウジ,厚さ数約1mのカタクレーサイト,赤名花崗閃緑岩および石見花崗岩の数10 cm~1 m程度の岩片を含む幅約20 mの変形・変質帯からなる.変質帯中には部分的に酸性岩の岩脈が見られる箇所があるが,岩脈には破砕や変形などの構造は見られない.一方,西北西走向高角南傾斜の断層は,花崗岩類と岩脈姿勢に関係なく,岩脈を切って発達するものが多い.また,断層中にカタクレーサイトは含まれておらず,厚さ数 mm~数 cmの白色,淡緑色,褐色の断層ガウジを挟むという特徴を持つ.
本調査で確認された断層のうち,北東走向の断層は厚い断層ガウジやカタクレーサイトを伴い,全般的に規模が大きい.しかし,その姿勢は群発地震の分布の方向とは異なっている.また,変形・変質帯内に貫入する貫入岩に破砕や変形も見られない.このことから,これらの断層は花崗岩類貫入後の古い地質時代に形成されたものであり,現在の応力場で形成されたものではないと考えられる.一方,西北西走向の断層については,岩相境界や貫入岩の姿勢と無関係に発達している.また,ほとんどの断層が厚さ数 mm~数 cm程度の薄い断層ガウジを伴っている.この断層の姿勢および断層ガウジの産状は,2000年鳥取県西部地震の余震域に見られる西北西走向の断層の特徴と非常に類似している(小林ほか, 2003; 相澤ほか,2006).この西北西走向の断層の分布については,2000年鳥取県西部地震の断層においては,断層が未発達の段階にあり,北西走向の深部断層の左横ずれの断層活動に伴い,右雁行する小規模なリーデル剪断面(R1面)が地表に現れたものと解釈されている.(井上ほか,2002;小林ほか,2003など).本調査地域に見られる西北西走向の断層も,断層ガウジの規模,地震分布と断層の走向の関係から,現在の応力場において,地表付近で形成された小規模なR1面に該当する可能性がある.
島根県中部の群発地震発生域における地質踏査および断層岩の記載より,群発地震発生域に北東走向と西南西走向の2種類の断層系が発達することが明らかとなった.このうち北東走向の断層は古い地質時代に形成されたものであると考えられる.また,西北西走向の断層は,現在の応力場に近い場所で形成された発達段階初期の小規模な断層群を見ている可能性がある.今後,より広範囲な地質踏査による断層分布の解明と,断層の構造解析により,本調査地域周辺で観測される群発微小地震と地表で見られる断層の関係について明らかになると考えられる.