[S-SS28] 地震波伝播：理論と応用

[SSS28-11] F-net石垣点で観測される単色振動とその周波数(7-11mHz)の時間変化について

*名和 一成¹、竿本 英貴¹、千田 康介^2,1、木村 武志³ (1.産業技術総合研究所、2.筑波大学、3.防災科学技術研究所)

キーワード：広帯域地震計、ノイズ、セイシュ、ダム貯水池、石垣島

石垣島に設置した地震計（名和ほか,2015）のデータ評価の過程において、防災科学技術研究所のF-net石垣観測点の広帯域地震計データに10mHz前後の振動が頻繁に記録されていることに気がついた。F-net石垣観測点の連続データ（20HzサンプリングのBH*, 1HzサンプリングのLH*チャンネル）を解析して、2012年から2014年半ばまで概ね11mHz付近にスペクトルのピークが立つこと、2014年7月から2015年4月にかけてそのピークの周波数が低周波側に徐々にシフトしたことを見出した。特に、NS成分に顕著に表れている。周辺のFnet点と遠地地震波形を比較した地震計の特性チェック(Kimura et al., 2015)およびノイズ解析（木村, 2015）から、その期間、地震計システムは正常に動作していることを確認している。観測点近傍の灌漑用の名蔵ダムの観測記録と比較して、ピークの周波数が11mHzの時期がダムの満水位の時期と一致すること、そのピークの周波数の時間変化が貯水位の時間変化と良く相関することがわかった。モデル計算によって、ダム貯水池の固有振動が満水時の周波数と一致すること、水位／水量が減少するとその周波数は低くなることが再現できた。これらのことから、観測された振動は名蔵ダム貯水池のセイシュに伴う振動が原因と結論できる。

謝辞：
名蔵ダム観測データの収集・整理に協力していただいた沖縄県名蔵ダム管理所、国立天文台VERA石垣島観測局の宮地竹史氏、産総研の高橋美江氏に感謝します。本研究はJSPS科研費 26289350の助成を受けたものです。

参考文献：
名和ほか(2015) 石垣島における陸水擾乱の重力への影響とそのモニタリングのための新たな試み、日本地球惑星科学連合2015年大会
Kimura, T., H. Murakami, and T. Matsumoto (2015) Systematic monitoring of instrumentation health in high-density broadband seismic networks, Earth, Planets and Space, 67:55, doi:10.1186/s40623-015-0226-y.
木村(2015) 広帯域地震計の周波数応答特性異常と背景ノイズレベル、日本地震学会2015年秋季大会