日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS31] 活断層と古地震

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、安江 健一(日本原子力研究開発機構)、後藤 秀昭(広島大学大学院文学研究科)

17:15 〜 18:30

[SSS31-P07] 関東平野の第四紀後期の活構造図ー数値標高モデルによる地形ステレオ画像の判読に基づくー

*後藤 秀昭1 (1.広島大学大学院文学研究科)

キーワード:数値標高モデル、アナグリフ、変動地形、関東平野

数値標高モデル(DEM)を用いた研究は,今世紀に入り急速に広まった。そのうち,地形デ−タを用いた地形の可視化の研究では,地形段彩図や陰影図,傾斜区分図などの一般的な表現方法のほか,それらを重ねた地形表現(向山・佐々木,2007 など)や地形開度(横山ほか,1998),赤色立体地図(千葉・鈴木,2004),ステレオ画像の作成(後藤・佐藤,2003 など)など,多様な表現が検討されてきた。このような可視化された地図を用いた変動地形学的な研究では,50 mメッシュのDEM を用いて地形判読の可能性を検討した宇根・小室(2000)や,デ−タの取得や解像度について検討した隈元ほか(2002),航空レ−ザ測量で取得したデ−タを用いて変位地形を検討した中田(2008)やKondo et al.,( 2008),地震断層沿いの詳細地形を検討した丸山ほか(2009)などがある。
我が国では,数値化された地形デ−タの整備は1990 年代から始まっていたが,高解像度の地形デ−タの整備が進んだのは最近のことである。2007 年に制定,施行された地理空間情報活用推進基本法がその整備と公開を押し進めた。これを背景として変動地形学の分野においても,地形デ−タの取り扱いに長けた専門家に限らず,研究者自身が分析や表示を行うという,一般的な研究方法として利用されるようになり(後藤・中田,2009;2011 など),分析方法にも広がりがでてきた。後藤・杉戸(2012)や近藤ほか(2015)では,空中写真による地形判読では認識や認定が困難な変動地形を,ステレオ画像や詳細な断面図の作成によって抽出している。活断層の位置や形状,分布を把握するのに,空中写真や地形図が主要な役割の担うという研究手法から,手法的に大きく転換あるいは向上できる地形や地域が出てきたとも言える。これは,地形図を用いて地形判読をしていた時代から1970 年代に空中写真を用いた研究に主軸を移したのと同等の手法的な新展開であると考えている。
このような背景と認識のもと,後藤(2012;2013;2014)では誰でも自由に地形判読ができるようにするために,日本列島で整備されている多様な地形デ−タを網羅的に用いて,ステレオ画像やその作成手順を提示してきた。そのなかには,沿岸域のデ−タを加工したものも加えており,陸上地形,海底地形に留まらず,海陸を統合した地形を広域的に判読可能なステレオ画像が含まれている。また,これらの画像を用いて判読できる地形のうち,都市化されることで地表面の判読が困難な地域において変動地形を新たに認めたり,長波長な撓曲崖のために空中写真では認識が困難な地形を見出すなどして,ステレオ画像の有効性を提示してきた。
本研究では,日本で最も人口密度が高い一方で,多段化した段丘面が発達し,日本の地形学の模式地となっている関東平野において,変動地形学的な手法に基づいてステレオ画像を系統的に判読・検討した結果を示す。これまで報告されてきた活構造と重複したものが多いが,一方で,これまでに報告されていない変位地形や地形面の変形を見いだすことができた。具体的には,1)首都周辺の山ノ手台地〜下末吉台地の北東−南西方向の背斜状変形(山ノ手背斜),2)千葉市付近で東北東−西南西方向に延びる褶曲や傾動に関連したと思われる変形や断層崖(千葉断層系),4)武蔵野台地北縁の撓曲(武蔵野北縁撓曲帯),5)平井断層の南東延長,6)鴨川低地南断層の左横ずれ断層へと続くように見える海底活断層などである。