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[SSS31-P17] 佐賀平野北縁断層帯の第四紀における活動性
キーワード:佐賀平野北縁断層帯、正断層、大縮尺地形図、テクトニックバルジ、平均上下変位速度
九州地域の活断層はその分布形態,断層型などから九州北部,九州中部,九州南部の3つの区域に区分される.本研究で対象とした佐賀平野北縁断層帯は,九州中部に位置する.九州中部の活断層は,主としてほぼ東西方向に延び,九州北部や九州南部に比べて密に分布する.これらの活断層のほとんどは,南北方向に伸びる力が働くことに伴う正断層である(地震調査研究推進本部,2012).佐賀平野北縁断層帯は,佐賀県吉野ヶ里町立野付近から佐賀県小城市小城町松尾付近に分布する.本断層帯は複数の並走する断層からなり,地表で認められる断層帯の長さは東西約22km,重力異常の急変帯から推定される地下の断層帯の長さは38km程度であり,ずれの向きは主として南側が低下する正断層の可能性が指摘されている(地震調査研究推進本部,2013).佐賀平野北縁における活断層の特徴的な分布形態は直線的なトレースが東西にわたってみられることである.佐賀平野北縁断層帯の分布に関して,九州活構造研究会編(1989)や中田・今泉編(2002)等は,北側の背振山地と南側の佐賀平野との地形境界およびその南側に活断層を認定している.AIST(2014)は,背振山地南縁に沿って活断層の可能性がある比高0.7〜2.5m程度の低崖が断続的に認められたと述べている.しかし,本断層帯を対象とした活断層の詳細な位置,平均変位速度や最新活動時期などを明らかにするための調査は乏しい.そこで,本研究では佐賀平野北縁断層帯の平均変位速度や活動履歴,最新活動時期を推定することを目的に微地形判読,地形・地質野外調査及び極浅層反射法地震探査等の調査を行った.調査地域における断層を北方よりF2断層,F3断層,F4断層,F5断層,F6断層,F7断層とよぶ.佐賀平野北縁断層帯についてはこれまで,楮原ほか(2014,2015)や今泉ほか(2014),吉田ほか(2015)によりすでに報告を行っている.本報告では調査地域のF3断層,F4断層,F5断層,F6断層,F7断層の平均上下変位速度から佐賀平野北縁断層帯の第四紀における活動性について考察する.
佐賀平野北縁に分布する河成段丘面は,扇状地性の段丘面である.その岩相は,背振山地南方の丘陵斜面の構成層である三郡変成岩類と花崗岩質の砂礫から成る.佐賀平野北縁の地形面を,高位よりH面, M1面,阿蘇4火砕流堆積面,M2面, L1面,L2面およびL3面の7面に区分した.これまでの段丘区分図((故)長岡原図;下山,1999;下山ほか,1999,2010など)との対比を踏まえると,それぞれの形成年代は, H面はMIS7相当, M1面はAso—4火砕流堆積面の下位に位置することから最終間氷期最盛期であるMIS5e相当, 阿蘇4火砕流堆積面は8.9kaに, M2面は阿蘇4火砕流堆積物を不整合に覆うことなどからMIS 5a相当と考えられる.L1面の堆積物には,AT(26-29ka)が直上にのることから,離水年代を26kaとするとMIS 2-4と考えられ,L2面の堆積物にK-Ah(7.3ka)が直上にのることから離水年代を7.3kaとするとMIS 1相当とみなした.
空中写真判読と地表踏査の結果,佐賀平野北縁に分布する扇状地性の段丘面に低断層崖とみられる東西方向に断続的に延びるリニアメントが確認された.これらの低断層崖あるいは低断層崖の可能性がある地形的な高まりは,南傾斜で数条にわたって確認された.
本断層帯で最も明瞭な低断層崖をつくっているF3断層は,九州活構造研究会編(1989)や中田・今泉編(2002)で指摘されている活断層に相当する.このF3断層は,扇状地面(L1面)上に比高1.8m程度の明瞭な低断層崖として認められ,西は佐賀市大和町から東は城原川まで断続的ではあるが明瞭に追跡できる.L1面におけるF3断層の平均上下変位速度は0.07mm/yrと見積られた.
F6断層は,嘉瀬川左岸より城原川右岸まで連続したリニアメントがL2面上に追跡できる.F6断層は,L2面上に比高約50cm程度の低断層崖あるいは低断層崖の可能性がある地形的な高まりがあり,地表踏査と地形断面図からも段丘面の勾配の変化が認められた.L2面におけるF6断層の平均上下変位速度は0.07mm/yrと見積られた.
F7断層はF6断層の南側に位置し,F6断層と同様に嘉瀬川左岸より城原川右岸まで連続したリニアメントがL2面上に追跡できる.佐賀市久保泉町下和泉において,F7断層を境に上盤側と下盤側で簡易ボーリング調査を行った.その結果,この地点では埋没段丘であるL1面の堆積物中にATが確認された.F7断層を境にしたその上下変位量は少なくとも185cm以上と見積もられた.よって,F7断層の平均上下変位速度は0.07mm/yrと見積られた.嘉瀬川〜城原川に至る佐賀平野北縁のL2面上には,低断層崖と思われる変動地形が連続して認められた.K-Ahが直上にのるL2面上に変形が認められることから,本断層帯の第四紀における活動は,L2面形成(7.3ka)後に少なくとも1回と考えられる.本断層帯において最も低位に相当するL3面上の変形は,佐賀市大和付近で50cm程度の低崖が認められるが,人工改変の可能性も含めて今後の課題である.
佐賀平野北縁に分布する河成段丘面は,扇状地性の段丘面である.その岩相は,背振山地南方の丘陵斜面の構成層である三郡変成岩類と花崗岩質の砂礫から成る.佐賀平野北縁の地形面を,高位よりH面, M1面,阿蘇4火砕流堆積面,M2面, L1面,L2面およびL3面の7面に区分した.これまでの段丘区分図((故)長岡原図;下山,1999;下山ほか,1999,2010など)との対比を踏まえると,それぞれの形成年代は, H面はMIS7相当, M1面はAso—4火砕流堆積面の下位に位置することから最終間氷期最盛期であるMIS5e相当, 阿蘇4火砕流堆積面は8.9kaに, M2面は阿蘇4火砕流堆積物を不整合に覆うことなどからMIS 5a相当と考えられる.L1面の堆積物には,AT(26-29ka)が直上にのることから,離水年代を26kaとするとMIS 2-4と考えられ,L2面の堆積物にK-Ah(7.3ka)が直上にのることから離水年代を7.3kaとするとMIS 1相当とみなした.
空中写真判読と地表踏査の結果,佐賀平野北縁に分布する扇状地性の段丘面に低断層崖とみられる東西方向に断続的に延びるリニアメントが確認された.これらの低断層崖あるいは低断層崖の可能性がある地形的な高まりは,南傾斜で数条にわたって確認された.
本断層帯で最も明瞭な低断層崖をつくっているF3断層は,九州活構造研究会編(1989)や中田・今泉編(2002)で指摘されている活断層に相当する.このF3断層は,扇状地面(L1面)上に比高1.8m程度の明瞭な低断層崖として認められ,西は佐賀市大和町から東は城原川まで断続的ではあるが明瞭に追跡できる.L1面におけるF3断層の平均上下変位速度は0.07mm/yrと見積られた.
F6断層は,嘉瀬川左岸より城原川右岸まで連続したリニアメントがL2面上に追跡できる.F6断層は,L2面上に比高約50cm程度の低断層崖あるいは低断層崖の可能性がある地形的な高まりがあり,地表踏査と地形断面図からも段丘面の勾配の変化が認められた.L2面におけるF6断層の平均上下変位速度は0.07mm/yrと見積られた.
F7断層はF6断層の南側に位置し,F6断層と同様に嘉瀬川左岸より城原川右岸まで連続したリニアメントがL2面上に追跡できる.佐賀市久保泉町下和泉において,F7断層を境に上盤側と下盤側で簡易ボーリング調査を行った.その結果,この地点では埋没段丘であるL1面の堆積物中にATが確認された.F7断層を境にしたその上下変位量は少なくとも185cm以上と見積もられた.よって,F7断層の平均上下変位速度は0.07mm/yrと見積られた.嘉瀬川〜城原川に至る佐賀平野北縁のL2面上には,低断層崖と思われる変動地形が連続して認められた.K-Ahが直上にのるL2面上に変形が認められることから,本断層帯の第四紀における活動は,L2面形成(7.3ka)後に少なくとも1回と考えられる.本断層帯において最も低位に相当するL3面上の変形は,佐賀市大和付近で50cm程度の低崖が認められるが,人工改変の可能性も含めて今後の課題である.