17:15 〜 18:30
[SSS32-P15] 松代の伸縮計における降水補正
キーワード:伸縮計、降水補正、SCE-UA法
気象庁が松代(長野県長野市)の大坑道のトンネル内に設置している100mの石英管伸縮計は、長期間にわたる安定したデータが連続観測されている。この松代の伸縮計は、他の場所のトンネル内に設置された伸縮計の多くと同様に降水の影響を受ける。特に伸縮計の南北成分は降水の影響が大きく、西前・涌井(1996)は1990年の1年間の伸縮計の南北成分の観測データと坑道外の露場の雨量計の降水量データを用いてタンクモデルによる降水補正に取り組み、良好な結果を得た。しかし、松代地震観測所の各種刊行物における伸縮計のデータには、残念ながらこの降水補正が反映されていない。
近年、木村・他(2015)は気象庁が東海地域から南関東地域にかけて設置した複数のボアホール式の体積ひずみ計データについてタンクモデルによる降水補正に取り組んだ。その調査結果は2014年1月より気象庁業務に導入され、地震防災対策強化地域判定会の資料や地震予知連絡会会報のひずみ計のデータにも反映されるようになり、特に体積ひずみ計については長期的なデータの品質が向上した。そこで、松代の伸縮計についても木村・他(2015)による降水補正手法を適用した場合に長期的なデータの品質が向上するかどうかについての調査を行うこととした。
西前・涌井(1996)は試行錯誤によってパラメータを推定していたが、本調査は現在の恵まれた計算機資源を生かしてSCE-UA法(Duan,1994)によって計算機で力任せに推定したことが大きな違いである。西前・涌井(1996)と本調査は形状が異なるものの3段のタンクモデルを用いた点では共通であり、本調査で用いたタンクの形状で西前・涌井(1996)を表すことも可能である。本調査で2011年から2014年の4年間の伸縮計の観測データと露場の雨量計の降水量データを用いて推定したパラメータのうち、各タンクの水位を伸縮(ひずみ)に換算する補正係数に着目すると、伸縮計の南北成分については1段目のタンクの補正係数が2段目や3段目に比べて1桁小さく、2段目と3段目のタンクの補正係数の符号が反転して推定された。これは、西前・涌井(1996)によって試行錯誤で決めたパラメータ(1段目は無視、2段目は-0.5e-6strain/mm、3段目は+0.17strain/mm)とも整合する。
その他、伸縮計の南北成分だけでなく東西成分の降水補正の調査結果や、用いる降水量データ(坑道外の露場の雨量計、長野・聖高原・上田・菅平の各アメダス)を変えた場合の比較調査結果についても紹介する。
近年、木村・他(2015)は気象庁が東海地域から南関東地域にかけて設置した複数のボアホール式の体積ひずみ計データについてタンクモデルによる降水補正に取り組んだ。その調査結果は2014年1月より気象庁業務に導入され、地震防災対策強化地域判定会の資料や地震予知連絡会会報のひずみ計のデータにも反映されるようになり、特に体積ひずみ計については長期的なデータの品質が向上した。そこで、松代の伸縮計についても木村・他(2015)による降水補正手法を適用した場合に長期的なデータの品質が向上するかどうかについての調査を行うこととした。
西前・涌井(1996)は試行錯誤によってパラメータを推定していたが、本調査は現在の恵まれた計算機資源を生かしてSCE-UA法(Duan,1994)によって計算機で力任せに推定したことが大きな違いである。西前・涌井(1996)と本調査は形状が異なるものの3段のタンクモデルを用いた点では共通であり、本調査で用いたタンクの形状で西前・涌井(1996)を表すことも可能である。本調査で2011年から2014年の4年間の伸縮計の観測データと露場の雨量計の降水量データを用いて推定したパラメータのうち、各タンクの水位を伸縮(ひずみ)に換算する補正係数に着目すると、伸縮計の南北成分については1段目のタンクの補正係数が2段目や3段目に比べて1桁小さく、2段目と3段目のタンクの補正係数の符号が反転して推定された。これは、西前・涌井(1996)によって試行錯誤で決めたパラメータ(1段目は無視、2段目は-0.5e-6strain/mm、3段目は+0.17strain/mm)とも整合する。
その他、伸縮計の南北成分だけでなく東西成分の降水補正の調査結果や、用いる降水量データ(坑道外の露場の雨量計、長野・聖高原・上田・菅平の各アメダス)を変えた場合の比較調査結果についても紹介する。