16:00 〜 16:15
[SSS33-09] K-net加速度記録を用いたフーリエ振幅スペクトルと気象庁計測震度の関係式の構築
キーワード:フーリエ振幅スペクトル、気象庁震度階級、K-NET
震度と最大加速度,最大速度や応答スペクトルなどの各種物理量との関係式は,いままで多くの研究がなされている(境ほか,2004,藤本・翠川,2010など).しかしながら,フーリエ振幅スペクトルから直接,震度に変換する関係式の構築はこれまで行われてこなかった.フーリエ振幅スペクトルを指標とした地震動を行なう場合もあり、この関係を構築しておくことは重要と考えられる。そこで本研究では,K-net加速度記録を用いてフーリエ振幅スペクトルと震度の関係式を構築した.
用いたデータは,観測開始から2011年4月までのNS成分の約178,728のK-NET加速度記録である.加速度フーリエ振幅FS(f)はf=1~10Hzの1Hz刻みで各周期の±0.5Hzの間を幾何平均した値とした.震度Iとフーリエ振幅スペクトルFS(f)の回帰式は次のように与えた.
I = Σ[A(f)*logFS(f)] + B
ここで,A(f)ならびにBは未知のモデルパラメータで,fは1~10Hzの1Hzごとの周期である.未知パラメータは最小二乗法を用いてA(f)とBを求めた.ただし,最小二乗法を用いる場合,小さな震度のデータが大きな震度に対して圧倒的に多いという問題がある.そこで今回は,震度の度数分布n(I)に対して1/ n(I)の重み付けをした最小二乗法も実施した.その際,度数分布n(I)は,宇津「地震活動総説」がまとめた諸研究の値を参考に,log n(I) = a – b・I においてb=0.5とした.
以上から,FS(f)と震度Iの関係式が得られた.2011年東北地方太平洋沖地震について、加速度フーリエ振幅から関係式を用いて計算した震度Icalと,波形から気象庁計測震度の定義に基づき直接求めた震度Iobsを比較したところ、ほぼ、再現できることが確認できた。また,今回用いた全観測記録を用いて、重み付け最小二乗法を用いた場合と重み付けをしない場合を比較したところ、高震度では予測結果が良くなっていることが確認できた(図1).なお,I cal とI obs の関係を見ると,それらから直線回帰で得られる式は傾きがほぼ1となり,I cal とI obsの関係を正しく表していると考えられる.しかしながら,分布形状は何らかの偏りが存在する可能性を示唆しており,今後検討が必要である.
計器観測時代以前の歴史地震に対しては,史料中に記述された被害から推定される震度分布が,その震源域を制約するうえで重要な指標となる.震度データは異常震域現象が現れるような広域震度分布まで計算できることが望ましく,そのためには三次元減衰構造を考慮した地震動予測(中村ほか,2009,2015など)を行う必要がある.この方法ではフーリエ振幅スペクトルが求められる.今回構築した関係式によって,直接フーリエ振幅スペクトルを震度に換算することが可能になり,歴史地震の震度分布との比較が容易になると考えられる.その他,三次元減衰構造を求める研究として、t*=t/Q(t:走時)を用いる場合も多くある(パナヨトプロスほか,2015など)が,震度とフーリエ振幅スペクトルの関係式を用いることにより,t*から得られるスペクトルにより震度予測を行うことができるという利点も考えられる.
謝辞:本研究の一部は文部科学省による受託研究「都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト」の一環として実施いたしました.記して感謝します.
用いたデータは,観測開始から2011年4月までのNS成分の約178,728のK-NET加速度記録である.加速度フーリエ振幅FS(f)はf=1~10Hzの1Hz刻みで各周期の±0.5Hzの間を幾何平均した値とした.震度Iとフーリエ振幅スペクトルFS(f)の回帰式は次のように与えた.
I = Σ[A(f)*logFS(f)] + B
ここで,A(f)ならびにBは未知のモデルパラメータで,fは1~10Hzの1Hzごとの周期である.未知パラメータは最小二乗法を用いてA(f)とBを求めた.ただし,最小二乗法を用いる場合,小さな震度のデータが大きな震度に対して圧倒的に多いという問題がある.そこで今回は,震度の度数分布n(I)に対して1/ n(I)の重み付けをした最小二乗法も実施した.その際,度数分布n(I)は,宇津「地震活動総説」がまとめた諸研究の値を参考に,log n(I) = a – b・I においてb=0.5とした.
以上から,FS(f)と震度Iの関係式が得られた.2011年東北地方太平洋沖地震について、加速度フーリエ振幅から関係式を用いて計算した震度Icalと,波形から気象庁計測震度の定義に基づき直接求めた震度Iobsを比較したところ、ほぼ、再現できることが確認できた。また,今回用いた全観測記録を用いて、重み付け最小二乗法を用いた場合と重み付けをしない場合を比較したところ、高震度では予測結果が良くなっていることが確認できた(図1).なお,I cal とI obs の関係を見ると,それらから直線回帰で得られる式は傾きがほぼ1となり,I cal とI obsの関係を正しく表していると考えられる.しかしながら,分布形状は何らかの偏りが存在する可能性を示唆しており,今後検討が必要である.
計器観測時代以前の歴史地震に対しては,史料中に記述された被害から推定される震度分布が,その震源域を制約するうえで重要な指標となる.震度データは異常震域現象が現れるような広域震度分布まで計算できることが望ましく,そのためには三次元減衰構造を考慮した地震動予測(中村ほか,2009,2015など)を行う必要がある.この方法ではフーリエ振幅スペクトルが求められる.今回構築した関係式によって,直接フーリエ振幅スペクトルを震度に換算することが可能になり,歴史地震の震度分布との比較が容易になると考えられる.その他,三次元減衰構造を求める研究として、t*=t/Q(t:走時)を用いる場合も多くある(パナヨトプロスほか,2015など)が,震度とフーリエ振幅スペクトルの関係式を用いることにより,t*から得られるスペクトルにより震度予測を行うことができるという利点も考えられる.
謝辞:本研究の一部は文部科学省による受託研究「都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト」の一環として実施いたしました.記して感謝します.