17:15 〜 18:30
[STT51-P04] 下北半島周辺における微小地震観測網の構築(その4)
キーワード:地震観測網、下北半島、地震検知
日本国内では,防災科学技術研究所による高感度地震観測網Hi-netをはじめとする稠密な微小地震観測網が整備されている.しかしながら,東北北部から北海道南西部にかけての地域では,他地域に比べて観測点密度が低く,地震活動などを他地域と同様の精度で捉えることは難しい状態であった.そこで,下北半島,津軽半島,北海道南西部に高密度の微小地震観測網(AS-net)を整備し,地震活動の常時モニタリングを開始した(関根・他(2014)など).本発表では,AS-netの観測データを用いた手動震源決定結果と,観測データを用いた解析の結果について報告する.
震源決定は青森県から北海道南西部にかけての領域に限って行う.震源決定にはAS-netの36観測点の他,気象庁,防災科学技術研究所,弘前大学,東北大学,北海道大学,青森県による観測点を含め,周辺の134観測点のデータを使用する.AS-netが全点運用開始した後の2014年9月から2015年12月末までの16ヶ月間について,新堀内システムを用いた自動震源決定を行ったところ,領域内で5726イベントが決定された.これら自動震源について,手動による精査と震源再決定を行ったところ,2880個の自然地震が決定された.自動震源については,4割強が自然地震,約4割が発破等の人工地震,残りは誤検知であった.また,自然地震2880個のうち1割弱は自動震源で検知されず,気象庁の一元化震源に基づいて手動で決定した.なお,同期間,同領域の一元化震源カタログには1404イベントが記載されており,イベント数でみるとAS-netによって検知能力が2倍以上に向上したといえる.特に,AS-net整備領域の中心にあたる下北半島南部の脇野沢周辺では,手動で決定されたイベント数は一元化カタログの約5倍となった.
震源決定のための観測点補正値を得るため,領域内のプレート間・プレート内で起こった深い地震(H>60 km)のうち,規模の比較的大きなものについて,PおよびS相の手動検測値と理論走時の差(O-C)の平均値を計算した.観測点ごとのO-C平均値は地域的に偏って分布しており,P相とS相で同様の傾向を示した.また,各観測点のバックグラウンドノイズ記録から計算したノイズレベルの低い点ほどO-C平均値が小さく,負になる場合が多い,という関係がみられた.ノイズレベルの低い点は基盤が浅く,サイト特性による増幅が小さいことを示していると考えられる.また,サイト特性による地震波の到達の遅延幅が小さい観測点では,O-C平均値が小さくなることが予想される.以上より,O-C平均値は各観測点のサイト特性を反映していることが裏付けられる.これにより,得られたO-C平均値に基づいて観測点補正値を決定することの妥当性が示される.
参考
関根 秀太郎・澤田 義博・笠原 敬司・佐々木 俊二・田澤 芳博・矢島 浩,下北半島周辺における微小地震観測網の構築,日本地球惑星科学連合2014年大会,横浜,STT57-P09,2014年4月.
謝辞
本研究では,気象庁,防災科研,北海道大学,東北大学,弘前大学,青森県により観測・提供された地震観測データを使用しています.また,気象庁による一元化地震カタログのデータを使用しています.記して感謝いたします.
震源決定は青森県から北海道南西部にかけての領域に限って行う.震源決定にはAS-netの36観測点の他,気象庁,防災科学技術研究所,弘前大学,東北大学,北海道大学,青森県による観測点を含め,周辺の134観測点のデータを使用する.AS-netが全点運用開始した後の2014年9月から2015年12月末までの16ヶ月間について,新堀内システムを用いた自動震源決定を行ったところ,領域内で5726イベントが決定された.これら自動震源について,手動による精査と震源再決定を行ったところ,2880個の自然地震が決定された.自動震源については,4割強が自然地震,約4割が発破等の人工地震,残りは誤検知であった.また,自然地震2880個のうち1割弱は自動震源で検知されず,気象庁の一元化震源に基づいて手動で決定した.なお,同期間,同領域の一元化震源カタログには1404イベントが記載されており,イベント数でみるとAS-netによって検知能力が2倍以上に向上したといえる.特に,AS-net整備領域の中心にあたる下北半島南部の脇野沢周辺では,手動で決定されたイベント数は一元化カタログの約5倍となった.
震源決定のための観測点補正値を得るため,領域内のプレート間・プレート内で起こった深い地震(H>60 km)のうち,規模の比較的大きなものについて,PおよびS相の手動検測値と理論走時の差(O-C)の平均値を計算した.観測点ごとのO-C平均値は地域的に偏って分布しており,P相とS相で同様の傾向を示した.また,各観測点のバックグラウンドノイズ記録から計算したノイズレベルの低い点ほどO-C平均値が小さく,負になる場合が多い,という関係がみられた.ノイズレベルの低い点は基盤が浅く,サイト特性による増幅が小さいことを示していると考えられる.また,サイト特性による地震波の到達の遅延幅が小さい観測点では,O-C平均値が小さくなることが予想される.以上より,O-C平均値は各観測点のサイト特性を反映していることが裏付けられる.これにより,得られたO-C平均値に基づいて観測点補正値を決定することの妥当性が示される.
参考
関根 秀太郎・澤田 義博・笠原 敬司・佐々木 俊二・田澤 芳博・矢島 浩,下北半島周辺における微小地震観測網の構築,日本地球惑星科学連合2014年大会,横浜,STT57-P09,2014年4月.
謝辞
本研究では,気象庁,防災科研,北海道大学,東北大学,弘前大学,青森県により観測・提供された地震観測データを使用しています.また,気象庁による一元化地震カタログのデータを使用しています.記して感謝いたします.