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[SVC45-06] 柱状節理に囲まれた花崗斑岩の物性構造
キーワード:柱状節理、熱水変質、内部構造
紀伊半島南東部の中新世の熊野酸性火成岩類の花崗斑岩には,高角の柱状節理が1-6 m間隔で発達し,緑泥石や黄鉄鉱などの変質鉱物が多く含まれる.花崗斑岩山地の高標高部では,緩斜面と厚い風化帯が広がっており,風化帯中に直径1 mを超える真球に近い岩塊が形成されている.これらの岩塊の表面には,殻状の層(皮殻)が付着している.この現象は球状風化と呼ばれる火成岩の代表的な風化現象であり,従来,節理の発達した均質な岩盤に生じると説明されてきた.しかしながら,球状風化する岩石の初生的な物性構造は調べられていなかった.我々は柱状節理軸に直交する面の反発硬さを調べ,柱状節理からの距離に応じて試料採取し,試料の密度,間隙率,P波速度とその異方性,X線CT値などの物性値を測定し,X線回折分析と薄片観察から鉱物組成を調べた.その結果,石柱の横断面には,石柱の中心から節理までに同心円状の構造があることが分かった.花崗斑岩は,石柱の中心から半径約十㎝内は他の部分よりも間隙率が1 %大きく,節理近傍はミリメートルスケールの大きな空孔が数多いという間隙の空間分布を持つ.節理軸方向の反発硬さとP波速度はそれと調和的に変化し,石柱の中心部分で小さく,その周囲で最も大きくなり,節理近傍で再び小さくなる.また,柱状節理軸方向のP波速度は石柱の直径・円周方向の速度よりも大きく,円周方向の速度は節理軸方向と似た変化であるが,直径方向の速度は中心ほど大きくなるという異方性を示す.これは直径方向(柱状節理に平行)の弱面が石柱の中心ほど少なく,軸方向と円周方向の弱面が中間部分で少ないことを示唆する.皮殻の形成は岩石の力学的強度とその異方性の影響を受けると考えられ,その間隙・弱面の分布が岩塊の球形化を促している可能性がある.XRD分析によれば,節理近傍は内部よりもスメクタイトと緑泥石との比が大きい.これは節理近傍が低温熱水による変質を強く受けたことを示唆する.しかしながら,石柱の中心部分とその周囲との間には,鉱物の明瞭な違いが認められない.花崗斑岩の石柱の物性構造は,柱状節理の形成が影響した脱ガスと変質の過程によるものと推測される.