日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC46] 火山防災の基礎と応用

2016年5月23日(月) 09:00 〜 10:30 201A (2F)

コンビーナ:*吉本 充宏(山梨県富士山科学研究所)、萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)、宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、佐々木 寿(アジア航測株式会社)、座長:吉本 充宏(山梨県富士山科学研究所)、萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)、常松 佳恵(山梨県富士山科学研究所)

09:00 〜 09:15

[SVC46-01] 湖水の音速と濁度測定による火口湖モニタリング

*佐伯 和人1丈六 啓介1金子 克哉2大場 武3 (1.大阪大学大学院理学研究科、2.京都大学大学院人間・環境学研究科、3.東海大学理学部)

キーワード:火口湖、二酸化炭素、濁度

火口湖は一般に火山熱水系の一部であり、その組成や温度は火山の活動状況を反映するため、活動的な火口湖のモニタリングは熱水系の理解や火山防災の面から重要である。
我々はカメルーンニオス湖、マヌーン湖の研究を通じて、水中音速を用いて溶存二酸化炭素濃度を推測する新しい便利方法を開発した。また、水中カメラの画像による濁度の判定から、採取湖水の化学分析では気づかれなかった、懸濁粒子の濃い層構造を発見した。現在、これらの新しい方法を活用した火口湖観測計画を企画中である。本発表では、これらの二つの方法の有効性と将来計画について述べる。
CO計測に関しては、我々は、湖水に溶け込んだ無極性分子であるCO2によっても水の音速変化があると期待し、室内実験でこれを証明した [1]。我々は、湖水と同じ温度圧力の純水からの湖水の音速の変化量∆vに着目し、カメルーンのニオス湖・マヌン湖で、音速センサー付き水中データロガーにより湖水の音速深度分布を測定した。結果、∆vと溶存全 CO 濃度(主としてHCO3-とCO2(aq)からなる)が高い相関関係であることを確認した [2]。
また、我々はニオス湖とマヌン湖で水中カメラを使って、水面から湖底までの濁度の分布を測定した。結果、ニオス湖において、二酸化炭素の濃度が水深が深くなるとともに急激に上昇する化学遷移層で、遷移層内の上部のみ濁度が上昇し、それより深いところでは濁度が急減少することを発見した。採取水の化学分析だけではわからない、析出粒子による鉄イオンの移動モデルを濁度によって考えることができるようになった。
これらの手法を使って、日本の火口湖をモニターする計画を考えている。観測対象は、平均気温の上昇によって、湖水の対流が止まっている可能性が高く、また、周辺の熱活動が活発であるため火山ガス成分が湖水に蓄積され始めている可能性が高い火口湖:池田湖(鹿児島県 水深233 m)鰻池(鹿児島県 水深57 m)が挙げられる。また、ここ5000 年以内に地域で噴火活動があり、湖底の水になんらかの活動兆候が始まっている可能性がある火口湖である十和田湖(青森県・秋田県 水深327 m)、摩周湖(北海道 水深211 m)、洞爺湖(北海道 水深180 m)、倶多楽湖(北海道 水深148 m)なども候補となる。
参考文献
[1]Sanemasa et al.(2015) Geochemistry and Geophysics of Active Volcanic Lakes
[2]Saiki et al.(2016) Geochemistry and Geophysics of Active Volcanic Lakes