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[SVC47-01] 精密水準測量で検出された霧島・硫黄山周辺の地盤上下変動 (2012年〜2016年)
キーワード:霧島火山、硫黄山、えびの高原、精密水準測量、火山性地殻変動
はじめに
2011年の九州南部にある霧島・新燃岳のマグマ噴火以来,霧島連山の火山活動は静穏な状況が続いていたが,2013年12月以降新燃岳から北西に約5km離れたえびの高原(硫黄山)周辺で火山性地震の発生が多くなり,2014年8月には硫黄山付近を震源とする火山性微動が発生し,同時に傾斜変動も観測された.さらに2015年12月からは硫黄山山頂部に地熱地帯が出現し,火山性ガスの噴出も始まった.
硫黄山は16〜17世紀にえびの高原東部に噴出したデイサイト質の溶岩からなる溶岩流の噴出孔で,山頂部では1962年まで硫黄の採掘も行われていたが,近年は急速にその火山活動が衰えていた.
霧島火山地域においては,1968 年に水準路線が東京大学地震研究所により設置され,その後何度か測定が行われてきており,硫黄山の収縮沈降現象が観測されている(小山他,1991,火山学会B06). 小澤他(2003,火山第48巻)は干渉SARを用いて,硫黄山の局所的な沈降を報告している.
我々は2013年末からのえびの高原付近の火山活動の活発化は新たなマグマ活動であると考え,このマグマ貫入に伴う地殻変動を詳細に把握するために,えびの高原付近の水準測量を実施した.
データと方法
2011年の新燃岳の噴火直後から,北海道大学を中心として,えびの市〜えびの高原〜霧島新湯温泉の約25kmの区間で3回の水準測量が実施され,2012年3月に最後の測定が行われていた(森他,2012,JpGU SVC50 P31) .我々は2015年6月にこの路線に含まれるえびの高原付近〜霧島新湯三叉路間の約8km区間の再測定を実施するとともに,硫黄山方向に約2.5kmの路線を新設した.また,地表の噴気活動が確認された直後の2015年12月19〜22日にもえびの高原付近の上下変動の再測量を実施した.測量方法は各水準点間の往復測量で,その往復差は一等水準測量の許容誤差を満たすようにした.2015年6月の測量における1km当たりの平均自乗誤差は±0.38mm/kmであり,2015年12月の測量では±0.41mm/kmと高精度であった.
測量結果
水準路線西縁の水準点BM1120を基準とし,各水準点における2015年6月測定値と12月測定値の差を図に示す.隆起量は,えびの三叉路(BM3015)から硫黄山に近づくにつれて大きくなり, 硫黄山西登山口(BM3050)で最大10.4 mmの隆起が記録されたあと,峠を越えると隆起量が徐々に小さくなり,路線北東端のBM3130でほぼ0mmに戻っている.
MaGCAP-V(気象研究所)を使用し,標高補正した茂木モデルをグリッドサーチにより求めた.その結果,3.1×104m3の増圧源が硫黄山噴気領域の東150m,標高600mの地点に推定された.このモデルから計算される上下変動量は,防災科学技術研究所が干渉SAR解析により求めた地殻変動量と調和的である.また圧力源の深さは,Aizawa et al. (2013)が推定している低比抵抗層(難透水層)の下面に相当する.
2011年の九州南部にある霧島・新燃岳のマグマ噴火以来,霧島連山の火山活動は静穏な状況が続いていたが,2013年12月以降新燃岳から北西に約5km離れたえびの高原(硫黄山)周辺で火山性地震の発生が多くなり,2014年8月には硫黄山付近を震源とする火山性微動が発生し,同時に傾斜変動も観測された.さらに2015年12月からは硫黄山山頂部に地熱地帯が出現し,火山性ガスの噴出も始まった.
硫黄山は16〜17世紀にえびの高原東部に噴出したデイサイト質の溶岩からなる溶岩流の噴出孔で,山頂部では1962年まで硫黄の採掘も行われていたが,近年は急速にその火山活動が衰えていた.
霧島火山地域においては,1968 年に水準路線が東京大学地震研究所により設置され,その後何度か測定が行われてきており,硫黄山の収縮沈降現象が観測されている(小山他,1991,火山学会B06). 小澤他(2003,火山第48巻)は干渉SARを用いて,硫黄山の局所的な沈降を報告している.
我々は2013年末からのえびの高原付近の火山活動の活発化は新たなマグマ活動であると考え,このマグマ貫入に伴う地殻変動を詳細に把握するために,えびの高原付近の水準測量を実施した.
データと方法
2011年の新燃岳の噴火直後から,北海道大学を中心として,えびの市〜えびの高原〜霧島新湯温泉の約25kmの区間で3回の水準測量が実施され,2012年3月に最後の測定が行われていた(森他,2012,JpGU SVC50 P31) .我々は2015年6月にこの路線に含まれるえびの高原付近〜霧島新湯三叉路間の約8km区間の再測定を実施するとともに,硫黄山方向に約2.5kmの路線を新設した.また,地表の噴気活動が確認された直後の2015年12月19〜22日にもえびの高原付近の上下変動の再測量を実施した.測量方法は各水準点間の往復測量で,その往復差は一等水準測量の許容誤差を満たすようにした.2015年6月の測量における1km当たりの平均自乗誤差は±0.38mm/kmであり,2015年12月の測量では±0.41mm/kmと高精度であった.
測量結果
水準路線西縁の水準点BM1120を基準とし,各水準点における2015年6月測定値と12月測定値の差を図に示す.隆起量は,えびの三叉路(BM3015)から硫黄山に近づくにつれて大きくなり, 硫黄山西登山口(BM3050)で最大10.4 mmの隆起が記録されたあと,峠を越えると隆起量が徐々に小さくなり,路線北東端のBM3130でほぼ0mmに戻っている.
MaGCAP-V(気象研究所)を使用し,標高補正した茂木モデルをグリッドサーチにより求めた.その結果,3.1×104m3の増圧源が硫黄山噴気領域の東150m,標高600mの地点に推定された.このモデルから計算される上下変動量は,防災科学技術研究所が干渉SAR解析により求めた地殻変動量と調和的である.また圧力源の深さは,Aizawa et al. (2013)が推定している低比抵抗層(難透水層)の下面に相当する.