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[SVC47-P01] 境界要素法による十勝岳の局所的地殻変動の解析
キーワード:十勝岳、地殻変動、境界要素法
近年,活動的な火山の火口近傍で小規模な地殻変動が捉えられるようになってきた.これらの地殻変動データは地下浅部のマグマなどの活動によるものとして,火山噴火過程を理解する上で重要であると考えられる.これまでにも,このような山体の膨張などを示す地殻変動データの解析は行われてきたものの,半無限均質媒質を仮定したものが多く行われてきた.しかし,山頂や火口近傍の地殻変動データは,圧力源が浅いため,急峻な火山体形状の効果を強く受けると考えられる.そこで,本研究は3次元境界要素法によって,山体変形を計算し,北海道十勝岳で2015年に衛星SARによって観測された局所的な地殻変動データ(宮城・他,2016)と比較したので報告する.
境界要素法は任意の形状の圧力源による地殻変動を山体地形の効果を考慮して数値計算により求めることができる.本研究では国土地理院の10 mメッシュの数値標高データ(DEM)を使用して,十勝岳の山頂周辺の地形を表現した.圧力源として,マグマ溜りやシルを想定した楕円体を考え,3軸の長さや軸回りの傾きを任意に与えることができるようにした.これらの地形および圧力源を6952個のメッシュで表した.圧力源に一定圧力を加えたときの地表の変形を数値計算によって求めた.
十勝岳では2015年5月28日と同年7月23日にALOS-2/PALSAR-2 (だいち2号)によって観測された衛星SARデータの差分干渉SAR解析(DInSAR解析)によって62-2火口のすぐ西側,前十勝を中心とした局所的な地殻変動が観測された.このときの地殻変動は最大で約8 cm衛星方向に近づくもので,山体の隆起を含む膨張を示していると考えられる(宮城・他,2016).このデータを説明するため,数値計算によって求めた地殻変動から,衛星SARデータの感度方向の成分を抽出し,観測データと比較することで圧力源のパラメータを求めた.楕円体圧力源の位置および形状を任意に設定し,観測データの変動量の分布を説明できるパラメータを求めた.その結果,前十勝よりやや西側で前十勝からの深さ300 m (標高約1450 m)の位置にシル形状の圧力源を置き,約3,000 m3の体積増加量を与えることで観測された地殻変動量をおおむね説明できることが分かった.
今後,GNSS観測などで得られる時系列データと組み合わせ考察することで,マグマ蓄積などの物理過程に制約を与えることが期待される.
境界要素法は任意の形状の圧力源による地殻変動を山体地形の効果を考慮して数値計算により求めることができる.本研究では国土地理院の10 mメッシュの数値標高データ(DEM)を使用して,十勝岳の山頂周辺の地形を表現した.圧力源として,マグマ溜りやシルを想定した楕円体を考え,3軸の長さや軸回りの傾きを任意に与えることができるようにした.これらの地形および圧力源を6952個のメッシュで表した.圧力源に一定圧力を加えたときの地表の変形を数値計算によって求めた.
十勝岳では2015年5月28日と同年7月23日にALOS-2/PALSAR-2 (だいち2号)によって観測された衛星SARデータの差分干渉SAR解析(DInSAR解析)によって62-2火口のすぐ西側,前十勝を中心とした局所的な地殻変動が観測された.このときの地殻変動は最大で約8 cm衛星方向に近づくもので,山体の隆起を含む膨張を示していると考えられる(宮城・他,2016).このデータを説明するため,数値計算によって求めた地殻変動から,衛星SARデータの感度方向の成分を抽出し,観測データと比較することで圧力源のパラメータを求めた.楕円体圧力源の位置および形状を任意に設定し,観測データの変動量の分布を説明できるパラメータを求めた.その結果,前十勝よりやや西側で前十勝からの深さ300 m (標高約1450 m)の位置にシル形状の圧力源を置き,約3,000 m3の体積増加量を与えることで観測された地殻変動量をおおむね説明できることが分かった.
今後,GNSS観測などで得られる時系列データと組み合わせ考察することで,マグマ蓄積などの物理過程に制約を与えることが期待される.