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[SVC47-P17] 箱根山大涌谷2015年6月30日噴出の火山灰およびその水溶性付着成分
キーワード:箱根山、水蒸気爆発、火山灰、熱水変質鉱物、水溶性付着成分
【はじめに】箱根山大涌谷では2015年4月26日から火山性地震の増加が観測され, 地震活動は6月初旬には一旦低下したが6月29日には再び活発化してごく小規模な噴火が発生し, 同日から翌30日にかけて火山灰が降下した. この箱根山の火山活動の一連の経過や降下した火山灰についてはすでに複数の報告があるが(例えば, 神奈川県温泉地学研究所, 2015; 濱崎ほか, 2015), 著者らは同年6月30日に大涌谷で回収した火山灰の構成鉱物, 化学組成および水溶性付着成分の分析を実施したのでその結果を報告する.
【方法】2015年6月30日午前9時30分~10時30分にかけて, 大涌谷噴気地帯の西側約300mの地点の駐車場で自動車のフロントガラスに付着した火山灰を回収した. 火山灰試料の構成鉱物種同定には粉末X線回折法を用い, 化学組成の分析には酸分解法による湿式分析と蛍光X線分析法を併用した. 水溶性付着成分は超純水に溶出させた後イオンクロマトグラフ法で分析した.
【結果および考察】X線粉末回折の結果火山灰試料からはスメクタイト, 黄鉄鉱, トリディマイト, クリストバライト, 石膏, 硬石膏, 斜長石, 石英が検出され, 顕微鏡観察では立方体の黄鉄鉱結晶が認められた. これらの鉱物の構成は比較的低温の変質作用で生じたと考えられ, 火山灰が熱水変質帯の浅部に由来することを示唆した. 火山灰の化学組成は大涌谷周辺の安山岩質溶岩(高橋ほか, 2006)よりも相対的にNa, K, Ca, Mgが顕著に少ないなど, 火山灰が熱水変質帯に由来することを支持した. また, 火山灰1kg当たりのCl-とSO42-の付着量はそれぞれ12.2gおよび6.6gであり, 両成分のモル比(Cl/S比)は5であった. 両成分の付着量およびCl/S比は本邦各地の火山灰の付着成分(例えば, 松尾ほか, 1977; 近堂ほか, 1979; 宮地・尾口, 2004)の中でも大きい部類であり, これらの成分は地下の熱水成分に由来する可能性が高いと判断された. 大涌谷周辺の地表にはCl/S比が小さい温泉水が湧出する一方, 深度29~36mではCl/S比が2程度(綿貫, 1966), 深度およそ500mではCl/S比が7~18程度の温泉水が賦存している(Oki and Hirano, 1974). これらのことを考慮すると2015年6月30日に噴出した火山灰は大涌谷の地下500m程度以浅に発達する熱水系に由来すると考えられた.
【方法】2015年6月30日午前9時30分~10時30分にかけて, 大涌谷噴気地帯の西側約300mの地点の駐車場で自動車のフロントガラスに付着した火山灰を回収した. 火山灰試料の構成鉱物種同定には粉末X線回折法を用い, 化学組成の分析には酸分解法による湿式分析と蛍光X線分析法を併用した. 水溶性付着成分は超純水に溶出させた後イオンクロマトグラフ法で分析した.
【結果および考察】X線粉末回折の結果火山灰試料からはスメクタイト, 黄鉄鉱, トリディマイト, クリストバライト, 石膏, 硬石膏, 斜長石, 石英が検出され, 顕微鏡観察では立方体の黄鉄鉱結晶が認められた. これらの鉱物の構成は比較的低温の変質作用で生じたと考えられ, 火山灰が熱水変質帯の浅部に由来することを示唆した. 火山灰の化学組成は大涌谷周辺の安山岩質溶岩(高橋ほか, 2006)よりも相対的にNa, K, Ca, Mgが顕著に少ないなど, 火山灰が熱水変質帯に由来することを支持した. また, 火山灰1kg当たりのCl-とSO42-の付着量はそれぞれ12.2gおよび6.6gであり, 両成分のモル比(Cl/S比)は5であった. 両成分の付着量およびCl/S比は本邦各地の火山灰の付着成分(例えば, 松尾ほか, 1977; 近堂ほか, 1979; 宮地・尾口, 2004)の中でも大きい部類であり, これらの成分は地下の熱水成分に由来する可能性が高いと判断された. 大涌谷周辺の地表にはCl/S比が小さい温泉水が湧出する一方, 深度29~36mではCl/S比が2程度(綿貫, 1966), 深度およそ500mではCl/S比が7~18程度の温泉水が賦存している(Oki and Hirano, 1974). これらのことを考慮すると2015年6月30日に噴出した火山灰は大涌谷の地下500m程度以浅に発達する熱水系に由来すると考えられた.