日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] 活動的火山

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)、前田 裕太(名古屋大学)

17:15 〜 18:30

[SVC47-P27] 阿蘇火山における連続微動の発生位置と発生条件の時間変化

*市村 美沙1横尾 亮彦1鍵山 恒臣1吉川 慎1井上 寛之1 (1.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:火山性微動、阿蘇火山

阿蘇火山では、21年振りのマグマ噴火が2014年11月から始まった。この噴火活動の端緒は、2014年1月2日の新火孔の開口、そして1月13日以降に発生したごく小規模な複数回の噴火であると考えられる。さらに、この一連の現象に前駆して、2013年11月から翌年1月にかけて連続微動振幅の増減とピーク周波数の変化も認められた。火口から南約1 kmの位置にある京都大学火山研究センターの観測点(砂千里)における5-10 Hz周波数帯の振幅は、12月22日まで緩やかに増加し(ステージⅠ)、その後12月30日まで急激に増加した(ステージⅡ)。12月30日の振幅急減の後は、1月2日まで比較的大きな振幅値をとっていた(ステージⅢ)。1月2〜3日に再び振幅が急減し、1月13日までステージⅠと同様の振幅増加が見られた(ステージⅣ)。1月13日から1月20日にかけて振幅は非常に小さい値であった(ステージⅤ)。また、ステージⅠのピーク周波数は2 Hzから3 Hzへと増加し、ステージⅡまで一定であった。ステージⅢに2 Hzまで減少し、ステージⅣで3 Hz、ステージⅤで1.8 Hzを示した。
火山性微動は火山性流体の移動や相変化によって発生すると考えられている。そのため、火山性微動の発生位置・発生条件を解明することで、火山下における流体挙動を把握できると期待される。本研究では、顕著な振幅増減とピーク周波数の変化が見られた2013年12月からの2ヶ月間における連続微動の発生位置を推定し、各ステージにおける微動発生条件を検討した。
火口周辺5観測点における地震振幅比(鉛直成分)を用いたグリッドサーチを行ったところ、連続微動の発生位置は火口底表面から深さ700 mまでの範囲に分布し、また時間とともに移動していた。ステージⅠでは火口下深さ260 m、ステージⅡおよびⅢでは180〜190 mであった微動源の深さが、ステージⅣでは350 mに求められた。ステージⅤでは火口底表面から深さ200 mまでの領域に微動源が分布した。推定された微動源の分布は、阿蘇火山の火口下に存在すると考えられているクラック状火道の上端部(深さ300 m;Yamamoto et al., 1999)から火口底を結ぶ領域であり、深さ400 m以浅の低比抵抗領域(Kanda et al., 2008)を含む。このことから、多孔質媒質で構成された、高温流体の流動経路を捉えたものと考えらえる。
Julian (1994)は、連続微動の励起源として、流体がチャネル中を通過することによるチャネル壁の振動を提唱した。このモデルによれば、壁の振動振幅とその周波数はチャネル厚さとチャネル出口の流体圧力に依存する。例えば、チャネル厚さが増加すると振幅は増加し周波数は減少する。チャネル厚さの増加は流体通路の拡大と言い換えることもでき、これは通過流体の供給量増加(Aki et al., 1977)によって引き起こされると考えられる。また、出口圧力が増加すると振幅・周波数のいずれも増加するという関係も認められる。出口圧力の増減は流体通路の閉塞/開放で説明することが可能である。
以上のことから、本研究では、連続微動の発生位置および振幅・周波数の規定する条件の時間変化に対する定性的な説明を以下のように考えた。ステージⅠでは微動振幅とピーク周波数がともに増加を示した。この変化は、流体供給量の増加によって流体経路内の圧力が増加し、クラック状火道上端とそれよりも浅部の流体経路の接続部分が拡大膨張したことを示している。ステージⅡでは火口表面に至るまでの流体経路全体へ膨張領域が拡大し、振幅が急増した。このステージの終わりには火口底で火孔が開口したことにより、経路上端の圧力が減少し振幅と周波数がともに急減した(12月30日)。ステージⅢは振幅が大きいままであったことから、流体経路をさらに拡大膨張させる過程にあったと位置付けられるが、ステージの終わりになると流体供給量の減少によって振幅が急減した。ステージⅣでは、ステージⅠと同様に流体供給量が再び増加することで経路内圧力が増加し、クラック状火道上端における流体経路の膨張があった。先のステージⅠ〜Ⅲで流体経路がある程度拡張されているため、このときの膨張過程の規模は小さく振幅増加量も小さかった。このステージの最後(1月13日)には再び振幅と周波数の急減があり、経路上端の圧力が減少したことが示唆される。これは同日に発生したごく小規模な噴火によって、それまでの放出量を超えた流体量が放出されたためであろう。ステージⅤでは、振幅・周波数の特徴から考えて、連続微動と考えられるシグナルはほとんど認められず、雑微動を捉えていたと考えられる。ステージIVの噴火を最後に一連の活動は一旦終息したと思われる。