日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC48] 火山・火成活動と長期予測

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*及川 輝樹(国研)産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、長谷川 健(茨城大学理学部地球環境科学コース)、三浦 大助(一般財団法人 電力中央研究所 地球工学研究所 地圏科学領域)、石塚 吉浩(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、下司 信夫(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

17:15 〜 18:30

[SVC48-P18] 黒曜石の加熱実験:発泡温度と多孔体(パーライト)組織の分類

*和田 恵治1弦巻 峻哉1池谷内 諒1佐野 恭平2佐藤 鋭一3 (1.北海道教育大学旭川校地学教室、2.遠軽町白滝ジオパーク、3.神戸大学大学教育推進機構)

キーワード:黒曜石、パーライト、加熱実験、発泡温度、火山ガラス

黒曜石はほとんどガラスからなりガラス構造中にH2O成分を含む。高温で加熱するとH2O成分が発泡し,軟化した緻密な黒曜石ガラス中で気泡が膨張して内部が多孔質な軽量物質(パーライトと呼ばれる)ができる。筆者らはこれまで北海道産黒曜石を電気炉中で加熱して発泡させる実験を行ってきたが,電気炉の温度設定や加熱時間,発泡開始の定義が確立されていなかった。またパーライトの組織観察を十分に行っていなかった。今回,(1)各産地における黒曜石の発泡開始温度とパーライト形成温度の測定,(2)パーライトの組織観察による分類,(3)天然の多孔体試料との組織比較を行ったので報告する。
黒曜石11試料の発泡開始温度の測定においては,径2.5~4mmの黒曜石片10個を磁製皿に入れ,設定温度に昇温させた電気炉中で30分間保持した後に取り出して気泡の有無を実体顕微鏡下で確認して10個すべてが発泡した場合にその黒曜石試料の発泡開始温度(Tf)とした。パーライト形成温度についても同様の実験方法で計測し,10個すべてが完全に発泡してパーライトとなった温度をパーライト形成温度(Tp)とした。これらの加熱実験の結果,赤井川産Tf =780℃;Tp =830℃,奥尻産Tf =790℃;Tp =850℃,神津島産Tf =890℃;Tp =950℃,白滝産(IK露頭)Tf =900℃;Tp =1030℃,十勝三股産Tf =930℃;Tp =1060℃,置戸産(所山)Tf =990℃;Tp =1100℃,置戸産(北所山)Tf =1010℃;Tp =1090℃,白滝産(十勝石沢露頭)Tf =1030℃;Tp =1160℃,白滝産(球顆沢露頭)Tf =1060℃;Tp =1150℃,白滝産(西アトリエ)Tf =1070℃;Tp =1190℃,白滝産(あじさいの滝露頭)Tf =1070℃;Tp =1190℃であった。
パーライト組織の観察では各産地の黒曜石を1cmキューブ状にしたものをパーライトに作成した。気孔の大きさや形態・数密度から3つのタイプ(A~C)に分類した。Aタイプは気孔の大きさが約1mmであり,1つ1つが独立して球形をなす。表面・断面共に光沢がある。これらは発泡開始温度が990℃以上,及びパーライト形成温度が1060℃以上の6試料である。Bタイプは気孔の大きさが1.5mm〜5mmで1つ1つ独立している。気孔は球形〜不規則形で歪んだ形状を示す。表面は白灰色だが断面は光沢を示す。これらはTfが900℃〜930℃,Tpが1030℃〜1060℃の2試料(白滝IK露頭・十勝三股)である。Cタイプは気孔の大きさが<0.5mm未満で数密度も高い。球形をしているが,それぞれが連結している。表面・断面共に光沢はなく,脆くて砕けやすい。これらはTfが890℃以下, Tpが950℃以下の3試料(赤井川・奥尻・神津島)である。
パーライトの気孔組織は,加熱温度や加熱時間・黒曜石の水分量が深く関係し,ガラス構造に基づく物性(ガラス粘度など)も気泡の形状に関係するかもしれない。天然の多孔体(軽石や発泡した黒曜石)の気孔組織と比較すると,気孔の形状や数密度が天然多孔体と異なる。これは,(1)黒曜石がすでに脱ガスした試料で水分量が少ないこと,(2)天然多孔体がマグマ流体の動きの中で気泡が生成し移動や引き延ばしによってできた形状なのに比して,パーライトは静的な条件のもと,軟化した黒曜石壁を気泡が等方状に膨張したことに起因すると考えられる。