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[SVC48-P22] 確率論的火山危険度評価手法に関する近年の動向調査
キーワード:確率論的評価、長期的予測、短期的予測
火山噴火は一定の周期に基づいて決まった規模の噴火が発生するとは限らず、その噴火が生じるタイミングや規模を中・長期的に評価することは現状として困難である。しかしながら、人命の損失や環境改変、インフラ施設の破壊や産業途絶による経済損失など、火山噴火が社会へ与える影響は甚大であり、火山災害により被るリスクの低減は大きな課題となっている。国外では1960年代から火山災害によるリスクの低減の一環として、統計学に基づいた確率論的評価手法による火山活動予測に関する研究がなされてきた(Wickman, 1966a; Reyment, 1969; Decker, 1986; Connor and Hill, 1995; Marzocchi and Bebbington, 2012など)。日本国内では、2004年に富士山ハザードマップ検討委員会の中で、イベントツリーの概念が採用され、その後定量的に確率を評価する手法の開発、検討が進められてきているが、わが国の火山分野における確率論的評価手法は議論が十分といえる状況とはいえない。一方で、日本のように狭い国土に火山が集中し、かつ地質学的に噴火履歴が精査されている国は他に例がほとんどなく、確率的評価を行える素地はある程度整っているともいえる。そこで、本論では国内外における近年の火山活動に関する確率論的評価の研究事例を収集し、各手法の特徴や傾向を整理し報告することとした。国内で火山の確率論的手法を論じている事例は多くないが、イタリア、ニュージーランドなどの国々では、数多くの確率的評価に関する論文が執筆されていることが分かる。また、近年では、ベイズ推定を用いた手法や、点過程やカーネル密度推定を用いた手法で確率論評価が行われている一方、国や地域によって使用する手法に傾向が見られた。その上で、実際に今後国内の火山に対してハザード評価を実施するに当たり、これらの手法の適否や留意点、課題などを整理検討した。