17:15 〜 18:30
[SVC49-P09] 模擬Tube pumiceの生成を目指したポリウレタンフォームの粘弾性実験
キーワード:ポリウレタンフォーム、チューブパミス、レオロジー、X線CT撮影
カルデラ形成を伴う大規模噴火ではtube pumiceと呼ばれる噴出物が見つかっている。tube pumiceとは軽石の一種であり、一方向に伸びたチューブ状の気泡形状に特徴がある。このような気泡構造は、火道内でのマグマ上昇に伴う発泡、流動、破砕の過程で気泡の変形、または、連結によって形成されると考えられており、カルデラ噴火に至るプロセスの情報を記憶している可能性がある。本研究は、tube pumiceの成因を明らかにすることを最終目標としている。大橋他(2015, 火山学会)では、ポリフレタンフォームを減圧膨張させる予備実験を行った。ポリウレタンフォームには常温常圧条件下で、発泡、流動し、固化する特徴があり、火道内での軽石形成過程を模擬するのに適した物質だと考えられる。したがって、ポリウレタンフォームを用いてtube pumice 構造を再現することで、その成因に迫ることができると期待される。本発表ではそのための準備として、ポリウレタンフォームの成分調整とレオロジー試験を行い、X線CTスキャンを用いて気泡の内部構造を観察した結果を報告する。
実験材料:ポリウレタンフォームは、ポリイソシアネート液とポリオール液を、触媒や整泡剤と一緒に混合して発泡反応と樹脂化反応を同時に行わせて得られる、プラスチック発泡体である。整泡剤には気泡の合体を抑制し、均質で微細なセル構造を作る効果がある。セル構造を避けるため、本研究では(株)東邦化学工業の協力を得て整泡剤を含まないポリウレタンフォーム原液を調合し、これを使用した。この原液では気泡は楕円形になり、合体が促進されるため通常より大きい気泡が形成された。
実験手法:ポリウレタンフォームの膨張-固化過程における粘弾性時間変化を計測する。レオメータ(AR2000ex)を使用し、治具として内筒回転式の二重円筒を作製した。ポリウレタンフォームが固着した治具は再利用できないので、使い捨てできるようにする。外筒(直径φ=23mm)に透明なポリプロピレン製ビーカーを、内筒(φ=15mm)にアルミ製円柱を用いた。ポリウレタンフォームが膨張する様子をビデオカメラで撮影するとともに、赤外線放射温度計をビーカー横に設置し、ビーカー側面の温度測定を行った。レオメータで計測されたトルクと回転角、並びにビデオ映像から計測された内筒の浸液長、二重円筒のギャップから、歪と応力を計算した。さらに振動試験では、それらの振幅と位相から弾性を表わす貯蔵弾性率G’と粘性を表わす損失弾性率G’’を得た。レオメータ実験は以下の3つの方法で行った。まず周波数3.16Hz、歪み振幅0.1%の下、内筒を振動させ、G'とG"の時間変化を検討した。次に、一つの測定サイクル内で周波数を31.6Hz→3.16Hz→0.316Hzと変化させ、弾性率の周波数依存性を検討した。3つ目の実験では、材料の硬化途中、0.2 (s^-1)の歪み速度条件で歪み量を0から10まで変化させた。代表的なサンプルは(株)島津製作所のinspeXio SMX-225CTでX線CTスキャンを行い、気泡構造を観察した。
結果及び考察:計測開始初期は、試料は液体状態であり、G"がG'よりも大きい。材料のゲル化に伴いトルクが徐々に上昇し、約20分でG’とG’’は等しくなる。その後G’’は徐々に減少し、G’は一定値106.3 Paに落ち着く。粘度とは異なり、マグマの剛性率(G’の固体状態G’の極限値)は温度や組成によらずほぼ一定の値(約10 GPa)をとることが知られている(Dingwell and Webb, 1989)。本実験で使用したポリウレタンフォームの剛性率は、マグマより4桁ほど低い剛性率を持つことが分かった。また、材料の粘性を表わすG"は、反応初期には微減しその後ゲル化に伴い徐々に上昇した。微減した時間は材料の温度が高い時間と一致しており、小岩井他, 1989に従う。つまり、反応初期には、ポリマー形成による粘度上昇よりも温度上昇による粘度減少の方が勝っていたのであると考えられる。2つ目の実験では、周波数が遅く低くなるにつれG’とG’’のクロスポイントに達する時間が遅くなることがわかった。クロスポイントに達した時間には、材料の緩和時間がその時の角周波数の逆数になっていると解釈できる。この測定結果により、材料の緩和時間が次第に遅くなり、固体的に振舞うように遷移していく時間スケールが定量化されたと言える。最後にX線CTスキャン画像を撮ったところ、大変形を加えた3つ目の実験サンプルに含まれる気泡はチューブ状に伸びていた。
実験材料:ポリウレタンフォームは、ポリイソシアネート液とポリオール液を、触媒や整泡剤と一緒に混合して発泡反応と樹脂化反応を同時に行わせて得られる、プラスチック発泡体である。整泡剤には気泡の合体を抑制し、均質で微細なセル構造を作る効果がある。セル構造を避けるため、本研究では(株)東邦化学工業の協力を得て整泡剤を含まないポリウレタンフォーム原液を調合し、これを使用した。この原液では気泡は楕円形になり、合体が促進されるため通常より大きい気泡が形成された。
実験手法:ポリウレタンフォームの膨張-固化過程における粘弾性時間変化を計測する。レオメータ(AR2000ex)を使用し、治具として内筒回転式の二重円筒を作製した。ポリウレタンフォームが固着した治具は再利用できないので、使い捨てできるようにする。外筒(直径φ=23mm)に透明なポリプロピレン製ビーカーを、内筒(φ=15mm)にアルミ製円柱を用いた。ポリウレタンフォームが膨張する様子をビデオカメラで撮影するとともに、赤外線放射温度計をビーカー横に設置し、ビーカー側面の温度測定を行った。レオメータで計測されたトルクと回転角、並びにビデオ映像から計測された内筒の浸液長、二重円筒のギャップから、歪と応力を計算した。さらに振動試験では、それらの振幅と位相から弾性を表わす貯蔵弾性率G’と粘性を表わす損失弾性率G’’を得た。レオメータ実験は以下の3つの方法で行った。まず周波数3.16Hz、歪み振幅0.1%の下、内筒を振動させ、G'とG"の時間変化を検討した。次に、一つの測定サイクル内で周波数を31.6Hz→3.16Hz→0.316Hzと変化させ、弾性率の周波数依存性を検討した。3つ目の実験では、材料の硬化途中、0.2 (s^-1)の歪み速度条件で歪み量を0から10まで変化させた。代表的なサンプルは(株)島津製作所のinspeXio SMX-225CTでX線CTスキャンを行い、気泡構造を観察した。
結果及び考察:計測開始初期は、試料は液体状態であり、G"がG'よりも大きい。材料のゲル化に伴いトルクが徐々に上昇し、約20分でG’とG’’は等しくなる。その後G’’は徐々に減少し、G’は一定値106.3 Paに落ち着く。粘度とは異なり、マグマの剛性率(G’の固体状態G’の極限値)は温度や組成によらずほぼ一定の値(約10 GPa)をとることが知られている(Dingwell and Webb, 1989)。本実験で使用したポリウレタンフォームの剛性率は、マグマより4桁ほど低い剛性率を持つことが分かった。また、材料の粘性を表わすG"は、反応初期には微減しその後ゲル化に伴い徐々に上昇した。微減した時間は材料の温度が高い時間と一致しており、小岩井他, 1989に従う。つまり、反応初期には、ポリマー形成による粘度上昇よりも温度上昇による粘度減少の方が勝っていたのであると考えられる。2つ目の実験では、周波数が遅く低くなるにつれG’とG’’のクロスポイントに達する時間が遅くなることがわかった。クロスポイントに達した時間には、材料の緩和時間がその時の角周波数の逆数になっていると解釈できる。この測定結果により、材料の緩和時間が次第に遅くなり、固体的に振舞うように遷移していく時間スケールが定量化されたと言える。最後にX線CTスキャン画像を撮ったところ、大変形を加えた3つ目の実験サンプルに含まれる気泡はチューブ状に伸びていた。