14:10 〜 14:30
[ACG43-02] マングローブ林における炭素動態定量のための水・物質動態モデリング
★招待講演
キーワード:マングローブ、DIC、水・物質動態モデル
マングローブ林は,熱帯環境での大きなNPP と嫌気的土壌での小さなHR のために,特異的に大きなNEP を持ち,地球上で最もC-rich な生態系と考えられている.一方で,通常の陸域における森林生態系とは異なり,マングローブ林は潮間帯に成立するために,潮位変動にともなう海水と淡水の周期的な交換に絶えずさらされ,水流動を介して系外への物質輸送量を無視することができない.そのため,マングローブ林における炭素収支算定においては,この水流動による系外への炭素輸送量推定は不可欠である.そこで本研究では,マングローブ林からの年DICフラックス推定を目的として,沖縄県石垣島吹通川河口域のマングローブ林における海洋とマングローブ林との水交換量の推定を行った.また同流域を対象として進めているDIC動態モデルの概要をあわせて報告する.
当該マングローブ林域の面積は約0.2km2,集水域面積2.27km2である.集水域の大部分は森林であり3河川が流入するが,平水時の流量は0.1m3程度と少ない.マングローブ林全域を対象とした水流動モデル構築のために詳細な地形測量を実施し,712点の測量データをもとに対象地全域の微地形標高データを作成した.次に,水平2次元Saint Venant方程式を支配方程式とし,節点数34,708,要素数68,345の三角形要素による有限要素法を用いて水流動モデルを構築し,数値シミュレーションを実施した.なお,境界条件は河口域に潮位変動を与え,上流域からの流入量は0とした.また,初期条件は水位0mとした.河口域における流量実測値と得られた結果を比較し,概ね潮位変動に伴う流量変動が再現可能であることを確認した.また,林内のcreek部とswamp部でそれぞれに複数地点で測定した水位変動と数値計算結果を比較した結果,概ね水位変動の再現性もよいことを確認した.一方で,特にswamp部の引き潮時における水位の変化率が実測値ほどは大きくなく,creek部からswamp部への移行帯における水流動再現には課題が残された.構築した水流動モデルより求めた年間の河口域における海水とマングローブ林との水交換量の推定値は,正味1.3m3/sとなった.構築した水流動モデルにDIC動態モデルを組み込むことで,マングローブ林からのDIC輸送量の定量化を試みている。林内の湛水部から土壌呼吸に伴うCO2の水域への放出をソースとし,水域内でのDICは移流拡散により移動するとともに,大気への放出を考慮するモデルとなっている.対象地では河口と林内の複数地点においてDIC濃度の経時データを取得するとともに,マングローブ林における炭素収支定量のための生態学的,土壌学的計測を詳細に実施しており,これらの計測結果と水・物質動態モデルとを組み合わせることで詳細な炭素収支推定が実現すると考えている.
当該マングローブ林域の面積は約0.2km2,集水域面積2.27km2である.集水域の大部分は森林であり3河川が流入するが,平水時の流量は0.1m3程度と少ない.マングローブ林全域を対象とした水流動モデル構築のために詳細な地形測量を実施し,712点の測量データをもとに対象地全域の微地形標高データを作成した.次に,水平2次元Saint Venant方程式を支配方程式とし,節点数34,708,要素数68,345の三角形要素による有限要素法を用いて水流動モデルを構築し,数値シミュレーションを実施した.なお,境界条件は河口域に潮位変動を与え,上流域からの流入量は0とした.また,初期条件は水位0mとした.河口域における流量実測値と得られた結果を比較し,概ね潮位変動に伴う流量変動が再現可能であることを確認した.また,林内のcreek部とswamp部でそれぞれに複数地点で測定した水位変動と数値計算結果を比較した結果,概ね水位変動の再現性もよいことを確認した.一方で,特にswamp部の引き潮時における水位の変化率が実測値ほどは大きくなく,creek部からswamp部への移行帯における水流動再現には課題が残された.構築した水流動モデルより求めた年間の河口域における海水とマングローブ林との水交換量の推定値は,正味1.3m3/sとなった.構築した水流動モデルにDIC動態モデルを組み込むことで,マングローブ林からのDIC輸送量の定量化を試みている。林内の湛水部から土壌呼吸に伴うCO2の水域への放出をソースとし,水域内でのDICは移流拡散により移動するとともに,大気への放出を考慮するモデルとなっている.対象地では河口と林内の複数地点においてDIC濃度の経時データを取得するとともに,マングローブ林における炭素収支定量のための生態学的,土壌学的計測を詳細に実施しており,これらの計測結果と水・物質動態モデルとを組み合わせることで詳細な炭素収支推定が実現すると考えている.