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[AHW25-05] 阿蘇火山の火口湖「湯溜り」の水同位体組成の形成機構
キーワード:阿蘇火山、火口湖、水、同位体組成
阿蘇火山の中岳第一火口に形成される火口湖「湯溜り」は,火山活動の静穏期に出現し,湖水の表面流出は存在せず,酸性が極めて強く,塩化物イオン(Cl-)やマグネシウムイオン(Mg2+)などの多量の溶存成分を含む.この様な水質は,湖水が,塩化水素(HCl)や二酸化硫黄(SO2)を含む湖底に噴出する火山ガス(その存在は湖水が干上がったときに目視できる.)の影響を強く受けていることを示している.火口内の地形が急峻で,しかも火口内は火口壁にある高温噴気孔から噴出する火山ガスに曝されているために,湖畔へのアプローチは困難であり,湯溜りの物質科学的研究は遅れていた.しかし,荷造り用ロープと耐酸性の手作り採水容器を使った簡易な方法によって湖水試料を比較的容易に採取することができることが示されると(大沢ほか,2003),堰を切ったように研究が行われるようになった(例えば,恩田ほか,2003;Miyabuchi and Terada, 2009;Ohsawa et al., 2010).本研究では,定常的に湖水が採取できるようになった2000年以降に実施された6回の採水作業で得られた湖水試料の水の同位体データ(δDとδ18O)を入手し,その解析を行って湯溜りの水同位体組成の成り立ちを考察した.その結果,湖水の水同位体組成(δD vs. δ18O)は,降水起源の流入水をベースに,火山性水蒸気の付加,湖水の蒸発,湖水と岩石の同位体交換(強酸性湖水による岩石変質)によって決まり,それらの効果の表れ方(寄与の程度)は変動していることが判った.また,湖に占める天水に対する火山性水蒸気の割合は予想以上に大きいが(半分以上),先行研究(齊藤ほか,2008; Terada et al., 2012)の結果とおおむね矛盾しなかった.