日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS08] 季節から十年規模の気候変動と予測可能性

2018年5月20日(日) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:望月 崇(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、V Ramaswamy(NOAA GFDL)、森岡 優志(海洋研究開発機構)

[AOS08-P09] 北海道地方における冬の嵐の頻度増加と数十年規模の爆弾低気圧活動

*築地原 匠1川村 隆一1川野 哲也1 (1.九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻)

キーワード:爆弾低気圧、ロスビー波束伝播、気候レジームシフト

本研究ではJRA-55再解析データを用いて、冬季の1979/80年から2016/17年の日本付近の爆弾低気圧活動を調査した。地域観測データと再解析データより、近年は北海道地方での強風と大雨の頻度の増加が明らかとなり、これは黒潮に沿って進み北海道地方に接近する南岸低気圧の近年の増加と一致する。低気圧の経路と急発達の支配要因を調査するために、北進タイプと東進タイプの南岸低気圧について合成解析を実施した。北進タイプでは、ユーラシア大陸上空の寒帯前線・亜熱帯ジェットに沿う準定常ロスビー波列が明瞭で、これによって低気圧の西方 (東方)に上層トラフ (リッジ)のペアが形成される。北進タイプの急発達に伴う上層発散はロスビー波源として下流のロスビー波束伝播を励起し、低気圧東方のリッジをさらに強化する。この対流圏全層に及ぶ構造を持つ高気圧性偏差は、低気圧経路をより北方へと導くことができる。さらに北進タイプの低気圧とその東方の高気圧性偏差の組み合わせにより、低緯度から低気圧システム内への水蒸気輸送が促進され、水蒸気フラックス収束の強化に貢献する。実際、低気圧中心付近の非断熱加熱は北進タイプの方が東進タイプよりも大きい。数十年規模変動の観点から、近年のラニーニャ的なSSTパターンがフィリピン海、南シナ海、ベンガル湾付近の降水量を増加させ、そのロスビー波応答で中国南部の亜熱帯ジェット上の高気圧性循環が強化されている。これは熱帯の気候レジームシフトに関連した亜熱帯ジェットに沿う明瞭なロスビー波束伝播が、北進タイプの低気圧数の近年の増加に関係することを示唆する。