日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS15] 海洋と大気の波動・渦・循環力学

2018年5月20日(日) 10:45 〜 12:15 105 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:古恵 亮(APL/JAMSTEC)、田中 祐希(東京大学大学院理学系研究科)、久木 幸治(琉球大学、共同)、杉本 憲彦(慶應義塾大学 法学部 日吉物理学教室)、座長:三寺 史夫中野 英之相木 秀則

11:15 〜 11:30

[AOS15-09] 潮汐と黒潮の干渉によって発生する非線形性内部波

*増永 英治1内山 雄介2山崎 秀勝3 (1.茨城大学、2.神戸大学、3.東京海洋大学)

キーワード:内部潮汐、黒潮、非線形内部波

潮汐と黒潮は日本南岸海域の海洋物理環境に強い影響を及ぼしていることが知られている.潮汐は,非線形性内部波を引き起こし混合や物質輸送を促進させる.黒潮は2m s-1以上の流れを発生させ,北西太平洋の物質及び熱輸送に非常に強く関わっている.近年の研究により伊豆小笠原海嶺周辺では潮流が非線形性内部波を発生させることが明らかとなってきたが,潮汐・内部波と黒潮の相互作用について議論されることはこれまでになかった.本研究では,伊豆海嶺周辺における潮汐と黒潮の相互作用によって引き起こされる非線形内部波について報告する.3次元領域海洋モデルROMSによって得られた数値計算データを解析した結果,伊豆小笠原海嶺から黒潮流軸上流方向への5kW m-1を超える強い内部波のフラックスが確認された.この海嶺付近における黒潮と潮汐波の干渉効果を詳細に調べるために,2次元の高解像度非静水圧海洋モデルSUNTANSを用いて数値計算を実施した.海嶺の西側(黒潮上流側)では,ソリトン波を伴う強い非線形性内部波が黒潮上流方向へ伝搬していることが確認された.この非線形性内部波は,黒潮上流へ伝搬する内部波と逆方向へ流れる黒潮によって発生したものであると考えられる.黒潮の速度1 m/sと半日周期の潮位振幅0.5mの場合,黒潮上流方向への内部波フラックスは12 kW m-1に達していた.一方海嶺東側(黒潮下流側)では,内部波のエネルギーが黒潮の流れによって沖合側に輸送されるため,西側に比べ内部波は弱いことがわかった.よって伊豆海嶺上では,潮汐と黒潮の干渉により黒潮上流側への強い内部波の伝搬(エネルギーフラックス)が発生していることが明らかとなった.このような沖合方向への内部波の伝搬は,深海域における混合や物質に貢献していることが予想される.